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ブランジア人魔戦記  作者: 長村
chapter,02
27/104

ep,026 獅子槍将軍ヴォルガムとの模擬戦 (2)

 土嚢に突っ込んだデュランを周りで見ていた騎士団員が引っ張り出し、治癒魔法をかけ始める。ヴォルガムの突撃を食らった以上は放っておくのも危険だ。案の定気絶していたため、これ以上は無理と判断し、強制的に戦線離脱というわけだ。

「ま、ヴォルガム将軍にああも肉薄出来たなら大したもんさ」

 治癒をかける騎士が呟いた。そのまま視線を広場中心に戻す。するとその戦場には、少し目を離した隙に異様な影が現れていた。


   ※


 野外広場に設置された模擬戦会場に巨人が出現する。

 フィオンの発動させた『ゴーレム結晶解放』により出現した『サンドゴーレム』だ。

 薬師術によって精製された疑似ゴーレムコアと、肉体を構成するための大量の砂を、これまた薬師術の特殊な魔法技術で、手のひらに収まる程度の大きさの結晶に圧縮させた。そしてそれを専用の術式でもって解放させるのがこの術だ。

 地面に書き込まれた術式に魔力が流れ終えると、その上に置かれた結晶がどろりと溶けて解放される。圧縮された砂がコアを中心に竜巻を起こし、やがて人の形をとっていく。その巨体はおよそ8メートルほどにも及んだ。

「おいおい……!」

 ショーマは覚えのある巨体に戦慄を覚える。まさかフィオンがこんな物を用意していたとは。

 フィオンの思念操作を受けて、ゴーレムが動き出す。右の巨腕がヴォルガムに叩きつけられる。3つの魔法を耐えている所にこれは、いかなヴォルガムと言えど防ぐのは容易くない。

「おおおおおお!!」

 だがヴォルガムは叫びを上げ、闘気を力任せに放出することで氷の束縛をまとめて打ち破り、さらに炎の巨大剣も槍で押し飛ばす。

 そして柄から離した左腕を伸ばし、ゴーレムの巨腕を受け止めた。一瞬の早業。かなりギリギリのタイミングであった。

「ぐう……ッ!!」

 しかしさすがにかなりの無茶であったため、苦悶の表情を覗かせる。

 ……これは行けるかもしれない。すかさずローゼは矢を放ち、ゴーレムの腕を押し戻そうとしているヴォルガムの左腕に突き立てる。撃ち抜くつもりだったが、さすがというか、筋肉の鎧で威力はだいぶ減らされてしまっている。続けて足にも撃ち込むが、効果は薄い。

「悔しいですが、まるで効いていませんね……」

 その程度は虫に刺された程度だと言わんばかりに、ヴォルガムは無反応である。それどころかゴーレムとの力比べの均衡を破り、押し返そうとしている。

「ぬううう……!」

「わわっ」

 操作を行っているフィオンはゴーレムとリンクするように、体のバランスを崩してしまう。

「……2人とも、まだいけるか?」

 ショーマはメリルとセリアに声をかける。

「……ええ、大丈夫」

「私は、あとちょっとしか……」

「……わかった。……もうちょっとだけ頑張ろう」

「ええ、そうね」

「……うん!」

 メリルとセリアも限界が近そうだ。自分はもう結構な回数、上級魔法である『バーニングブレイド』を撃っているが、まだ余裕がある。

「私も魔矢は撃ち尽くしてしまいましたが、出来る限りはやらせていただきます」

 ローゼも気合いは十分のようだ。諦めずに矢を放ち続ける。

「フィオンももう少し頑張ってくれ!」

「は、はい!」

 その返事と共に、ゴーレムの腕がまたヴォルガムを押し込んでいく。ショーマは懲りずに『バーニングブレイド』の準備を開始する。


 デュランはどうやら騎士団に治癒をかけてもらっているようだ。復帰は無しだろう。

 レウスは剣を構え、様子を窺っている。今の状況で魔法を撃つとゴーレムにも当たりそうだが、斬撃なら問題無くいけそうに見えるのに。何かを待っているのか?

