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ブランジア人魔戦記  作者: 長村
chapter,04
77/104

ep,073 手を繋いで

 あれから暫しの間メリルと寄り添っていたショーマだったが、ふと窓の向こう、庭の辺りで発生した異変に気が付いて腰を上げた。

「……何だあれ」

 ベランダに出て様子を見る。メリルもそれに続いてくる。

「あれは……、お兄様、かしら」

 庭の外れの方に、魔力を放ち赤く輝く球体が浮かび上がっていた。大きさは人が2、3人入れるかどうか、という程度である。

 グランディスの展開した結界は通常空間とは時空の密度が異なり、外部からだとその程度の大きさにしか見えないのだった。

「結界ってやつか」

「そうね。……あの中では、何かが起こっている」

 ショーマは先程までこのベランダにグランディスがいたことを思い出す。メリルのことは自分が何とかすると啖呵を切り、実際に何とか出来た。だがそれを報告する前に、彼はあの結界の中に籠ってしまったようだ。

 まさか妹を取られたから自棄になった、というわけでもあるまい。何か結界を作ってまで行いたい重要な案件があったと考えるのが自然だ。……それほどまでのこと、あまり多くは思い付かない。

 手を貸した方が、良いのだろうか。

 そう考えていると、メリルが服の裾を掴んできた。兄のことが心配なのだろう。そういう不安な感情を素直に向けてもらえる、ということに少しばかり嬉しくなる。

 そうだ。やはり何とかしてあの中に入っていって協力をするべきであろう。足手まといにならないかは不安だが、黙って見ている内に被害が発生していたらと思うと、じっとしていられない。

 しかしそう考えているのもそこそこの内に、結界は向こうから解除されていくのだった。

「あ……」

 光の欠片を散らしながら消滅していく結界の中から、グランディスが現れる。怪我らしい怪我もなく、竜操術師のコートをたなびかせ優雅に眼鏡をかけ直していた。

 そんな余りにも落ち着いた態度に、心配が杞憂であったことを知る。

「……お兄様」

 メリルがほっとしたように呟いた。けれど、裾を掴んだ手はそのままである。そして当のグランディスは、ショーマのことを真っ直ぐに睨み付けていた。

 その勢いに思わず後ずさりそうになる。だが、我慢する。

 助けに行く必要は無くなった。ならば今度は、挑まなければいけない。

 彼の愛する妹を、奪い取るために。

(いや奪い取るってのは言葉が悪いな……)

 視線から感じた強烈な圧力で思わず抱いてしまった感情を思い直す。

 だがグランディスの視線は実際、それこそ戦場で感じるような緊張感と同等のものが込められているように感じた。

 それだけ彼も、愛する妹のために真剣なのだ。

 メリルが唾を飲み込み、裾を掴む手に力を込めた。

「……ちょっと、行ってくるよ」

 ショーマはそんなメリルに向かって優しく告げる。

 しかし、

「ううん。私も行く」

 その言葉は却下された。

「貴方が私を支えてくれるなら、私も貴方を支える。……そういう関係でしょう? 私達は」

 いつか交わした約束。そして、ついさっき改めて交わした約束。

 確かに、そうだった。

 一緒にいる、というのは文字通りの意味だけではなく、そうやって1人の問題も2人で考えていく。と、そういうことだろう。自分で言った言葉ながら、今更実感する。……まあ2人、とは限らないのが世間的にはちょっと独特だが。

「わかった。じゃあ……、一緒に」

「……うん」

 今度は服の裾ではなく、ちゃんと手を握り合ってから2人は歩き出した。


   ※


 ショーマとメリルがサフィードを残して廊下に出ると、扉のすぐ前にいた5名程のメイド達に迎えられた。

「お、お嬢様……!」

 その中の1人が、メリルの顔を見た途端に涙をこぼし始める。

「え、あ、ちょ、ちょっと……」

「わ、私、すごく心配したんですからあ……!」

 彼女はそう声を上げてその場に座り込んでしまい、そばにいた他のメイド達がなだめ始めた。

「あ、えっと……」

「謝っておきなよ」

「う……」

 うろたえるメリルにショーマがそっと囁く。

 メリルも自分が魔族化していた時の記憶は消えているわけではなく、障壁を張って彼女達を強引に弾き出そうとしたことも当然覚えていた。

 ただこうしてその行為の結果が目の前に返ってきてしまい、心が苦しかったのだ。後悔の念が重くのしかかっていく。

 けれど、今はそれに立ち向かえる力があった。

 握り合う手に力を込めると、一旦それを離す。

「……心配かけて、本当にごめんなさいエレナ」

「お嬢様……」

「ほら、もう泣かないで……」

 そう言って座り込んでいたメイドのエレナに手を差し出す。エレナは涙をぬぐうと、それを両手で包み込むように握った。

「はい……。申し訳ありませんでした」

「うん……」

 エレナも落ち着くことが出来たようで、メリルの顔に安堵の笑みが浮かんだ。

「ところで、」

「え」

「そちらの方は……?」

 エレナは未だ目に涙をためながら、メリルの隣に立っているショーマへ視線を向けた。

「…………」

 笑顔が凍りつく。

 部屋の中でのやりとりは断片的にしか聞き取れていなかったメイド達であるが、2人の間に漂う雰囲気から何となく察することくらいは出来ていた。まあ聞こえていなかったとしても似たような考えには至っただろうが。

