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ブランジア人魔戦記  作者: 長村
chapter,03
48/104

ep,046 魔装の魔人ルシティスとの戦い

 大時計塔と南東区画に現れた魔人との戦闘が開始されたことをグローリアは報告によって聞かされた。

 まずは騎士団総団長として、一般騎士達には戦闘支援や市民誘導の指示を出す。それを終えて、自分はさてどうするかと考える。

「行ってくれば良いじゃないか。指揮ならこの爺がやっておいてあげるよ」

 軍師長コーシュが、そんなグローリアの考えを見抜いて言った。

「……ではお言葉に甘えさせていただくとしましょう」

 グローリアは先の戦争においても、常に自ら戦場に立ち勇敢に先陣を切って戦っていた。正直な話、一番上でふんぞり返っているばかりいると、自然と体が疼いてくるのだった。

「おう。お前さんが出りゃあ皆元気にもなろうよ」

「本当はもう後ろで楽していたいのですがね」

「よく言うわ。……ああそうだ。彼が到着したらちゃんと伝えといてあげるよ」

「ええ。よろしく」

 グローリアはマントを翻し、風の魔法によって大きく跳躍した。

 ……まずは大時計塔からだ。


   ※


 アスラウムとルシティス、2人の魔剣がぶつかり合う。

「これは……!」

 アスラウムは敵の魔剣ネメシュトラが持つ能力を推察する。

 それは侵食の力。触れた対象に魔力を流し込み、自らと同一存在へと変質させる。……という予測だ。

 何度かのぶつかり合いによって、アスラウムの魔剣ツマベニへと魔剣ネメシュトラの魔力が流れ込んで来るのがわかった。それに伴い手にした魔剣ツマベニの呪いが、少しずつ変質していった。

 それが魔剣ネメシュトラの放つ邪悪な感覚に似ているため、そう予測した。まだ微細な変化なため危険は無いと判断出来るが、今後もそうとは限らない。

 ただそれはこれまでとは完全な攻守逆転である。相手の魔力を奪い取る魔剣ツマベニと、相手に魔力を流し込む魔剣ネメシュトラ。両者の相性は最悪と言えた。

 ……だがそれは剣で打ち合う際の話だ。

 要は敵の体を直接斬ればそれで済むことである。魔剣の副産物であろう鎧や盾が気になる所ではあるが、……そこはアスラウム自身の腕でどうにでもするまで。

「ハッ!」

 まずは鎧の隙間、肘の間接部に素早い突きを繰り出す。魔力や闘気などには頼らない、純粋な技術のみで放たれる正確な一撃だ。

「……!」

 鋭い一撃を避けきれず、ルシティスの赤い血が傷口から噴き出した。魔力吸収をされる前に、空間転移でこれを脱する。

 転移先はハルクから見てアスラウムの延長線上。距離を取れば弓矢で狙い撃ちにされる。そのための位置取りだ。

「くッ!」

 ハルクも撃つことは出来ない。この距離ならば針の穴にだって通してやる自信はあるが、完全にアスラウムの影に隠れられている。接近戦はアスラウムに任せ、敵が距離を取った時にこそ自分の役目と構えていたが、奴もそう迂闊では無いようだ。