 そしてバムスは先程吹っ飛ばされてから動きが無いが……。

「あっ」

 そのバムスはいつの間にか、ヴォルガムの背後に立って両拳を振りかぶっていた。

「!?」

 最も近くにいたヴォルガムですら、その存在にはたった今気付いたようである。

 バムスは拳術技の1つ、『影歩法』によって気配を限り無く殺し、まるで影のようにヴォルガムの背後へと迫っていたのだ。ゴーレムの巨体に隠れたことで効果を増し、ここまで接近することが出来たのだ。

 本来なら攻撃が命中する瞬間まで気付かれないはずの影歩法であったが、ゴーレムという目眩ましを使ってまでも、ヴォルガムには攻撃前に気付かれてしまった。

 だが、十分だ。

「ハアアァッ!!」

 バムスは左右の掌底をヴォルガムの背中に叩きつける。拳術技『双雷導掌』。闘気を込めた掌底で、体の内側に雷撃のような衝撃を与える技だ。

 ヴォルガムは背筋に力を込めて防ごうとする。確かに掌底の威力は減じさせたが、体内へのダメージまではそうもいかない。

「ぐぅ!」

 内臓まで筋肉のように鍛えられるわけも無く、ダメージを受ける。体内への衝撃に膝ががくがくと震え始め、ゴーレムの巨腕に負けそうになる。

「こンの……」

「!?」

「やってくれるじゃねえか……ッ!」

 怒りの声と共に、強烈な殺気が飛ぶ。

 ヴォルガムの両足から闘気が溢れ出し、風を起こして砂を巻き上げ始める。

「なんだ……!?」

 その闘気の奔流はさらに勢いを増し、地面に亀裂を起こすまでに至った。

「おおおおおお……!!」

 ゴーレムの腕を、徐々にヴォルガムが押し返していく。そして、右腕の槍を中心に闘気が集まっていく。

「どおりゃああ!!」

 槍の周囲で小さな竜巻となった闘気をゴーレムの胴体に突き出す。槍術技、『旋風大突破』。突き出した槍を中心に、螺旋状に巻き起こされた風が撃ち貫く技だ。

 旋風がゴーレムの腕と胴体を削り、大穴を穿つ。その勢いでゴーレムは後ろにのけぞり転倒しそうになる。

「ん……!」

 フィオンは思念を送り、なんとか踏みとどまらせる。この巨体では1度転倒されたら、起こすのはほぼ不可能だ。腹に穴が空いたが、幸いコアが無事ならば行動は継続できる。さらに自己修復機能で、撒き散らされた砂を吸い込み、破壊された部分を修復させていく。

「チッ……!」

 ゴーレムを押し返した隙に、バムスは再び攻撃を叩き込もうとする。それに合わせてレウスも駆け出す。

「ぬん!!」

 しかしヴォルガムは、闘気を込めた槍を乱雑に振るだけでバムスを吹き飛ばした。そして背後からのレウスの斬撃は左腕1本で受け止める。出血すら起こさない強靭な腕をぐるりと捻り、レウスの手首を掴み取ると、そのまま地面へと叩きつける。

「うぐっ……!」

 そこからもう1度持ち上げ、土嚢に向けて放り投げた。観戦していた騎士達が駆け寄っていく。これで戦線離脱だ。

 そして、のけぞった状態から体勢を整えつつあるゴーレムに槍を向け直す。

「やばい……!」

 ショーマは『バーニングブレイド』を放つ。

「甘いッ!」

 だがまたもや勢い良く弾き飛ばされてしまう。

 その隙に体勢を整え終えたゴーレムが巨腕を放つ。

 ヴォルガムは今度は高く跳躍しこれを回避。そのまま地面に轟音を立てて突き立った腕に着地すると、その腕を駆け上って行く。

 ゴーレムはその腕を一気に持ち上げ、振り落とそうとしたが、ヴォルガムは再び跳躍し、頭部にめがけて槍を投擲した。

 槍術技、『旋風削壊突』。螺旋状に巻き起こした闘気を槍に纏わせ投擲し、対象を削り穿つ技だ。威力は一段下がるが遠距離に攻撃出来るのが強みだ。

 ローゼはこれを撃ち落とそうと矢を放つが、闘気を纏った剛槍にはまるで歯が立たずに弾かれる。

 槍は岩削器のように回転しながらゴーレムの外殻を削っていき、やはて隠されていたコアにまで到達する。

「あづっ……!」

 コアへの衝撃が、思念を通じていたフィオンにも返ってくる。その痛みで思念の接続が切れ、ゴーレムは動きを止める。それとほぼ同時にコアも打ち砕かれ、ゴーレムの体は大量の砂に戻っていった。


