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ブランジア人魔戦記  作者: 長村
chapter,03
39/104

ep,037 穢された心

 その夜。

 市街中央にそびえる黒く染まった大時計塔からは、それからも不定期に『シャドウファンガー』を出現し続けた。

 出現時間も出現個体数も安定しない魔族に怯える夜を、王都市民は過ごすこととなったのだった。

 騎士団により大時計塔そのものを破壊してしまう案が出されたが、黒く染まった大時計塔は、不可思議なことに物理攻撃、魔法攻撃を問わずあらゆる衝撃を吸収し、破壊を拒むのであった。

 結局現在は常に騎士団を周辺に配置させ、いつ『シャドウファンガー』が出現しても対応出来るようにしつつ、国中から研究者を集め調査、解析の準備を進めている。

『シャドウファンガー』自体の戦闘力は、通常の魔族より少し強力な程度で、精鋭揃いの王都防衛部隊であれば対処自体は難しくなかった。ただ出現数が安定せず、もし騎士団でも対処しきれないほどの数が今後出現したらどうなるかわからない。というのが実情である。

 騎士候補生はこれに対しどういう扱いをさせるかは、まだ検討中である。実際は他に検討することが多く後回しにされていたというだけであるが。

 宣戦布告を行ったベゼーグ。大時計塔を黒く染めたルシティス。当面はこの2体に再度接触することが重点となり、交戦した3人の将軍からの情報を中心に作られた人相書きが、騎士団員らに出回ることとなった。


 一方、フュリエスの名が魔族から出たことで深く衝撃を受けたレウスは、現在は自宅に戻って休息を取り回復しつつある所であった。


   ※


「すまないね、本当に」

 レウスは小隊の仲間と一緒に食卓を囲んでいた。

「……何があったんだ?」

 当然誰しも気になっていたことを、ショーマが聞く。

「……まあ、話さなきゃ駄目だよね」


 レウスは包み隠さず話す。

 フュリエスという名は、かつて出会ったフェニアスが幼い頃に使った偽名であること。

 それから、レウスがフェニアスに恋心を抱いていることも。


「いや、それは言う必要あったのか?」

「良いじゃないか、別に」

「……ていうか、そんな素振り全く無かったわよね」

 メリルもレウスとの付き合いは結構長いが、そんなことは1度たりとも、考えつきもしなかった。

「そりゃあ、ばれないようにかなり気を使っていたしね」

「……はあ、まあ良いわそれはもう。

 問題なのは、やっぱりその魔族の女王であるらしいフュリエスという名を、小さい頃の王女様が名乗っていた……、知っていた、という所よね」

「……んー。結局それってどういうことになるんだ? ……その、なんだ。……王女様と魔族には、何らかの繋がりがあったって、ことはわかるけど」

 ショーマはレウスに気を使い、言葉を選びながら言う。

「良いよ、僕のことは気にしないで」

「ああ、いや、ごめん……」

「小さい頃……、もう10年前のことだったかしら? それより以前にはもう、魔族の女王は王女様と繋がりがあった、ということね」

「でも魔族が増え始めたのって、3年ぐらい前なんだよな」

「そうね。ちょっと時期が合わないわね」

「潜伏していた、と考えればおかしなことは無いでしょう。あのベゼーグとルシティスという魔族は、人間に匹敵する知能を持っているようですし。それを率いる者ならば、時期が訪れるまで潜伏することくらいは考え付くでしょう」

「……もっと別の視点からも考えられるだろう。5歳児がとっさに名乗った名前だ。王女にとってフュリエスという女は、よほど印象的な存在だったはずだ。探すなら対象も絞られる」

