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ブランジア人魔戦記  作者: 長村
chapter,02
34/104

ep,033 予感

 ステアに朝食を与えたら訓練所に向かう。今日は任務も無くいつも通りの訓練だ。

 それも一通り終えて夜。

 レウスやメリルらは屋敷の書庫で、あてになりそうな文献をあれこれ探していた。ショーマはその作業には役に立たなさそうなので、その間に今晩の担当になったデュランと一緒にステアに夕食を与えにいく。

「ステア、ご飯持ってきたぞ」

「はいー」

 ショーマが会いに来るとステアはどこか嬉しそうにした。

「何もしなくて良いって言うのは楽ちんですけど退屈ですね」

「ん、ごめんな。……何か本でも持ってこようか」

「あんまり本とか読まない方ですけど、せっかくなのでお願いします」

「そっか。気に入りそうなの探してみるよ。あ、これ、夕飯な」

「わーい、ありがとうございますー」


「……ちょっと聞いても良いか」

「はい?」

 ステアの食事の様子を見ながら、デュランが口を開いた。

「教会の騎士団ってのは、普段どんな訓練をしてるんだ?」

「んー、役割によって違いますけど。基本的には1対多数を想定した戦闘訓練ですね。教会は人、少ないですから。

 私みたいな剣士の場合は、いかに敵の攻撃を捌きながら数を減らすかってことが大事になりますんで、複数人の練習相手にばしばし攻撃してもらって、それを避ける練習とか、確実に一撃必殺が出来るように、大きな樹に向かって攻撃を打ち込む練習とかですかね」

「実戦に近い状況を想定しているわけか」

「と言いますか、実際にしょっちゅうあちこちに出かけて実際に魔族とか相手にしてやってましたよ。習うより慣れろだそうです」

「……なるほど。人数が少ないから実戦に参加する機会が回ってくるのも必然多くなるのか」

「そうですね。やっぱりそれで大怪我しちゃう人も多いですけど、白魔さんがすぐに回復魔法かけてくれるので大体なんとかなってます」

「魔法の訓練はどんなだったかわかるか?」

「私はあんまり習ってなかったですけど、はたから見る限りでは、黒魔法は仲間内で実際にどかどか撃ち合ったりとかしてましたよ。それで負傷した人を治すのが白魔法の訓練ですかね」

「そんなことしてんの!?」

「……無茶するんだな」

「ちゃんと防御魔法をかけてますからある程度は平気ですよ? 回復魔法もありますし」

「それにしたってな」

「……はあ。あ、そうだ。教会の魔法って普通のとちょっと違うらしいです。違うって言うか、強力。多分皆さんが知ってるのよりずっとすごいんですよ。

 だから、一部の人しか教えてもらえないんです。それから、外ではあまり使うなとも言われるとか」

「何だそれは」

「封印魔法ってやつじゃないかな。教会ではそう言う魔導書が、世間一般に広まらないように管理してるって聞いたぜ」

「そうらしいですね。秘密の魔導書以外にも、特別な行使法とかもあるみたいですよ。詳しくはないですけど、術式圧縮とか言う、普通より速く魔法が使えるようになる技術とかあるらしいです」