「結構驚かせてくれたぜ……!」

 一面を覆う砂ぼこりを振り払って、ヴォルガムが現れる。手にした訓練用ウッドランスは、先程の一撃で先端がぼろぼろにひしゃげている。

「こんなんになっちまったが、まあもうちょっとだけなら……、いけるよなあ!」

 まさに大人気ないとしか言い様の無い有り様である。デュランとレウスを打ち倒し、秘蔵のゴーレムも力業で破壊し、いくつもの高位魔法を耐え抜く。本当に人間なのだろうかあれは。

(なんて理不尽な……)

 ヴォルガムはぼろぼろになった槍を構える。

 そこに再び気配を消して背後からバムスが現れ、拳を撃ち込もうとした。

「オオオオ!!」

「……2度は効かねえッ!」

 だがヴォルガムは背後を見ようともせずに柄を突き出して、バムスの腹部に突き立てる。そのまま勢い良く飛ばし、土嚢に突っ込ませた。


「……おう、まだなんかあるなら、ちょっとだけ待ってやってもいいぜ」

「わわ……」

 バムスまでもが戦線離脱し、残った5人では突撃を防ぐ手段は無い。ヴォルガムもそれはわかっているらしく、余裕を見せる。

「……あっちだって結構消耗してるはずよ。最後に皆で全力出せば、可能性はあるかもしれないけど……。やってみる?」

 メリルが虚勢を張るように言った。可能性はあるかもと言われたって、極小だ。もし駄目だったら、あの突撃を食らってしまうだろう。

(……痛そうだな)

 ここで諦めて降参と言うのもありかもしれない。いや、それが正しいだろう。敗けを認めず無謀な攻めで被害を増やすのは、下策でしかない。

 だがショーマには、ここで退きたくは無いという気持ちが今はあった。皆の奮闘を見てその意気を無駄にしたくないと思ったのか。それとも何度も何度も魔法を防がれたことが気に入らないのか。よくわからないが、とにかく目の前のこの男に、せめて一矢報いてやりたかった。

「……みんな、下がっててくれないか」

 そんな言葉がつい口を出る。

「嫌よ」

 しかしメリルはそれを否定した。

「……貴方達もそうでしょう?」

 メリルは他の3人にも同意を取る。

「……うん!」

「まあ、良い機会ですしね」

「……私も、だだ、大丈夫です」

 セリア、ローゼ、フィオン。3人ともヴォルガムに恐れは抱いていても、気丈に答えた。

「え、いやいや、何言ってんのさ」

「それはこちらの台詞ね。……これは模擬戦なんだから、勝つにしろ負けるにしろ最後までやり通すべきだと思うわ」

「……模擬戦なんだからこそ、無茶はしないもんじゃないか?」

「違うわ」

「……ああ、そう」

 メリルは即答する。ショーマの考えがどうこう以前に、そもそも降参という選択肢が無いようだ。

(……しょうがないな)