 何しろメイドというのは、そういう話が最大の娯楽なのだから。

「え、ええっと……」

 潤んだ瞳で見つめられたメリルは視線を泳がせる。

 だが結局答えに詰まり、

「あ、後でね!」

「あっ、逃げた!」

 ショーマの手を掴み直して、強引にその場から逃げ出したのだった。


「おーい、良いのかー」

「い、良いのよ!」

 2人は赤い絨毯の敷かれた廊下を駆けていく。

「……そんな急に、なんでもかんでもはっきり出来ないわよ」

「はっきりって何をさ」

「ううう、うっさいわね!」

 照れたように声を上げるメリルに、ショーマは堪らず笑みをこぼす。

 自分のことを好きにさせてみせるとは言ってみたが、メリルも急にそんなことを言われたら心を揺らしてしまうのだろう。あんな状況では仕方ないことかもしれないが。

 好意だと思っていた感情が、実はろくでもない独占欲だった。

 ショーマもそう告白されて少なからず悲しい思いはあった。けれどそれは、メリル自身も同じなのではないだろうかと考える。

 人を好きになるという気持ちは、とても幸せな感情をもたらすものだと思う。……上手くいくかいかないかで思い悩むにしても、だ。それはセリアを見ていれば何となくわかる。

 例えその好意が、勘違いであっても。

 そんな幸せな感情を自分から否定してしまったメリルの今の気持ちは……、計り知れない。

 だからこそ今度は、本当に好きという気持ちを抱かせてあげたい。

 ほのかに赤く染まったメリルの横顔を見ながら、ショーマはそう思った。


   ※


「……お待たせしました」

「うむ」

 わざわざ階段を下りロビーを通って庭まで迂回してやって来たショーマとメリルは、その間グランディスをずっと立たせて待たせることになっていた。少なからず彼にも苛立ちを感じさせてしまったかもしれない。

 ベランダから直接飛び下りるという手もあったが、何となくそれはやめておいた。ちょっとばかり、意地の悪いことをしてやりたかったのかもしれない。

 向かい合う相手は、いささか強大すぎたから。


 時間はまだ昼前。陽の光に照らされた、この遮るものが何も無い場所で3人は向かい合った。隠し事は、きっと出来ない。

「あの、お兄様。さっきの結界は一体……?」

「後で話す。お前達こそ先程の件についてきっちりと説明しろ」

「う……」

 グランディスの高圧的な態度にメリルがわずかにたじろいだ。安心させるように、ショーマは握る手に力を込めてやる。

「…………」

 それを見て、またグランディスの表情が険しくなった。

「じゃあ、俺が……」

「待って」

 口を開こうとしたショーマをメリルが止める。真正面に向き直り、

「私から、言わせて」

 そう、告げた。

「……わかった」

 自分が率先して前に立つべきだとは考えていたが、メリルがそうしたいのなら、自分のするべきことは彼女を支えること。ショーマはそう考えた。

「ありがとう。……それでは、順を追って話していきますね」


 メリルが事の次第を語り始める。自分の口から話すのは辛いことばかりの内容だが、向き合わなければいけない。

 それに、隣には支えてくれる人もいるから、平気だった。


 教都ブランシェイルに向かう途中の山道で野生の一角竜と交戦したこと。

 その戦いでセリアが大怪我を負ったこと。

 ショーマが彼女を治療し、その中で2人が想いを通じ合わせたこと。

 そのことで思い悩んだことがきっかけで、自分の精神に変化が生じたこと。

 そして、ショーマを連れ去りあの部屋に閉じ込めようとしたこと。

 時折言葉に詰まりながらも、メリルは何とか全てを話した。

「……大丈夫か?」

「うん……」

 自分の心の醜い部分と向き合うことは、辛く苦しいことだ。それを他人に話すともなればなおさらである。おまけにそのことで迷惑もかけてしまったとあればもう、とても耐えがたい。