 ローゼとバムスも意見を出す。

「うーん……。仮説を立てるとすると、まず魔族の女王フュリエスは10年以上前、王女フェニアス様と親密に接触していた。

 たぶんその頃はまだ王女様も、フュリエスという女が魔族に関わりがあったとは知らなかった。知ってたらさすがに偽名でなんか使わないでしょうし。

 そしてその後しばらくは接触が無かったけれど、ここ最近の間にそのフュリエスが魔族の女王であることを知り、魔族が戦争を起こそうとしていることがわかった。

 フェニアス様はそれに対抗するため、ショーマという異世界の勇者を召喚することにした。

 ……って所かしら」

「ふんふん。……あ、それじゃあひょっとして、俺の召喚を邪魔したのは」

「魔族の女王フュリエス。もしくはその配下……、あのベゼーグかルシティスと言う男達でしょうね」

「でも、王女様はそいつらのこと知らなかったんだよな。会った時、そんな話されなかったし」

「どこかでフュリエスが魔族に関わる者だと知っていた、という仮定が正しいのなら……、知らなかった振りをしていたことになるわ」

「……知ってたなら、なんで教えてくれなかったんだよ」

「さあ。でもわざわざ異世界の勇者を召喚までしたんだから、そのフュリエスが人間にとってかなりの脅威であることは、知っていたと考えて良いんじゃない?」

「んー……」

 ショーマはちらりとレウスを見る。片想いの相手が実は魔族と繋がりがあったというだけでもショックだろうに、隠し事までしていたとあれば、その心境はちょっと想像するのも辛い。