 覚悟を決めて、ヴォルガムに向き直る。

「おう、もう良いのかい?」

「ちょっと、これだけ準備させてくださいよ」

 ショーマはまたもや『バーニングブレイド』を発動し、待機状態にしておく。

「あー……、またそれかい。実を言うとな、それ防ぐの結構きついんだぜ? まったくまあ無尽蔵に撃ちまくりやがってな」

「……そうだったんですか。ちょっと自信無くなってきた所ですよ」

「良く言うぜ。自慢のが軽ーく防がれたもんで、ムキになってるんだろ?」

「そうかもしれませんね」

「ハハッ。……そういうの、嫌いじゃないぜ」

「…………」

 ショーマは声をかけられる度に、心の熱が冷めるような感覚だった。褒められてもちっとも嬉しくない。

 そうやって笑いながら、ヴォルガムは次から次へと仲間達をぶちのめしていったのだから。

 恨むのは筋違いだ。これは模擬戦で、お互い合意の上でのことだ。

 だがこのままやられるのは……、面白くない。

 その時、待機状態にあった『バーニングブレイド』にさらなる魔力が込められた。巨大な剣が一回り大きくなり、その周囲に燃え盛っている炎の勢いも激しくなる。

「こうするほうが、まだ可能性はありそうだから」

 メリルがショーマの組んだ術式に割り込んで、魔力を注ぎ込んだのだ。

「……こんなこと出来るんだな」

「まあね。セリアにも出来るはずよ。やってみて」

「あ、はい!」

 メリルに言われて、セリアも術式に割り込み魔力を注ぎ込む。

「あれ、あんま変わんない……」

 使える魔力がもう無かったのか、巨大剣の様子にはほとんど変化は見られなかった。

「いや、そんなこと無いよ」

 しかしショーマには、何より2人から力を分け与えられたというのが、とても心強かった。

「……それじゃ、行こうか」

 この一撃で、決まる。


 射出された巨大な炎の剣と、闘気を纏ったぼろぼろの木の槍がぶつかり合う。

「ぐうっ……!」

 この戦いで撃ち込んだ中でも最も巨大で強力な1発だ。これを防がれたら、もう覚悟を決めるしか無いだろう。

 押し合う中、フィオンが手製の爆弾を投擲する。それをローゼの放った矢が空中で撃ち抜き、ちょうど巨大剣の柄尻の辺りで爆発した。

 爆炎を吸収し、爆発の勢いに押されることで、更なる力を得た巨大剣は、ヴォルガムを更に押し込んでいく。

「やるねえ……ッ!」

 だがヴォルガムはそれをも耐えようとする。槍を持つ手元だけでは無く、地面を踏みしめる足元と、自身を押すように背中からも闘気を噴出させる。闘気の流れが全身を覆っていく。

 全身を覆う闘気で自らを槍に見立てて突撃する槍術技、『獅走大撃突破』。デュランを吹き飛ばした技の、真の姿である。

「くっそ……!」

 徐々に押し返される『バーニングブレイド』に、ショーマは苦痛の表情を浮かべる。本当にもう手は無いのか。

 ……まだ自分には撃てるだけの力は残っているのに。

 だが少しずつ炎の巨大剣はヴォルガムの『獅走大撃突破』によって砕かれていく。

「終わりだあッ!!」

 ヴォルガムの叫びと共に、炎を散らし、爆音を轟かせて、炎の巨大剣は完全に砕け散った。


 最大の力を込められた『バーニングブレイド』を撃ち破ったことでヴォルガムを覆う闘気はほとんどが失われた。だがひ弱な魔導師を倒すのにそこまでの力は必要無い。勢いを減じはしたが、このまま突撃を続ければ十分に勝てる。

 そのはずだった。

 消滅したはずの炎の巨大剣の背後から、もう1発。さっきよりも若干小さい炎の巨大剣が飛来していた。

「何だと……ッ!?」

 1発目をめくらましとした、2重発動による追撃。今まで執拗に1発ずつ撃ち込んでいたのは、この技能が無いと思わせるための布石。……ヴォルガムは一瞬だけそう思った。

(なわけ無えだろ……!)

 そんなことを隠すためだけに、味方がぶちのめされるのを見過ごすわけが無い。ならば、

 ……この土壇場で、修得したと言うのか。

 そして、闘気をほとんど失った無防備なヴォルガムの体に、ショーマの『バーニングブレイド』が突き刺さった。


 爆炎が広がる。ショーマ本人ですら予測していなかった『バーニングブレイド』の2重発動。その2発目がヴォルガムに突き刺さったのを見た。

「や、やったの……?」

(まさか……)

 とうとう直撃させたのは喜ばしいが、あんな化け物がこれでやられるとは思えない。そんな雰囲気がある。

 その時に備えて、ショーマは身構える。

「こんの……、ガキどもおおおおああ!!」

 ヴォルガムが炎の中から鬼の形相で現れる。肌や服に焦げ跡が見える。とは言え、ほぼ無傷のようだ。闘気はもう無くとも、彼には強い対魔力があるのだ。

(……来た!)

