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ブランジア人魔戦記  作者: 長村
chapter,02
19/104

ep,018 リヨール市街、学術地帯における戦い (1)

「敵……?」

 レウスの言葉に、ショーマ達の間には緊張が走る。

「ああ。さっき市街を覆う城門に張られた結界が突破される感覚もあった。気付かなかったかい?」

「いや……。でも何であんな所に敵が……?」

「陽動、かもしれない。いや……、君が狙い、というつもりでは無いのかもしれない。ひょっとしたら魔族ですら無い可能性もある。いずれにせよ僕達は下手に動かず、ここでもしもの時に備えておくべきだ」

 魔族じゃないとすると、テロリストとかそういう類いだろうか。例えそうだとしても。

「……お前、それで良いのか」

「……痛いところを突いてくるね。この非常時に座して見ているだけというのは、心情的に辛い。……それに、君だってすぐに飛んでいきたいだろう」

「……ああ。あの辺りって……」

「学校の近く、だね」

 それは一号宿舎の近く。つまりはリノンが危険ということでもある。

 レウスはため息を吐く。

「……仕方無い。ショーマを護衛するためにも皆で行くしかないか。……だがせめて戦闘用の装備品くらいは用意してからだよ」

「……わかった。ありがとう」


 屋敷地下の武器庫へ行き、ショーマ、レウス、セリア3人分の装備を用意する。急なので対魔ローブと、それぞれの手持ち武器程度で済ませておく。武器はショーマとレウスは術式が刻まれた剣。セリアは魔法補助ワンドを持つ。メリルはいつものコートを取りに自室へ戻っていた。


 取り急ぎ準備を済ませると、執事達に家のことを任せ、表に出る。

「あ、あの……、襲撃って学校の周辺だけなのかな」

 セリアが不安そうに口にした。

 夜空を見渡すと、炎によって明るく染められているのは1方向だけである。だが。

「襲撃があれば必ずしも火事になるってわけでも無いね」

「…………」

 セリアはそれを聞いて青ざめる。

「……東居住区にこの子の実家があるの」

「……!」

 横からメリルがその事実を口にした。

 街の全域、とまではいかないにしろ、不特定箇所を襲撃されているとなればセリアの家族にも危険が及んでいる可能性はある。

「メリル、お前の竜で空飛んで、セリアを連れていけないか?」

「……あのね、あの子は私の力にはなってくれても、他の人間のためには動かないわ。あの子は誇り高い竜族で、道具では無いの」

「そんな……」

「……だから、私が1人で行くわ」

「!」

「……メリル」

 メリルはセリアに向き直る。

「そういうことだから、セリア」

「うん……、ごめんなさい。ありがとう」

「家の場所とか、親の顔は知らないから、とにかく魔族を見付け次第ぶっ飛ばしておくわね」

「うん……!」

 メリルは頷くと宝石に手を当て、契約を交わした竜を召喚する。

 夜の闇を激しく照らす閃光の中から現れたサフィードの背に乗り、翼をはためかせ飛び立っていく。

「気を付けてな!」

「……さあ、僕らも行こう」

「ああ!」


   ※


 夜の高級住宅地帯を駆けていく3人。この辺りでもすでに住人達がにわかに騒ぎ出している。だが今の所直接的な被害は出ていないようだ。

「避難とかさせなくて良いのか?」

「まだ大丈夫みたいだし騎士団に任せよう。大体そんなことする暇無いだろう?」

「……まあ、そうだけどさ!」


 学術地帯へ辿り着く。この辺りは士官学校以外にも様々な研究施設や学術機関等がある。ここを重点的に狙われているようだ。いくつかの建物から火が上がっており、急いで逃げ出している人々ともすれ違う。