「そう気負うなよ。私1人でも十分さ」

 ハルクの舌打ちから心情を見越して、アスラウムは悠々と言った。

 そして再び2人の魔剣士による応酬が開始される。激しく剣をぶつけ合っていた先程とは異なり、今度は互いにぎりぎりの隙間を避け合う際どい刺突戦が繰り広げられる。

 金属のぶつかり合う音ではなく、剣が風を斬り裂く音ばかりが響いていった。


 その瞬きすら許されぬ高速かつ繊細な戦いに、ハルクは息を呑んだ。……足下より迫る圧倒的な威圧感にも気付くのが僅かに遅れたほどであった。

「展開せよ。……神位剣、ウィルガルム!」

 建物の屋根を伝い跳躍して大時計塔の頂上を目指すグローリアが、抜刀した剣に呼び掛けた。


 神位剣『ウィルガルム』。初代ブロウブから次代の当主へ受け継がれ続ける、神の祈りを与えられたとされる聖剣だ。

 鞘から抜き放たれることで、閉じ込められていた魔力が展開、固定され剣に装着される。

 聖剣自身が作り出した魔導機構を装着することで、魔力噴射による斬撃の加速化、魔法術式展開補助など、様々な機能を付加させることが出来る、言わば機械仕掛けの剣だ。


 早速その魔力噴射によって跳躍の勢いを加速させる。そしてそのまま一気にルシティスへ接近し斬撃を放つ。

「ムン!」

「……!」

 ぶつかり合う聖剣と魔剣。

 魔剣ネメシュトラの魔力侵食は、神位剣ウィルガルムが常に帯びる魔力によって防がれていた。

「アスラウム!」

「ふむ……!」

 その隙を狙って、アスラウムは魔剣ツマベニをルシティスに振り下ろす。

「……させん!」

 だがルシティスは盾を突き出してその一閃を防ぐ。

「ハルク!」

 そしてさらに、ハルクの放った矢が襲い掛かる。

 それに対しルシティスは、12枚もの黒い剣を展開して強引に防ぎきる。

「器用な奴め……!」

 盾を両断してやろうと力を込めるアスラウムは、3人の攻撃を同時に防ぐルシティスに敵ながら感心してしまう。

「……おおおおッ!!」

 剣をぶつけ合っていたグローリアが吠える。神位剣ウィルガルムの魔力噴射がさらに勢いを増して、ルシティスを押し込んでいった。

「くっ……」

 騎士団でも最高位に位置する実力者が3人相手では、ルシティスも余裕とは言えない。空間転移で一気に距離を取って体勢を整え直す。

 空中に放り出されたグローリアは、アスラウムの腕をつかんで強引に魔力噴射で軌道を変える。そして大時計塔の屋根に着地して、虚空に浮かぶルシティスを睨み付けた。

「ふう。……総団長自ら出陣とは」

「2人がかりでも手こずっているようだったのでな」

「ご期待に添えられず申し訳無い限りだ。……意外と良い腕をしていてな、つい楽しんでしまったよ」

 年下の総団長に対し軽口を叩くアスラウム。

「魔族は人間の敵。相手が何であろうとただ討伐するのみだ」

 それに叱咤を返すグローリア。

 魔族の手によって既に多くの尊い命が奪われている。そう。あれはただの害獣だ。人の姿をしていようと同情の余地は無いし、剣の腕が凄かろうと感嘆する価値なども無い。

 一刻も速く駆除する必要だけがあるのだ。

「私に続けよ」

 グローリアはアスラウムとハルクの2人に短く伝え、自分は勇ましくルシティスへと飛び掛かった。

 ルシティスは空中を滑るように後退しながら黒い剣を次々と投射していく。グローリアはそれを1つ残らず粉砕しながら、勢いを減らすことなく迫っていく。

 空中からさらに上方へ飛翔して逃げるルシティスにも、神位剣ウィルガルムの魔力噴射を使って追撃、空中戦にも対応するつもりだった。

「面白い物を使う……」

 ルシティスに追い付いたグローリアが剣を振るい、再び聖剣と魔剣がぶつかり合って火花を散らした。

 その硬直した状況へ、ハルクの聖弓術技『星流』が放たれる。破邪の光を引く閃光の矢が、正確無比にルシティスの頭部を貫かんと迫った。しかしそれも空間転移で回避される。取り残されたグローリアは『星流』の余波を受けないように、空中で器用に体を捩る。

 ハルクの背後に現れ反撃を放とうとしたルシティスは、しかし更に背後からの気配を察知し、盾を構えた。

「そう考え無しに連発されては、見抜かれてしまうぞ?」

「……!」

 何度かの空間転移を目にし、その特性だけでなく、ルシティスが空間転移を使おうとするタイミングや、その転移先の予測まで出来るようになっていたアスラウムは、背後へと先回りして斬撃を放ったのだ。