「へえ、それは興味深いな」

「何かの機会に連中と訓練でも出来れば、色々と得られる物も多そうだな」

「無理だと思いますけどねー」

 あまり役には立たなさそうだが興味深くはある話を聞いて、今日は牢屋を後にした。


   ※


 翌朝。メリルに見繕ってもらっておいた本と、本を読む際に手元を明るくするカンテラと一緒に、朝食を持っていく。今朝一緒に行くのはフィオンになった。


「……は、髪の毛ですか?」

 そこでフィオンは、ステアの使っている毛布に付着した、彼女から抜け落ちた毛を採取して良いか頼んだ。

「その、調べたら何かわかるかな、って、思ったんです。あ、嫌なら良いんですけど」

「別に良いですけど……、その結果次第で私をもっと調べたいから解剖しようとか変な薬漬けにしようとか、そう言う展開は無いですよね」

「え? えっと……」

「無いから安心しなよ」

「じゃあ良いですよ」

「……あ、どうも」

 ステアは食事と本を受け取り、代わりに毛布を渡す。

 フィオンが毛布から毛を探し始めると、ステアもショーマに頼みごとをした。

「あの、私実は宿を借りてたんですけど、お金や私物もそこに置きっぱなしなんですよ。引き払うついでに持ってきてもらえません?」

「ああ、わかった。訓練所の帰りに寄ってくるよ」

「すいません。ちょっと重いから皆さんで行った方が良いと思いますよ」

 宿の場所と部屋の番号を聞いておく。

「あの、採取できましたので、毛布、お返しします」

「はいはい。じゃあ私はご本読んで待ってますね」

「うん、じゃまたな」


   ※


 訓練所へ到着すると、広場でヴォルガム将軍が誰かと話をしており、それを遠巻きに見ている人の輪が出来ていた。

「なんか嫌な予感がする」

「あれは……」

 レウスはヴォルガムの話し相手を確認すると、その輪に近付いていった。

「?」

 とりあえずショーマ達もそれに続く。


「俺は鍛えてやってるだけだっつってんだろ!」

「以前にも訓練生を病院送りにしていたでは無いか」

「今回はしてねえよ!」

「いずれするのは確実だな」

「……したからなんだってんだよ! ちょっとぐらい痛い目見た方が身に付くもんだっていつも言ってるだろ!」

「そんな根性論ではなく、少しは論理的にやれと言う話だ。病院で寝込んでいる間にも筋力は衰えるのだぞ」

「あーもううるっせえな! お前俺に命令出来る立場じゃねえだろ!」

「お前こそ私に命令出来る立場では無いな。そして訓練生はお前の命令には背けない立場だ」

「うっせえバーカ!」


 ヴォルガムと話……、というか口論をしていたのは、ヴォルガムと同じくらいの長身ながら、筋肉は無駄なく削ぎ落とした細身の老人だった。顔には皺が深く刻まれ毛髪や髭も大分薄くなっていたが、背筋はぴしりと伸びて、見た目の割に相当な若々しさを感じる。

 というかいい年して何をやってるんだか。

「誰?」

 ショーマはその老人に輝く視線を向けているレウスに聞いた。何でお前はそんな嬉しそうなのかというのも含めて。

「あの方はロウレン・ガイウス将軍。ヴォルガム将軍と同じく騎士団の『将軍』の1人だよ」

「ふうん?」

「この国をもう長いこと支え、先々代の国王の頃から騎士を務め数々の武勲を立てた立派な人さ。……そして、僕の剣の師匠でもある」

「あ、そうなの」

「何だと……?」

「ほう?」

 ショーマはその事実をあっさりと納得したが、デュランとバムスはそうでは無かったようだ。

「え、何?」

「お前だって『将軍』の力は知っているだろう」

「いや、まあうん……」

「ならそれを師匠に持つという誉れくらい理解しろ」

 ……あのロウレン将軍というのも、やはりあのヴォルガムのように冗談みたいな力の持ち主なのだろうか。そんな人が師匠なら、なるほど騎士を志す者にとっては羨ましいのだろう。たぶん。