「ショーマ! 悪いがセリアと先に行っててくれ! すぐ追い付く!」

「……わかった!」

 レウスはやはり逃げ惑う人々を見過ごせない様子であった。

「みなさん落ち着いて! まずは士官学校の方へ向かって! あそこなら安全ですから!」

「……セリア、こっちだ!」

「はい!」

 学校の方へ人を誘導するレウスと別れ、ショーマとセリアは一号宿舎の方へと走る。


「大丈夫みたいだな……」

 寮の外観が見えてくる。火の手が上がっている様子はまだ無い。とは言え、襲撃があれば必ずしも火事になるとは限らない。そういう話だった。

 と、気を引き締めた途端、夜空を炎の塊が流れ、一号宿舎の3階あたりに突っ込んでいった。

「まじかよ……!」

 爆発が起こり、火の手が上がる。

 急ぎ正面入り口へと向かうと、門の前で警備兵が2人背中合わせに立ち、10体ほどの魔族に囲まれていた。

 燃えるような真っ赤な体毛を持つ狼、『ファイアウルフ』の集団だ。火の手が上がったのは炎の魔力を持つ魔族の仕業で正しかったようだ。

「セリア!」

「はい!」

 セリアは初級魔法『アイスストーン』を発動させる。だがそれは、メリル直伝の特殊な魔力の行使法……、余分に魔力を練り込む方式によって、通常の倍以上の大きさを誇る、氷の岩となっていた。

 背後からの巨大な氷の塊をぶちこまれ、ファイアウルフの1体がまず絶命した。

 ショーマは手にした剣に魔力を込める。すると刀身を覆うように氷の刃が被さる。駆け込み一閃、こちらに気付いて飛びかかってきた1体を斬り裂く。氷の魔力が伝わり、傷によるダメージに加え体温を一気に奪う。炎の魔力を持つため基礎体温の高い敵には特に有効な一撃となった。

 警備兵の2人は、突然の協力者にも素早く対応し、崩れた包囲網の一角を抜ける。その際に1体ずつ斬り捨て、これで残り6体。

 隙を見せた彼らの背後に襲いかかるファイアウルフに向け、ショーマとセリアは素早く『アイスストーン』を撃ち込み足を止めさせる。だが威力が低く絶命させるには至らない。

「すまん、助かったぜ!」

「学生さんか、あんたら」

「はい。怪我は?」

「かすり傷程度だよ。それより、寮に突っ込んでった魔族がまずい。まだカターマの旦那とお嬢さんが残ってるんだ」

「……!」

「寮生は先に逃がしたんだが……!」


   ※


「何よあれ……!」

 リヨール上空を飛ぶメリルとサフィードは、魔族『フレイムスワロウ』が全身を炎に包み、建物へと突っ込んでいく様を目撃した。あれでは自分も命は無いだろうに。自滅覚悟の攻撃だというのか。

 飛翔と落下の勢いを持った炎の塊は、小さい体と言えどかなりの被害をもたらすだろう。しかもまだ数体が辺りを旋回している。狙いを定めているようだ。

「その前に撃ち落とすしか無いわね……!」

 東居住区へも行かないといけないというのに。しかしこれを見過ごすわけにもいかない。

「行くわよ、サフィード!」

 メリルは指を立て自分とサフィードの魔力を練り上げると、独自に改造した『アイスストーン』の連続発動術式を組み上げた。

 激しい勢いで連射されていく氷の礫が、夜空を舞う炎の鳥に襲いかかっていく。


   ※


「俺が中に行って連れ出します。だからここは……」

 ショーマは炎が広がりつつある一号宿舎への突入を決意する。

「……いや、しかし危険だ!」

「いや、いい。任せる!」

「おい……」

「どっちにしろ急いで誰かが行かなきゃならん。ならこいつらを任せるのとどっちが良いかって話だ」

 目の前にじりじりと迫るファイアウルフ。不意打ちで4体を仕留め、残りは6体。正直4人がかりでも少してこずる数だが、これ以上時間を取られてはまだ寮内に残っているカターマ親子も危ない。