 これこそがアスラウムを将軍たらしめる、戦場における嗅覚。

 そして……。

「秘剣、一文字切り……!」

 秘剣と言うほど秘められてもいない、裂帛の気合を込めただけの単純な一閃を振り抜く。

 魔剣ツマベニの、剣としての特性……、重さを活かして叩き付けるのではなく、軽く薄い刀身による切れ味の良さを活かした、鋭利な斬撃がルシティスの盾を腕ごと断ち斬った。

「……クッ!」

 そう。いかなる敵をもその卓越した剣技によって打ち倒す圧倒的力量。それこそが冥刀将軍の本領である。

 しかし腕を斬り裂かれたルシティスは、アスラウムに不気味な笑みを浮かべるのだった。


 そのアスラウムの腹部を、鋭い爪を持った巨大な指が貫いた。

「……!?」

 突如空間転移によって出現した魔人ベゼーグの巨大腕が、アスラウムの背中に突き刺さっていた。

「な……、にッ?」

 余りにも突然のことに、アスラウムは体を穿たれる痛みよりも、何故この者の存在を探知できなかったかのことの方が、ずっと頭の中を駆け巡っていた。

「……なあに驚いた顔してんだぁ?」

 獰猛な笑みを浮かべるその男の顔は、随分楽しそうに見えた。

 全身から力が抜けていくアスラウムの手から、魔剣ツマベニがこぼれ落ち、その鋭い刀身が屋上に突き立った。


「アスラウム殿!!」

「……!」

 驚きの声を上げるハルクと、素早く跳躍してベゼーグに斬りかかるグローリア。

「おおっとお!!」

 ベゼーグはアスラウムを放り捨てその斬撃を受け止める。

「ハルク! アスラウムを連れていけ!」

「……しかし!」

「急げ! まだ生きている!」

「……ッ、了解!」

 ここで自分が引けば2体の魔人がグローリアに襲い掛かることになる。ハルクは躊躇してしまうが、アスラウムが危険なのも確かだ。

 ここはグローリアを信じて、彼を救護兵の元へ連れていくことを決断する。

 アスラウムに駆け寄るハルク。しかしただでは行かせまいとルシティスは黒い剣を飛ばそうとする。

「……フン!」

 グローリアはベゼーグと押し合いながら、片腕を伸ばして術式を組み上げ、風の剣を射出する上級魔法『ストームブレイド』を放った。

 不可視の剣が黒い剣を砕いていく。

「!」

 ハルクはその隙にアスラウムを抱え、大時計塔の頂上から飛び降りていった。

 それを確認してグローリアとベゼーグは、一旦互いに距離を取って様子を伺う。

「ハアッ! 仲間のために1人で残るたぁ、殊勝なことだなぁおい!」

「……ふむ。3対2で丁度良くなると思ってお前を呼んだが、これでは完全に立場が逆となってしまったな」

「ああ? だぁったら俺とこの人間のサシでやらせろや。俺ぁさっきまで良い気分でやってたとこだったんだからよぉ? ま、アーシュテンのボケじゃなく俺を助けに呼んだのは良い判断だけどよ?」

 一撃で形勢を逆転させた2人の魔族は、グローリアを前に余裕の会話を始める。ベゼーグは先程までヴォルガムやショーマ達と戦っていた所を、ルシティスの救援要請を受けてわざわざ飛んできてやったのだ。自然と機嫌は悪くなる。

「……んん? こいつ、よく見りゃあれか。総団長って奴か。見覚えあんぜ。……強いんだよな」

 これは良いと笑うベゼーグ。

 ……ひょっとしたらあのヴォルガムより強いかもしれない。いや、そうでなければわざわざ戦いを中断して飛んできた意味が無い。

「ああ。中々の使い手だ。……だから、私にもやらせてもらう」

「ああ!?」

 ルシティスはすっと手を伸ばした。その先にはアスラウムが落とした魔剣ツマベニがある。それはすっと浮かび上がり、いつの間にか再生していたルシティスの左腕に納まっていった。