「……そのことも含めて、なんとか話が出来ないかちょっと手を回してみようと思う。……ちゃんと話せば、きっと教えてくれるから」

 レウスは思い詰めるように言った。

「え、話せるのか?」

「まあ、手がまったく無いわけじゃないよ。……ここで話していても、あまりわかることは無いと思う。今日は大変だったし、そろそろ休もうよ」

「そうなのか……? いや、うん、まあそうかな……」

 ショーマは少し考えながらも、疲れているのはその通りなので、何となく同意してしまう。それに、これ以上話を続けてレウスの心を疲れさせるのも気が引ける。

 それにしても……、フュリエスという名前。なんとなく王女フェニアス様と似ているのは、思い過ごしだろうか。

「それじゃあショーマ、そろそろステア嬢に食事を持っていってあげてくれないか?」

「あ」

 すっかり忘れていた。


   ※


「おーい」

「はーい」

 メリルと一緒に牢屋に入り声を掛けると、すぐに返事が来る。あんな騒ぎがあってもちゃんと大人しくしていたようだ。

「今日はなんだか凄そうなことになってたみたいですね。大丈夫でした?」

「ああ、まあ。……ここにいてもわかったのか?」

「ええ。このお屋敷には結界が張ってあったおかげか、何も無かったみたいですけど。でも結界より向こうはうようよでしたね」

 随分と感度が高い魔導探知能力であるようだ。

 とりあえず、ショーマは食事を檻の中に差し入れる。

「わ、いつもありがとうございますー」

「事情が事情だし、貴方のこともずっとここに置いておくわけにはいかなくなるかもしれないわね……」

 メリルが呟く。

「え、私にも魔族狩りを手伝えってことですか?」

「そうじゃないわよ。いつまでも世話してる余裕が無くなるから、放り出すか、騎士団に連れていくかってこと」

「う……、騎士団はちょっと」

「まあ、貴方無害っぽいし、騎士団には連れていかなくても良いかなとは、私も考えているけれど」

「ほんとですか!」

「…………」

「なんで無言なんですか?」

「あー、まあ。今はごたついてるし、もうちょっと待っててくれな」

 ショーマがなだめつかせる。

「はあ。……私はともかく、おにいさん達は大丈夫なんですか? 魔族」

「まあ、俺達は積極的に戦っていかなきゃいけない立場だしな」

「そうですか……」

 食事も与えたし、そろそろ戻ろうとする。

「……あの」

 すると、ステアが今更なことを聞いてきた。

「おにいさんの名前、そろそろ聞いて良いですか?」

「……え?」

 そう言えば……、ずっと名前で呼ばれた覚えが無いし、名乗った覚えも無い。

「ショーマ、だよ」

「ショーマおにいさんですか。覚えました。……ついでにそちらの変な匂いのおねえさんは」

「ついで……。ていうか、前も思ったけど変な匂いとか言わないでもらえる? 私は竜と力を共有しているから、たぶんそれで変に感じるだけよ」

「あーそうなんですか。言われてみるとそんな感じがしますねえ。で、お名前は」

「メリル・ドラニクス。竜操術の開祖である名家ドラニクス家の娘よ」

「すいません、世俗には疎くて」

「……ああそう」

「怒るなよ」

「こんなことで怒らないわよ」

「…………」

 やぶ蛇になりそうなので、その辺はあまり深くは突っ込まないでおくことにした。

「そ、それじゃあな。お休み」

「お休みなさい、ショーマおにいさん、メリルさん。名前教えてもらえて嬉しかったです」

「おにいさん呼びはやめないんだな……」


 ショーマは戻って、ステアに名乗っていなかったことをレウス達に話してみる。

「ああ、気付かなかったのかい? 最初から彼女の前では僕達の名前を出さないように話していたんだけど」

「マジか……」

「お前は本当に気が回らん男だな。あれが敵のスパイかもしれないとは思わなかったのか」

 バムスにも馬鹿にされる。

 これからはもうちょっと思慮深くなろうと思った。


   ※


 風呂にも入って、ベッドで横になる。

 考えることはやはり、今まで以上の侵攻を開始した魔族のことである。


 今までは動物や精霊による散逸的な攻撃しかしてこなかった魔族だが、今日は人の姿をした魔族を中心に市街への直接攻撃を行ってきた。

 そしてあの大時計塔。王都では王城に備わる監視塔に次ぐ高さを誇る、この街のシンボルとも言えたそれが今、魔族を出現させる魔の塔へ変貌を遂げてしまった。

 このブロウブ邸からもその様は見ることが出来る。陽が落ちた現在は発光魔法によって照らされており、夜の闇に紛れて魔族が現れてもすぐに発見出来るようにされている。かえってその存在を注視せざるを得なくなっているが、市民を守るためには必要なことだから仕方が無い。

 ……あれを元に戻す方法はあるのだろうか。ルシティスとかいう魔族が突き刺した黒い剣が元凶なら、それを行ったルシティスを討伐すれば直るだろうか。

 しかしそうしようとするなら、まずは何の情報も無い居場所を突き止める必要がある。ヴォルガムとロウレンの攻撃をも防ぐような相手にどう勝利するかも考え物だが。

 まあ何は無くとも、自分に出来る限りのことをしようと思う。

 そのためにこの世界にやって来たのだから。


 その時、控え目にドアを叩く音が聞こえた。

 こんな夜中にこんな控え目な強さでドアを叩く人物とは……。

 ショーマはそっと部屋の扉を開ける。

 ……リノンだった。

「ど、どうかしましたか。こんな遅くに……」

「ごめんなさい……。あの、……入っても?」

「え」

 リノンは不安そうな表情で、おずおずと上目使いに言った。

 今の彼女は仕事用のメイド服ではなく寝巻き姿である。

 さすがのショーマでも、リノンがどういうつもりでこんな時間にこんな場所に来たのかは察しがついてしまう。

(良いのか……)

 心臓の鼓動が一気に激しくなる。こんな日が来ないものかと思ったこともあったが、今日に限っては素直に喜べない気がする。

 リノンは恐れているのだ。魔族が市街に現れ、今もあんな物が残っているとあっては、仕方あるまい。

 ……誰かの腕の中で眠りたいと思っても、無理からぬことだと思う。

 ショーマはせめて、出来る限りいかがわしい気持ちを押さえつけて、リノンを部屋に招き入れた。


 ベッドに隣り合って座る。いや、ショーマは適当に座っただけなのだが、リノンがその隣に座ったのだ。だからこれは不可抗力というやつだ。うん。

 暫く会話も無く、暗い部屋で2人が座っているだけの時間が続いた。星が出ているし、大時計塔を照らしている光も少し入ってくるので、リノンの顔は見えなくも無いのだが、うつむいているので結局表情は見えない。