「しょうがねえ。悪いが任せるぜ学生さん達よ!」

「すいません。お気をつけて! セリア、行こう!」

 魔族に気を付けながら、寮入り口へとショーマとセリアは走る。しかしファイアウルフ達はそれを追わなかった。

「何だよ、そんなに俺らが良いってのかい……?」

「2対6か。さっきよりはましだが、ちこっと厳しいな」

「……だが、あの兄ちゃんがリノンさんを助けてくれるってなら、後のことは考えずにやれるよな」

「おうよ。……俺達のお姫様のためだってなら、この命!」

「……惜しくは無い!」


   ※


 寮のロビーに突入する。ここはまだ綺麗なままだ。しかし人影は無い。

「リノンさん! ……カターマさん!」

 呼び掛けても返事は無い。受付の奥にある部屋も覗いてみるが、ここにもいない。

「カターマさん!」

「どこに行っちゃったんだろう……」

 部屋の中を見渡すと、あることに気が付く。

「これは……、鍵を閉まっておく箱、だよな」

 その中の1つが開いていた。

 部屋の番号は、以前ショーマが暮らしていた部屋だ。

「行こう」

「え、ど、どこへ?」

 急ぎこの部屋を出て、階段をかけ上がり3階に到達する。

 既に火の手がだいぶ広がっている。そこに、

「リノンさん!」

 いた。父親の姿もある。

「ショーマ、さん……?」

 リノンはうずくまる父親に寄り添うように座りこみ動けずにいた。

「大丈夫ですか!」

 どこかやられたのだろうか。ショーマは煙を吸い込まないよう、袖で口元を多いながらすぐさま駆け寄る。

「私は、大丈夫です……でも、お父さんが、足を……」

 カターマ氏の左足を見る。腿の辺りに割れたガラス片が突き刺さって出血をしている。

「取り敢えず血は止めます。とにかく急いでここから逃げましょう。セリア! リノンさんを」

「あ、はい! ……さあ」

「あ、ありがとうございます……」

 急ぎ治癒の魔法をかける。ガラス片はそのままにしておく。迂闊に抜いて出血を増やすのは良くない。特にこんな場所では。

「煙、吸わないように気を付けて!」

「はい……」

 応急処置といったところだが、取り敢えずはこれで良いだろう。

「立てますか? 肩担ぎますから」

「ああ、すまない……」

「これ、羽織っていてください」

 ショーマは自分の着ていたローブを脱いでカターマ氏に被せる。耐炎の魔力が込められているので、この中でもだいぶましになるだろう。ショーマ自身の熱さは、我慢するだけだ。