 苦しそうに胸元を押さえるメリルとそれを支えようとするショーマを、グランディスはじっと見つめていた。

「大筋は、理解した」

 小さくため息を吐いてから、冷静に疑問点を上げていく。

「まず聞きたいのだが、何故一角竜との戦闘を行った?」

「いやそれは野生のが……」

 ショーマが口を挟む。

「待って」

「え、何?」

 しかしメリルが止めた。ショーマはまだ知らなかったが、メリルには気付いていたことがある。

「……あの一角竜は、恐らく魔族でした。凶暴性を増したため、目の前に現れた私達に危険を感じ、襲いかかってきたのだと思われます」

「……そうなの?」

「多分ね。……近くにマナ溜まりがありました。そこに竜がいた形跡もあったので、間違いないかと」

 メリルが魔族化する直前に気付いたことである。色々あって話せずにいたが。

「なるほど。その件に関しては後に詳しく調査を行わさせよう。重要な情報、感謝する」

「……はぁ」

 グランディスは騎士団副軍師長としての顔で冷静な判断をした。

「では次。……メリル、お前がその精神に変化を生じさせたという理由、わかるか」

「……はい」

「それもマナ溜まりか」

「はい」

「……え?」

 グランディスはメリルの話からすぐに予想をつけていた。少々信じがたいことだが、話の流れからしてメリルが魔族化したという考えにはすぐに至った。

「……人間も、魔族になるってこと」

 メリルがよく理解出来ていないショーマに向けて言う。

「それって……」

「私、魔族になっちゃってたの」

「……!」

 自虐するように、メリルはショーマに告白した。

「今は、違うわ。……貴方が、戻してくれたから」

「……っ、……え? ……ごめん、よくわからない」

「うん……、あのね。自分のことだからわかったんだと思うけど……」


 魔族になる、ということ。

 既に研究されている通り、マナ溜まり、つまり大量のマナエネルギーに触れることで動物や植物、精霊などは魔族へと変質してしまう。だがどういう基準でか、全てがそうであるとは限らなかった。

「その基準はね。……心に暗い感情を、『傷』を抱えていること。だと、思うの」

「暗い、感情……?」

「憎しみとか嫉妬とか、そういうの。……絶望、って言い換えても良いかもね」

 そんな気持ちがマナエネルギーと反応し、精神に変化をきたす。

 欲望を抑えられず、情動の赴くままに行動してしまいたくなる。

「魔族になった動物達が一緒に行動するようになるのはね、……みんなお互い心に傷を持っていること、同じ様に絶望を抱いていたことがわかっているから。……同じ仲間だから。なんだと思う」

「……動物はまだしも、植物にもそんな、感情みたいなものがあるのか?」

「あるわよ。……生きてるんだもの」

「……ん」

 群れからはぐれた動物達にも、人間達には理解出来ないような悩みや苦しみがあって、それがきっかけで魔族になる。そして同じように絶望を抱いている他の動物を、迎え入れるように魔族へと変えていく。

 同じ傷の痛みを知っているから、魔族は異なる種族でも共生出来るのだ。

「何か、寂しいな。それって……」

「そう、かもね」

 今まで戦っていた敵の真実を知り、ショーマは少なからず同情の念を抱く。

「だがそれで、我々に敵対してきたことが無かったことになるわけではない」

 しかしグランディスは冷徹な意見を述べた。

「敵にも事情があることなど戦においては当たり前のことだ。それでも敵対するならば、戦わなければならない」

「……わかってますよ」

「なら良い。……それに我々と戦いたくて仕方無い者もいるようだしな」

「……アーシュテン。それに、ルシティス、ベゼーグ。ですね」

「うむ」

「魔族がどういう存在であれ、あいつらとは決着をつけないといけない、よな」

「……ええ」

 少なくとも彼らは、明確な意思を持って敵対している。そして既に多くの犠牲者も出ていた。もはや見過ごせるものではないのだった。


「まあその辺りの事情は概ね承知した。……それは良いのだがな、私はそれとは別に聞き捨てならないことを聞いた気がした」

「う」

「ショーマ君。君は、メリルだけを愛してくれている、というわけでは無い様だな?」

 グランディスが据わった目で言い、ショーマの背中に冷や汗が伝っていく。メリルが全部正直に話したせいで、セリアとの一件もしっかり伝わってしまった。

「それは……、ですね」

 動揺し目を泳がすショーマの手を、今度はメリルが力を込めて握った。

「……!」

「……うん」

 それだけでも、ちゃんと伝わった。

 今度はそっちの番だ。自分はちゃんと納得しているから。だから、ちゃんとはっきり言え、と。

 ショーマは1度深呼吸してから、口を開く。


「……俺は、いっぺんに複数の人を、好きになってしまいました。俺のことを好きだと思ってくれる人も、何人もいました。……俺はそんな気持ちを無にしたくないし、させたくもないんです。だから、いっそ皆と一緒にいようと、そう決めました」