「ふむ。これは中々……。試し斬りもしたい所だしな。それが嫌なら私よりも早く殺してしまうことだな」

「チッ、糞が……!」

 突如気配も無く出現する。その能力の正体もはっきりしないベゼーグと、2振りの魔剣を手に入れたルシティス。

 そんな絶望的な状況をたった1人で迎えても、グローリアは屹然とした態度を崩そうとはしなかった。

「んじゃあさっさとぉ……、行くぜえああああ!!」

 雄叫びと共に巨大な両腕をなびかせながらベゼーグが跳躍し襲い掛かる。獰猛な笑みを浮かべながら、その拳を振り下ろした。

 しかしグローリアはその下を一気に駆け抜けることで回避。同時にルシティスへと接近して斬り掛かる。

「ああ!?」

「……ふっ」

 合わせるようにルシティスは魔剣ツマベニを振るう。グローリアはそれを飛び越えて背後に着地。振り返る勢いを魔力噴射で加速させ、豪快に神位剣ウィルガルムを叩きつけようとする。

「……!」

 同じく振り返りながら魔剣ネメシュトラを振り抜くルシティス。激しく火花を散らした聖剣と魔剣は、しかし聖剣の方が優勢であった。押し込まれるルシティスは、魔剣ツマベニも使って抑え込む。

「さすが、と言った所かな……?」

「…………」

 押されながらも挑発を行うルシティスに、グローリアは無言で返す。

「……オラアアッ!!」

 そこへベゼーグが再び現れ巨大腕を振り下ろす。

 鍔迫り合いを続けたまま、神位剣ウィルガルムの刀身に術式が浮かび上がる。能力の1つ、自動魔法迎撃が発動したのだ。

「グッ!?」

 風の鎖が強靭な両腕を虚空に縛り止めた。中級魔法『エアバインド』。神位剣ウィルガルム自身が持つ魔力によって発動された、歴とした魔法である。

「小癪なぁあッ!!」

 力を込めぎりぎりと風の鎖を引きちぎろうとする。ベゼーグほどの怪力には数秒しか拘束は保たない。

 だがそれで十分だ。

「……おおおお!!」

 雄叫びを上げたグローリアは魔力噴射の勢いを更に上げ、強引にルシティスを押し飛ばす。そしてその勢いのまま体を捻り、ベゼーグに向けて剣を振る。この時更に刀身に闘気を与えておく。

 聖剣技『風刃大斬破』。風の鞘を刀身に纏わせ巨大な剣として斬り裂く大技だ。

「ぬうぁああああッ!!」

 ベゼーグの脇腹をがりがりと風の刃が削っていき、絶叫が上がった。

 ……しかし、印象よりも硬い。先日の戦いを見ていた限りでは十分に体を両断できる威力のはずだ。この変質している両腕が関係しているのだろうか。

 風の刃を押し付けながら考察するグローリアの背後から、体勢を整えたルシティスの斬撃が迫る。

 重い一撃を叩き込んでいる今のグローリアは隙だらけであった。

「……!」


   ※


 地上へ降り立ったハルクは、アスラウムの怪我は一刻を争う事態だと判断し、救護兵に預ける前に自ら治癒魔法で応急処置をすることにした。

 比較的苦手な治癒魔法ではあるが、それでも将軍を名乗れるくらいには十分心得がある。ちゃんとした治療は正規の救護兵に頼む必要があるが、そこに辿り着く前に死なれては意味が無い。