 ロビーに降りる。ここはまだ火の手が無いが、燃え移るのも時間の問題だろう。

「まずは、深呼吸しましょう。そしたら、外へ出て学校の方へ逃げて……。残ってる人はもういないですよね?」

「あ、はい。それは確認済みです」

「……あの、どうして、残ってたんですか?」

 セリアが問い詰める。

「……ごめんなさい。私の、個人的な理由です。父は、そんな私を止めようと追って来た所を……」

「良いですよ、それは……もう。とにかく、外へ」

 今はあまり深く追求しないでおく。

「魔族がいます。俺達から離れないように」

「……はい」


   ※


 警備兵の2人は、敵魔族の数を残り2体にまで減らしていた。

「へへっ……、俺達も結構やるもんだな。左腕食われちゃったけど」

「おう、やってやれないことも無いもんだ。腹から血ィ止まらんけど」

 満身創痍の2人に、ファイアウルフ達が飛び掛かる。

「おおらっしゃあ!!」

 2人は力を振り絞り、鋭い牙を光らせる口の中に槍の一突きを撃ち込む。最後の2体も討伐に成功し、その場にくず折れそうになる。

「はあ……ッ」

「やったぜぃ……っ」

 そんな2人のもとへ、寮からリノン達を助け出し、玄関前に置いてきたショーマが駆け寄る。

「大丈夫ですか!」

「おう、兄ちゃん……。リノンさんは?」

「2人とも大丈夫です。あなた達の方がずっとひどい。すぐ治癒しますから」

「ああ、そう? 悪いね……」

「こいつの腕食われちゃったんだけど……、生えてこないよな」

 警備兵の片方は、左肘から先が無くなっていた。

「それは……無理です。ごめんなさい」

「まあ、お嬢さんが助かったんなら、良いや……」

「ちょっと! 気絶しちゃ駄目ですって! しっかり!」

 声を上げながらも治癒の魔法を発動させる。2人とも結構な重傷だ。多目に魔力を込める。

 だがその時、

「危ない!」

 セリアの叫びが聞こえると同時、治癒をかけていた警備兵に突き飛ばされ、後方にすっ転ぶ。その際、一瞬だけ警備兵が何者かに蹴り飛ばされるのが視界に映った。

「……っ!」

 すぐさま体勢を立て直し、新たな敵の姿を確認する。

 身長2メートルほどの巨体を持つ猫背ぎみの人間……、では無い。全身を覆う真っ赤な体毛。狼のような耳に伸びた鼻、ぎらりと覗く鋭い牙と、そして爪。

「『ウェアウルフ』か……!」

 蹴り飛ばされなかった方の警備兵がその名を口にした。


 猛獣ウェアウルフ。二本足で立つようになり、狼の獰猛さに人間の器用さを併せ持ったという、いわゆる人狼。本来は山奥や深い森の中に住む希少種で、迂闊にやって来た人間に襲いかかる習性を持つという、魔族に近い性質の猛獣だ。

 しかし今目の前に立つウェアウルフは本来と違う真っ赤な体毛を持っている。炎の魔力を持った証であり、つまりは完全に魔族となった証だった。『ファイアウェアウルフ』である。


「だぁッ!」

 対峙する警備兵は治癒の途中であったながら、渾身の突きを繰り出す。しかしファイアウェアウルフは器用にもその槍を自らの腕で絡めとり、警備兵の腕から弾き落とす。

「まじかよ……ッ!」

 無防備となった警備兵の腹に、懐へ飛び込んだファイアウェアウルフの膝蹴りが刺さる。体を折った警備兵の側頭部に今度は回し蹴りが決まり、昏倒させた。

 流れるような動作であっという間に2人の警備兵を戦闘不能に追い込んだファイアウェアウルフは、先程弾き落とした警備兵の槍を拾い上げる。

 ぐるぐると器用に槍を振り回し、ぐっと握り締めるとその切っ先を次なる標的、……ショーマへと向けた。

「武器使っちゃうのかよ……!」

 ショーマも剣を抜き、構える。練習はしてきたが、この状況で上手くやれるかはまだ不安が残る。だがやらないわけにはいかない。

「セリア! 援護を!」

「……はい!」

 ファイアウェアウルフは獰猛に牙を剥く。まるで笑うように。それが合図であった。一気に足を踏み出し、強烈な突きを放ってくる。

 ショーマは冷静に見極め、体を反らしながら剣を槍にぶつけて払うことで、軌道を反らして回避する。そのまま一気に踏み込み懐へ潜る。

 剣と槍の戦いにおいては、間合いの詰め合いがいつも以上に重要となる。剣の間合いで槍は攻撃できない。槍の間合いでは剣は攻撃できない。基本にして最も重要なことだ。

 最初の差し合いを制したショーマは、一気に勝負を決めるため喉元へと剣を突き出す。魔力を込め、刀身に氷の力も宿す。

 だがその一撃は阻まれる。

「!?」

 わずかに膝を曲げ身を屈めたファイアウェアウルフはその固い牙で上下から噛みつくことで、ショーマの剣を捕らえていたのだ。

 だが氷の魔力は牙から頭部へと伝わり始める。炎の魔力を持つ以上、それだけで十分な威力となるはずだった。

「……ぐっ!」

 ショーマの腹部に鈍痛が走る。ファイアウェアウルフの膝蹴りが打ち込まれていた。

(槍は、フェイク……!)

 そして、先程も警備兵が膝蹴りを食らっていたのを思い出す。

(まずい……!)