 ずっと悩んでいたのは、そういう気持ちもあった。自分が誰かを選んだことで、選ばれなかった誰かが悲しい思いをする。それが嫌だったのだ。

 けれど、もう悩まない。


「……法の上では問題のあることではないな」

「そう、みたいですね」

「だが常識的に考えればそうではない。世間の反応。養っていくだけの資産。それに、女性達各々へ向ける愛情の差。君はそれらの問題を解決出来る算段があるのか? 感情や決意の問題ではないぞ。具体的に、だ」

 グランディスは極めて冷静に返してくる。そしてショーマにとってもそこが最もネックな所であった。

 感情的な問題にはもう覚悟がついた。グランディスに言われた問題を解決するつもりもある。

 だが実際に出来るかどうかは、別の話だ。

 特にショーマは親族などがいない。似たような人はいるが寂れた山村で質素に暮らしているので、資産は皆無に等しい。となれば当てにすることは出来ず、これから自分で金を稼ぐ必要がある。が、その目処も立っていない。普通に働いた所ではとても稼げやしないだろう。世知辛い話ではあるが、現実だ。

「その点に関しては、問題ないかと。お兄様」

 返答に困っていると、メリルが横から口を出してきた。

「私は彼に聞いているんだ。お前は黙っていなさい」

 しかしグランディスは聞く耳を持たない。

「いいえ。私と彼は支え合う間柄です。彼の問題は私の問題でもあるのです」

 対するメリルも、しかし退かない。

「お前が生活費を稼いでやるとでも? だがここで私を納得させられんようなら、ドラニクス家の援助は当てに出来ないと思えよ」

「まあいざとなれば自分で稼ぐ覚悟はあります。けれど、彼はこれから大きなことを成し遂げる予定です。その結果、大きな地位を得られることでしょう。問題は無いと思われます」

「妙なことを言う。それは何だ」

「王女フェニアス様から依頼された、彼女の妹であるフュリエス様の救出です」

「……おい、それ」

「良いじゃない。別に」

 騎士団の重鎮に話して良いことだったかと、ショーマは焦る。しかしメリルはどこ吹く風といった装いであった。

「……やはりフュリエスというのは、あの方と縁のある人物か」

「わかっていらしたんですか?」

「フェニアス様とお前達の様子を見ていたら、な。確証までは無かったが……」

 別段驚く風でもないグランディスの様子に、ショーマは気が抜けそうになる。無駄な心配をした。

「グローリア殿からは聞いておりませんでしたか?」

「いいや。……そうか、あいつは知っていたのか。……まあそれは良い。……で? それで英雄にでもなろうと、そういうわけか」

「そういうことです。英雄ともなればきっちり恩賞も出ますでしょう?」

「……だろう、な」

 グランディスは何か含むような態度で答えた。

 それは王女の妹を救った英雄、ではなく、魔族の女王を捕らえた英雄だ。という言葉を飲み込んだからであった。

「だが、本当に出来るのか」

「……やります!」

 挑むような口調に対し、ショーマは力強く答えた。


 グランディスは想像する。ショーマがフュリエスの元にたどり着き、そこで相対する数多くの困難や敵達を。

「……出来なければ、君は……。いや、皆までは言うまい」

 もし何も達成出来なかったなら、待っているのはきっと惨めな最期だ。けれどショーマ自身は、そうなると思っていない。

 異世界から現れ、魔法の力を操ることにおいて計り知れない力を持ち、メリルに好意を持たれた不思議な少年。彼がこれまで成し遂げてきたことは、確かに小さなものばかりというわけではない。

 ……信じてみるのも、良いかもしれない。

「まあ、良いだろう。君の気持ちは理解した」

「……どうも」

 内心ではグランディスもわかっているのだ。この2人は何を言っても聞かないだろうと。

 可愛い妹だったメリルはもう、自分で考えて行動出来るまで成長していたのだ。未熟な自分を本当の意味で受け入れ、『強く』なった。

 ならば兄としてすべきことは、素直にその門出を祝ってやることだろう。

 だが……、

「……だが妹のことを認めるのは、実際に全て為し終えてからだ。手を出すような真似は許さん」

 そうすんなり納得出来るものではなかった。

「それは嫌です」

「あ?」

「好きだって気持ちは止められないです。失敗するつもりはないですけど、全部終えるまで待てなんてのは無理です」

 真正面からグランディスを見据え、ショーマははっきりと宣言した。

「……どうしてもって言うなら、力ずくでも俺のものにします」

 グランディスの事情など、知ったことでは無いという風に。

「私に勝とう、と?」

「はい」

 あまりにも不遜な態度であった。しかしグランディスは、不思議と以前より不快感を抱かなかった。

 この少年は、それこそ本当にどんなことだって実現してしまうかもしれない。そんな風に感じさせてしまう、力強い瞳だったからだ。

「……そうならないことを、祈っているよ」

 彼が妹を幸せにしてくれる。

 今はもう、そう願うことしか出来なかった。

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