 せめて灯りでも付けようかと思い手を伸ばそうと体を起こしたら、リノンに腕を引っ張られて拒まれた。

「う……」

 灯りを着けるな、ということか。

「ショーマさん……」

 掠れるような声でリノンに名を呼ばれる。

 か細い力しかこめていない腕に引かれ、姿勢を戻す。

 するとリノンは、ショーマにそっと寄りかかるように抱き付いてきた。

(ああああ……)

 女性特有の柔らかい感触と温かい感覚が伝わってくる。風呂にでも入っていたのか、髪からも良い匂いが漂ってくる。

 これでは、もうすぐにでも我慢の限界になりそうである。

(ああ、ごめんなさい皆……)

 ショーマは心の中で誰にともなく謝りを入れる。

 ……とうとう決心の時が来てしまったのだ。

 流されただけの感はあるが、結局誰に対してもショーマの想いにほとんど差は無いのだ。ならいっそ流れに身を任せてしまうのも、良いかもしれない。身を任せたら後はもう、脇見なんてしない。真っ直ぐその人だけを見続けるだけ。せめてそこは芯を通すのが男の責任だろうと思う。だから。


「……私、怖いんです」

「はい」


「……私のこと、……守ってくれるって、言っていましたよね」

「……はい」


「…………私のこと、……守って、くれますか」

「…………はい」


 リノンは顔を上げる。その目にはうっすらと涙が浮いていた。

 ショーマはそれを指でそっと拭う。

 2人の顔が近付く。

 そしてどちらからともなく、目を閉じた。

 ゆっくりと唇が触れ合おうとした、

 その時。


 けたたましい音を立てて、窓ガラスが砕け散る。

 そこから飛び込んできた白と黒の影は、邪悪な匂いの元を嗅ぎ付け一気に飛び掛かった。

「……ッ!?」

 窓を蹴破りショーマの部屋に飛び込んだステアが、床を蹴りリノンに飛び掛かる。そしてショーマと寄り添っていた所を強引に引き剥がし、背中から押し倒したのだ。

「な……ッ!?」

 ショーマにはあまりに突然な事態に、状況がさっぱり飲み込めない。

 今日までずっと地下の牢屋で大人しくしていたはずのステア。

 その子が牢を破ってこの部屋に侵入し、

「いっ……、や……!」

 ……リノンを押さえ付けている?

「何してんだお前ッ!!」

 それに気付くまでのわずかな時間を終え、ショーマは激昂した。

「……この人からは魔族と同じ匂いがします」

「!?」

 ステアはリノンから視線をそらさず、冷たい声で告げる。

「…………何だよそれ」

 ショーマにはステアが何を言っているのか理解出来ない。

 それではまるで、リノンが魔族であるかの物言いじゃないか。

「今まで隠してたんですよこの人は。全然気付きませんでしたが、おにいさんを手に掛けようとしたこの瞬間、尻尾を出したようです。すっ飛んで来ましたが間に合って良かったです」

「……意味わかんねえよ。……リノンさん、痛がってるだろ。……離せって」

「駄目です」

「離せって言ってるだろッ!!」

 その叫びに、ステアはそっと振り向く。

 とても、悲しそうな目をしていた。

「……!」

 ステアはすぐに視線を戻し、リノンの寝間着の背中部を引き裂いて、素肌を露出させた。

「……っ」

 布団に顔を押し付けられているリノンが、声にならない悲鳴を上げる。

「これみたいです」

「……?」

 ショーマは押し倒されたままのリノンに近付く。突然のことに恐怖する彼女は、嗚咽を堪えながらも、涙を流して肩を震わせていた。

 そして、露出した肩から背中にかけて……、肩甲骨の間のあたり。白い肌に、薄ぼんやりと、紫色に妖しく光る小さな石が埋め込まれてた。その周囲の肌は、石から根が伸びるように盛り上がって、ゆっくりと脈打っていた。