 体勢を大きく崩すのを覚悟で、その場に転がり込む。瞬間、頭上を回し蹴りが通り過ぎていった。

 強烈な一撃こそ回避したが、危機は残る。ファイアウェアウルフは転んでいるショーマに、今度は手にした槍を突き立てようとする。

 だがそれはセリアの放った『アイスストーン』によって阻まれた。上半身を横から強く打ち付けられ、ファイアウェアウルフは横っ飛びに転がっていく。

 剣と槍の打ち合いという、細かく動く接近戦においては援護射撃は味方に誤射する可能性があり、撃てずにいた。しかしショーマが体勢を崩したことでその危険が減ったのだ。

「すまない!」

 ファイアウェアウルフはゆるゆると立ち上がり頭を振る。不意の一撃にも上手いこと反応し、自ら体を投げ出すことで衝撃を緩和していたらしい。本当に器用なことをするものだった。

(早くなんとかしないとあの2人が……)

 この場をしのぐだけなら守りに徹すれば良い。すぐに騎士団なり何なりが応援に来てくれるだろう。だがやられた2人は急いで治癒を行わないと危険かもしれない。さっきから動きが無い。気絶しただけならまだ良いが……。

 距離を取ったファイアウェアウルフは比較的近いショーマと遠くにいるセリアを慎重に見比べている。どちらもまだ槍の間合いでは無い。

 思えば中々特殊な状況である。本来は数の優位が基本の魔族が、今は1対2の状況に慎重になっているとは。

 じりじりと間合いを伺うファイアウェアウルフは、その時新たな脅威を察知した。

「ショーマ! 無事か!」

「レウス!」

 ショーマの見ている方向、つまりはファイアウェアウルフを挟み撃ちに出来る方向からレウスが到着する。

「警備兵の人が怪我してるんだ!」

「わかった! こいつは任せて治癒を!」

「ああ! ……蹴りに気を付けろよ!」

 挟み撃ちの優位を捨てて、治癒に急ぐ。

 レウスは剣を抜き、一気に斬りかかっていく。ファイアウェアウルフは狙いをレウスに見定めると、槍を構え迎撃体勢になる。

 その隙にショーマは倒れている警備兵に駆け寄って治癒魔法をかける。

「しっかり! 大丈夫ですか!」

 こちらは腹に怪我を負った方の警備兵だ。傷の部分に蹴りをくらって、出血が更にひどくなっている。

 かろうじて息はまだあった。もう1人の容態も見なければならないので、生存を確認して最低限の治癒魔法をかけたら切り上げないといけない。

「う、おう……」

「しっかりしてください!」

 傷が塞がると、意識が戻った。それを確認するともう1人の方へ駆け寄る。

「大丈夫ですか!」

 こちらは片腕をやられた方だった。ここだけ見れば先程の警備兵よりは重傷だが、蹴られたのは頭だけで、傷口を広げられた訳では無い。結果的には比較的傷は浅い。だがあくまで比較的、だ。

「う……」

 手早く治癒をかけると、意識を取り戻した。

「大丈夫ですか!!」

 先程より大きめに声をかける。とにかく肩を担いで、先程の警備兵のもとへ連れていく。近くにいれば同時に治癒魔法をかけられる。

 運びながら、横目でレウスの戦っている様子を見た。


 レウスは冷静にファイアウェアウルフの槍を受け流していく。どうやら槍の間合いに入っていれば、馬鹿正直に槍で攻撃してくるようだ。そして純粋な槍の技術に関してはさほど高くは無い。素人レベルとは決して言えないが。

 突きの狙いも正確。薙ぎの威力も高い。……だが並みより上程度では、レウスには通用しない。

 大振りの薙ぎを回避して隙を作る。

「今だ!」

 その時、反撃を警戒したファイアウェアウルフの足元から氷の刺が発生する。セリアの放った下級魔法、『アイススティング』だ。これも魔力を余分に込め、威力を上げている。胴体から顎を掠めたが、ぎりぎりで直撃は避けられる。

 体勢を崩した所に、レウスの氷の剣による斬撃が迫る。しかしそれも、槍の柄によって防がれた。

 それに合わせてセリアによって素早く通常威力の『アイススティング』が放たれる。地面から足を覆うように氷の刺が形成され、動きを封じた。

「とどめだ……!」

 蹴りに失敗し体勢を崩したファイアウェアウルフの喉元へ、レウスは一気に剣を突き刺そうとした。

2012年 03月01日

話数表記追加

2012年 06月05日

誤字修正

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