 やがて言い負かされて反論出来なくなったヴォルガムが訓練所内に引っ込んでいくと、2人を遠巻きに見ていた人の輪も散り始める。

 ロウレンはその中から見知った顔がいることに気付いた。レウスも頭を下げる。

「やあ、久しいですね。レウス」

「はい、ロウレン将軍もお元気そうで」

 ロウレンはそれに柔和な笑みを返す。

「将軍は、今日はいったいどうしてこちらへ?」

「……先程のやり取りは見たでしょう。まあ、あの者が相変わらずの調子だと言うので、少々たしなめにね」

「ああ……。僕と仲間達も稽古をつけていただきました」

「ええ、噂にも聞いていますよ。あの者が機嫌良さそうにしているのも、君達が頑張ったからでしょうね」

「そんな、恐縮です」

「せっかく立ち寄ったので、後で私も君達と稽古をするつもりです。その時に、また」

「はい、よろしくお願いします!」

 レウスと別れ、ロウレンはヴォルガムと同じく訓練所内に入っていった。

 ショーマはヴォルガムの訓練を思い出して少しげんなりする。あんな感じの訓練をまたさせられるのだろうか。


 と思ったら、ロウレンの行う稽古と言うのは実際に剣を交えるわけではなく、こちらの訓練の様子をつぶさに観察して、問題点を見付けて適切なアドバイスをしてくれたり、優れている所を褒めて励みになるよう仕向けたりと、要するに気合いだの根性だの言うヴォルガムとは対称的な物であった。

 ショーマとしてはこちらの方がずっとありがたかった。確かに、ヴォルガムとの模擬戦では魔法の多重発動能力を使えるようになったり、心境的にも色々と……、何と言うか度胸はついた。こういう論理的な訓練では得難い物も多かったが、そう毎日毎日やるのは大変きつい。肉体的にも精神的にも。


 昼食の時間にレウスは熱く語る。

「ちなみにロウレン将軍は、ここ10年ほどで急激に安定した治安維持の立役者でもあってね。自ら私財を投資して市街の警備隊を増強させたり、防災対策運動にも積極的なんだ」

「ふうん」

「昔は強盗や誘拐なんて、痛ましい事件が戦乱に乗じて多発していたんだが、ここ数年ではもうめっきりさ。戦後にイーグリス国の敗残兵が野盗や山賊に成り下がったせいで、今はちょっと増えてしまっているけど、それでも市街地でそういうことは殆ど無いね」

「へえ」

「この前の警備任務もその一環なんだ。あんな簡単な任務でも給金はしっかり出るのも、ロウレン将軍の私財から何割かを充てられているからなんだよ」

「そうなのか」

「僕が小さい頃から世話をしてくださってくれて、剣以外にも色々なことを教わったよ。今の僕があることに父さんとあの人の存在はとても大きい。立派な人なんだよ本当に」

「ああうん、よくわかったよくわかった」


 何日も居座るヴォルガムとは違い、ロウレンはその日の内に訓練所を後にした。『将軍』の地位を持つ者は、騎士団の指揮下には入らず、独自の判断で行動出来る。積極的に魔族討伐をするのも、社会奉仕活動に精を出すのも、候補生達を指導するのも、それが不当だと判断されなければ自由なのだ。


   ※


 訓練所の帰りに、ステアの言っていた宿に向かう。彼女の名前と部屋番号を伝え事情を話したらあっさり了解された。失礼ながらいかにも安そうな宿だったので、その辺の安全性も大雑把なのだろうか。騎士団の関係者であることを名乗れば簡単に通してくれるはずだが、それをすることすら無かった。

 ステアの借りたと言う部屋には、例の大きな剣と、鎧と一緒に着けていた兜と小手、それからちょっとだけ中身が残っている金貨袋くらいしか無かった。

「本当に着の身着のままってやつだったんだな」

 デュランとレウスが2人がかりで剣を持ち上げている。やはり相当重いようだ。

「ショーマ、君はこれ」

「ああ……」

 ショーマは兜と小手を持たされる。鎧に合わせた、黒くて刺々しいデザインだ。

 剣といいこの鎧といい、あんな小さい子が装備する物とはやはり思えない。実際これを着て圧倒的な力を見せつけられた以上、納得せざるを得ないのだが。

「はぁ」

 思わずため息を吐く。

 戦いの中に生きる以外にも、あの少女に道は無かったのだろうか。親と離れ離れになった上、異常な力と出自のせいで、殆ど人生に選択の余地が無かったのではないだろうか。挙げ句の果てには育ててもらった教会から放逐されて、今は檻の中。同情するなと言う方がおかしな話である。