「何だよ……、これ」

 不気味に輝くその得体の知れない、リノンに植え付けられているその石にショーマは動揺する。

 その時、部屋の外から騒がしい音がしたと思うと、ショーマの部屋にレウスとデュランが飛び込んでくる。

「ショーマ! 大丈夫か!」

 ステアが牢を破ったことで屋敷内には警報が流れ、少し遅れてショーマの部屋に侵入者があったことがわかったのだ。それを知ってレウス達は急ぎこの部屋へやって来たわけだ。

「レウス……、リノンさんが……」

「……!?」

 その言葉に、ステアはリノンの背中に植え付けられた石をレウス達に見せつけた。

「……なんだ、それは」

 レウスにもそれが一目でおぞましいものだということはわかったようだ。ステアが何かの悪意を持って脱走したわけでは無いということも。


「余計なことをするものだ……」


 突然。窓の外から、深い穴の底より響いてくるようなしゃがれた声が聞こえた。

 一同はその声に驚愕しながら視線を窓の外に向ける。

 薄汚れぼさぼさに伸びた髪、眉、髭。そこからわずかに覗くしわにまみれた、骨に薄く貼りついたような皮膚。そして闇のように暗い瞳と白い衣装を纏い、空中に浮遊する男は、昼間に現れた者によく似た雰囲気を漂わせていた。

 その老人のような男もまた魔族。すぐに理解出来た。

「失敗してしまったなら仕方が無い。教えてくれよう。……その『種』は人間に根付いて心を侵食する……、私の種子だ」

 魔族は淡々と語りだした。

「心を……、侵食……?」

 ショーマにはその意味がぼんやりと理解出来そうになってしまう。

「意思の全てを支配するまでには至らぬが、方向を決めさせる程度は出来る。『種』を植え付けられた人間は、それがあたかも自分の意思であるかのように、ゆっくりと私の意思で動かされていく」

「おい……」

「体を交わすことで異界人よ、お前にも感染させようと考えたのだがな。……まさか半分は同類だった者に邪魔されるとは。

 さて人間の女よ。お前は私に導かれその異界人に近付いた。親しくなった。恋をした。夜毎心をときめかせた。さぞ心地良かったことだろうな。

 ……だがそれは全て私の策謀によるものだ。私はお前を通じてその異界人の監視をさせていたに過ぎん」

「なんだよそれ……」

「……おっと。全てと言うのは間違いだな。そんな小さな『種』ではそこまでは出来ぬ。その感情には、少しくらいはお前自身の意思もこもっていよう。……どこまでそうかは、私の知ったことでは無いがな」

「…………ッ」

 邪悪に笑う男。そこへステアが床を蹴り、ショーマが常備していた剣を手に取り窓の外へ向けて駆ける。

「それ以上喋るな……!」

 剣を抜き鞘を放り捨て、刀身にありったけの魔力を込めて巨大な氷の刃を作り出す。窓枠を蹴った勢いを乗せて、斬りかかる。

 しかし魔族の男は黒い影に姿を消して、斬撃を回避した。

「!」

 ステアは攻撃を回避され、2階の窓から落下することになる。着地に合わせて膝を屈伸させ、衝撃を減らす。

「……誰に剣を向けている」

 再び現れた魔族の男は冷酷な視線をもってステアを見下ろす。ステアも怒りを込めて睨み返した。

「所詮は雑種か」

 魔族の男は、身に纏う白い外套の下から伸ばした蔓のような触手を、鋭く降り下ろした。

「……ッ!?」

「……滅せよ」

 地上のステアに向けて、斬撃のごとき一閃が打ち付けられる。

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