「し、将軍!」

 ハルクが降りてくるのを見て駆け寄ってきた騎士達が声をかける。そしてアスラウムの状態を見て思わず息を呑んだ。

「救護兵を呼んでくれ、早く!」

「は、はい……!」

 丁度良いと、ハルクはその騎士達に救護兵を呼びに行かせる。これで自分は治癒に専念出来る。


 そこへまた別の騎士達が駆け寄ってきた。

「ハルク将軍……!」

 ベゼーグを追ってやって来たショーマ達第1小隊であった。

「……! ショーマ!」

 レウスがアスラウムの怪我を見て、ショーマに治癒を依頼する。

「ああ。……俺がやります!」

「出来るのか、済まない頼む」

 ショーマは急速に大量の魔力を練り上げて、アスラウムの傷口に治癒魔法をかける。既にある程度まで治癒は行われていたので、それを引き継ぐ形で治癒をかけていく。これならなんとかなりそうだ。

「ハ、ハルク将軍は、お怪我は御座いませんか……?」

 ローゼが進み出て、ハルクの怪我を心配した。

「ああ。私は問題無い。それより総団長殿がお1人で魔人2人を相手にしている!」

「!?」

「すぐに行かねばならない。ここは任せるぞ!」

 アスラウムをショーマ達に任せ、ハルクは建物の屋根を伝って再び大時計塔の頂上へ向かう。

「……済まない、皆はここで待機していてくれ」

「え? あ、おいレウス!」

 レウスは兄が1人で戦っていると知り、他のメンバーをここに待機させて1人で援護に向かおうとする。

 返事も聞かずに足元から闘気を放ち、ハルクと同じように建物の屋根を伝って駆け上がっていった。

「あの馬鹿……! おいデュラン、ローゼ、追うぞ! 他の者は残れ!」

「あ、ちょっと……!」

 そんなレウスを追って、バムスが勝手に指示を出して駆け出す。一瞬戸惑って、デュランとローゼはそれを追いかける。

 残されたショーマは取り敢えず治癒を続け、他の3人はどうしたものかと困りつつ、取り敢えず周囲に警戒を払うことにする。

「まったくもう……」

 メリルはこういう時こそ竜を呼び出して空を飛べる自分の出番なのだが、勝手で強引な指示によって待機を強要されて眉をひそめた。

 ならばとせめてショーマが治癒に専念出来るよう、周囲の警戒を払うことにした。


   ※


 少し先を進むハルクを追いかけるレウスと、さらにそれを追う3人。

 レウスも、待機しろと言ったのについて来たことは追求しないでおいた。少し落ち着けば、随分無茶苦茶を言ったものだとすぐに反省出来た。まあそれはそれで困るのだが。

 その時突然、どこからともなく高速で振るわれた蔓によって、ハルクが叩き落とされたのが視界の隅に映る。

「!?」

 空間転移で不意に出現したアーシュテンが、出会い頭にハルクを叩き落としたのだ。

「……貴様ッ!」

 因縁もある3人目の魔人の出現に武器を構えるレウス達。しかしアーシュテンは一瞥をくれただけで、再び姿を消してしまった。

「……ッ! 急ぐぞ!」

 こちらは脅威とも思わず、グローリアの元へ向かったのだろう。

「ローゼ! 君はハルク将軍の様子を頼む!」

「はい!」

「俺も行こう。……デュラン、お前はレウスと行け!」

「ああ!」

「済まない、気を付けて!」

 ローゼとバムスは上へ向かうのを中断し、叩き落とされたハルクの元へと降りていった。

 そしてレウスとデュランが再び駆け上がる中、それ以上の速さで駆け上がるまた別の姿があった。

「あれは……、兄さん!?」

 ブロウブ家次男、ブレアスであった。

 学術都市リヨールにいるはずの彼が、どうしてここにいるのかは知らないが、少なくともレウスと同じ様にグローリアの援護に向かうつもりなのは確かなようであった。

「……急ぐよ!」

「ああ!」

 彼ほど器用に闘気や魔力を操れないレウスとデュランも、四苦八苦しながら市街の建物を伝って、急ぎ大時計塔の頂上を目指すのだった。

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