 ふとショーマは、その経緯が自分とどこか似ているようなことに気付く。自分には信頼出来る仲間もいるし、今やっていることは自分で考えて決めたことだ。豪勢な屋敷で暖かい生活も出来ている。

 だがもし少し道が違っていたら、自分もステアのようなことになっていたかもしれない。

 ……だから、あの子のことを気にしてしまうのかもしれない。メリルには少したしなめられたが、そこはもうしょうがないと思った。

「よしっ」

 せめてステアを、あの牢屋から出してやれるくらいには、なんとかしてあげようと心に決めてみた。


   ※


 その夜のステア当番はセリアと一緒になった。

「宿、引き払ってきたよ。荷物は足りないのとか無いよな?」

「ありがとうございます。全部足りてますよ」

 帰宅してステアに夕食を渡したついでに、持ってきた荷物の確認をさせる。問題無いことを確認したので、屋敷の中で鎧と一緒に置いておくために、また持っていく。

「本も読んでみると結構楽しいものですね。もう半分くらい読み終わりましたよ」

「そっか。じゃあまた明後日くらいに新しいの持ってくるよ」

「ありがとうございます」


   ※


 ステアの食事を終えて牢屋から外に出る。夜空には満天の星々が輝いていた。

「ショーマくんって、なんかあの子に優しいね」

「え、そう、かな……」

 セリアがぼそりと口にした。

 彼女の気持ちは、正直もう既にショーマ自身にもバレバレであるので、こう言う発言には緊張させられる。

「……ああいう子が、好みなの?」

「いや、そう言うわけじゃ。……そう、見えるかな?」

 ステアに関しては同情と言うか、共感と言うか、似たような境遇から来る思い入れであると言うことに気付いたばかりである。

 なので、少なくともセリアが心配するような感情では無い。と思う。

「ん……。わかんない」

「わかんない、か……」

 何となく沈黙してしまう。はっきり態度を示さないといけないとは思う、のだが。

「ごめんな。ちゃんと決められなくて」

「……うん」

 端的に言ってしまえば、みんな同じくらい大切なのだ。情けない話だが、誰か1人だけを選ぶなんてことが出来ない。

 ならいつか言われたように、全員まとめて。とも考えるが、所詮今の自分は文無し同然の身だ。家は借りているだけだし、お金を稼げてもいない。

 それに今は大事な使命もある。お金を稼いで家を持とうとする暇は無い。使命が果たされるまで待っていて欲しい、なんて厚かましいことを言えるほど甲斐性も無い。……本当に情けない話だ。

「もうちょっと、待ってて欲しい」

 そんな言葉が口をつく。

 もうちょっと、だなんて。

 どれだけ長くなるもうちょっとなのだろう。

「……それは、私のことも、考えてくれてる……、って思って良いの?」

「うん」

 それは本当だ。どうでも良いと思ってたらこんなには悩まない。

「……じゃあ、待ってる」

「良いのか?」

 ……場合によっては、諦めてもらわないといけなくなるかもしれないのに。

「うん、良い。……ショーマくんは、真剣に考えてくれてるから」

「…………」

「真剣に考えて、きっとみんな納得出来る答えを出してくれると思うから。そうやって悩み抜いて出した答えなら、どんな答えでも私は納得出来ると思う」

 星明かりに照らされながら、セリアは優しく笑った。

「……わかったよ。……ああもう、責任重大だなー」

「ふふ。自分で蒔いた種、ってやつだよ」

「うへえ」

 お互いの気持ちを直接口にすることは無かったが、言いたいことは言えた気がする。少しは荷が軽くなっただろうか。

 ……いざという時に備えて、心に予防線を張っただけな気もするが。


   ※


 その後、メリルから集合をかけられる。

「そんなたいしたことじゃ無いんだけれどね」

 メリルがこのブロウブ邸で見つけた本を開く。

「建国の伝承に関する本なんだけど。ちょっと探したらいくつか付箋が付けられている本があって。ほらこれ。

 ……勇者と共に戦いし勇者達。名をユスティカ、ガゼット、エイゼン、ブロウブ……。

 だって」

「つまり……?」

「300年前に異世界から召喚された勇者の仲間に、ブロウブ家の創始者がいたってことよ。ちなみにユスティカと言うのは代々国王が襲名する名前ね。他の名前も、今は没落したけどかつて名前を馳せた名家ばかり」