 槍を振りかぶり、叫びを上げながらヴォルガムは突撃してくる。

「ひっ!」

 うずくまる仲間達の前にショーマは両手を広げて立ち、そして叫んだ。

「降参する!!」

「!」

 その言葉を聞いたヴォルガムは足を地面に突き立てて、強引に減速をかける。砂埃を巻き上げながら、ショーマの眼前ぎりぎりで静止する。

「あァ!?」

「だから、降参、します」

「…………」

「…………」

 至近距離で睨み合うショーマとヴォルガム。そのまま少しだけ沈黙が続いた。

「……俺の勝ちか」

「……そうです」

「…………ふ」

「…………」

「……ふ、ふっふっふ……。はーっはははははは!!」

 ヴォルガムはゆっくりと大笑いを始めた。そして、

「儂の勝ちだぞぉ!!」

 一人称をこっそり戻して、周囲の観戦者達へ高らかに勝利宣言をした。

(このジジイ……)

 最後まで大人気無かったヴォルガムに、ショーマは顔をひきつらせるしか無かった。


   ※


 治癒を受け、気絶から回復したレウス達と合流する。

「すまん、負けちゃったよ」

 ショーマは申し訳無さそうに言った。

「ああ。まあ……、仕方無いさ。反省会は後でするとして、今は少し休もうか。疲れただろ?」

「ん、まあ……」

 肉体的な疲労と言うよりは、精神的な疲労が大きかった。

 取り敢えずは全員揃って広場の後ろに下がり休憩を行う。

「ねえ、ちょっと」

「ん?」

 メリルが声をかけてくる。

「最後の、あれ。今まで貴方、多重発動なんて出来なかったわよね?」

「ああ、うん……。なんか、出来たな……」

「なんかって……」

「ん、自分でもどうやったかよくわからなくてさ」

「そう……。まあ、1度出来たならちゃんと練習すればまた出来るようになるわよ、たぶん」

「へえ」

「…………」

 なぜか無言でジト目を向けられる。

「えっと……?」

「……わかってるわよね」

「はい……」

 またいずれみっちりと教え込まれる。そういうことだろう。


「ねえねえ」

 セリアはショーマとメリルの会話が終わったのを見はからって話しかける。

「ん、なに?」

「あ、ショーマくんは悪いけどちょっとあっち行っててくれる?」

「え? ああ……」

 セリアはメリルと2人だけで会話する。

「最後のあのあれってさ……」

「ええ、そうよね……」

 ごにょごにょと話している2人に背を向けていたショーマは、今度はローゼに話しかけられる。

「ショーマ様、先程は私達をかばってくださいましたよね」

「!!」

 こそこそと話していた内容を横から本人に直接ぶつけられて、2人は声も無く叫んだ。

「ああ、いや、……まあ、結局ぎりぎりで踏みとどまって貰えたし、俺も無傷だったし……。かばったというか、……ね?」

「ご謙遜なさらず。その勇気ある行動こそが、とても心に感じ入りました。深く感謝いたします」

「いや、そんな……」

 そこにフィオンも会話に混ざってくる。

「あ、あの。私からも、お礼、言わせてください!」

「え、いや、良いって……」

 メリルとセリアは本人に隠れてこそこそと話していた手前、その様子をただ見ていることしか出来ないでいた。


   ※


「さーて、次はどいつらだ!?」

 ヴォルガムの装備を直し、広場の整地が終わるとすぐに次の模擬戦が始まろうとしていた。

「元気だな……」

「ああ……」

 ちょっと休んだだけでまた元気になったヴォルガムを、第1小隊は冷ややかな目で見つめていた。

2012年 03月01日

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