「……へえ。因果なこともあるものだね」

 レウスが感心していた。

「なんで創始者ってわかるんだ?」

「この国が出来る以前は、名前だけで名字の概念は無かったそうなの。国が出来たことで、人は一族という枠組みを作り、その名前を創始者から頂いたってことね。私はブロウブの一族の誰々だ。って名乗れるようにね」

「へえ、じゃあ創始者は名字と名前が同じになるわけだ。どんな風に呼ばれてたんだ?」

「さあ。創始者様とか、我が主とかそんなんじゃない?

 別にそんなことはどうでも良いのよ。ブロウブ家がかつての勇者とつながりがあったというのはかなりありがたい情報だわ。もっと探せば当時品の資料があるかもしれない」

「なるほど。直接的な手がかりでは無いが、この屋敷に何かある。というのがほぼ確実になったのは大きいね」

「ええ。また手伝ってもらうわよレウス」

「……ところで、なんでこれに付箋が付けられてたんだろうな」

 ショーマはちょっとした疑問を抱く。既に付箋が付けられていたということは、メリルが探し始める前にも、この情報を探していた誰かがいたことになるわけだ。恐らくブロウブ家の誰かだろうが。

「うーん。この付箋は割りと新しい物だし、僕の兄さんのどちらかじゃないかな。ブレアス兄さんは長いことリヨールにいたし、グローリア兄さんだと思う」

「総団長殿なら、300年前と今の魔族の状況に関係性を見出だして、独自に調査していた。と言うのはまあ考えられるわね」

「調査資料が残してあったら僕達にも役立ちそうだけど、勝手に見られるようにはなってないかな……。兄さんと直接話が出来れば良いんだけど」

「無理でしょうね」

「だろうね……」

「ま、取り合えず探してみましょ」

「そうだね」


 そしてレウス達はまた書庫へ向かっていった。

「そう言えばフィオン、今朝のあれ何かわかった?」

「あ、いえ……。訓練中はあんまり暇が無いですし、詳細はこれから……」

「それもそうか。ごめんな」

「いえ……。でも、ちょっと調べただけでも、やっぱり人間とは明らかに構造が異なるのはわかりました。魔族と関係があるかまでは、わかりませんけど」

 それを聞いて横からセリアが聞いてくる。

「何の話ー?」

「ああ、ステアの髪の毛を調べたいんだってさ」

「髪の毛? 何で?」

「毛ってのは生き物の遺伝子情報がたくさん詰まってるんだよ」

「ふうん……?」

 セリアはよくわかっていない様子である。

「お詳しいんですね……」

 フィオンはショーマの意外な博識さに驚いているようだった。

「……あれ?」

 ショーマは自分で言って自分で疑問に思う。どこで知ったのだったか。……覚えが無いなら、やはり前の世界での知識だろうか。

「まあ、良いか」


   ※


 ……少し、行き詰まってきた気がする。

 ステアの話してくれたこととか、過去の書物を探して魔族について調べたりと、一見好調なようだが、それで何か大きく事が動くような気はあまりしない。

 ステアは魔族との間の子であっても、人間と一緒に育ってきて、魔族とはほとんど関わりは無い。

 資料探しだって、メリル達の頑張りを否定するようで嫌だが、それで魔族の本拠地とかがわかるわけでも無いだろう。300年前の勇者を辿れば、目的や滅ぼし方等、重要なヒントはわかるかもしれないが。

 ……だから結局の所は、魔族の方が動いてくれないと状況は動かない。根拠は無いが、そんな気がするのだ。


 ……結果から言えば、それは間違いでは無かった。

 ただ、そうなって欲しい。なんて考えは、間違っても抱いてはいけなかったと言うだけだ。

2012年 03月01日

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