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ブランジア人魔戦記  作者: 長村
chapter,01
10/104

ep,010 ゴーレムとの戦い

「……あのゴーレムを討伐する!」

 危機を脱した第1小隊の前に、魔族へと堕ちたゴーレムが立ちはだかる。

 騎士ルーシェはこれを討伐せよとの命令を出すのであった。

「あ、あんなのを、ですか……?」

 フィオンが不安そうな声を出した。

「ああ。そうだ」

 騎士ルーシェは告げる。

「……我々なら出来ると、そういう判断ですね」

「そうだ。……さあ、考えている時間は少ないぞ」

 レウスが確認し、騎士ルーシェが答える。

「……本当にいけるのか?」

「ああ。出来るさ。僕達みんなの力を合わせればね」

 まずは攻略の策を練る。とは言え、時間は少ない。

「ゴーレムは体のどこかに核がある。そいつを破壊すればあの巨体は動かせなくなる。まずは魔法部隊の攻撃で外殻を破壊しよう。

 ……ショーマ」

「ああ!」

 ゴーレムの歩みは遅い。さらに近くには誰もいない。となれば、

「『サンダーストーム』!」

 今ある最大魔法を叩き込むのみ。暴風と雷撃が砂と瓦礫の体を削っていく。

 だがコアを露出させるには至らない。しかもゴーレムは魔法が発動し終わると同時に、弾き飛ばされた瓦礫を再吸収し修復を始める。

「ピンポイントでコアを狙ってかないとダメか……?」

「かもね。恐らくは一番丈夫であろう腹部だ。等級は下がるが、『ファイアボム』の方が良いだろう」

「わかった」

「ローゼ、君も攻撃を頼む」

「了解しました」

「セリアの魔法ではこの距離じゃ届かないかな」

「は、はい。ごめんなさい」

「良いよ。……メリル、君は行けるか?」

 まだ先程のことを気にして戦えずにいるかもしれない。レウスはそう考えて問う。

「わ、私……」

 不安そうに声を震わす。だが果敢に挑むショーマとローゼの様子を見、襟元のリボンに添えられた宝石に手を添えると、決意を新たにする。

「……大丈夫。……やれるわ」

「そうか。……よろしく頼む」

「ええ」

 メリルは顔を上げる。先程までの辛そうな瞳ではなく、いつものように確かに裏付けられた自信が輝く瞳がそこにはあった。


 ゆっくりと歩みを進めるゴーレム。あまりの自重に動きは緩慢だが、自分の重さを勢いに乗せれば、いずれ加速し出すだろう。あの巨体ならば、体当たりひとつで壊滅的な被害となる。

 そうはさせまいと攻撃を集中させるショーマ達。多少はあの体を削っていけたが、中々コアを露出させられない。

 そんなショーマの隣にメリルは立つ。

「メリル……」

「ごめんなさい。もう、平気だから」

「……そっか」

 もう大丈夫。先程とは目の輝きが違うのを見て、ショーマは安心する。

「さあ、見るが良いわ。……竜操術の、メリル・ドラニクスの本領というものをね!」

 宝石に手をかざすと、宝石自らが碧色の光を放ち始める。

「盟友よ、我が呼び掛けに応えたまえ……!」

 その声に、輝きはさらに強まる。宝石を天にかざし、名を呼ぶ。

「その身よ今、ここに来たれ……、碧竜サフィード!!」

 光の中から雷鳴にも似た咆哮を轟かせ、翼を広げた1匹の碧い竜が出現した。

「これが……」

「そう。私が力を共有する盟約を交わした竜、サフィード。……呼び出しただけで終わりじゃ無いわよ」

 メリルは召喚された竜の、鱗でごつごつした頭を撫でる。

 碧竜サフィードの体は、大人の人間より一回り大きいと言う程度で、恐らく先程戦ったアイスベアよりは小さいだろう。だがその勇壮に広げた翼と尻尾は、その体をより大きく見せて力強さを感じさせる。

 ……メリルとサフィード。2つの魔力が合わさっていく。

 術式が組まれ、その力が発動する。

「これが、新たな位に立つ魔法の姿――!」

 竜魔法、『ドラゴニックエレメンタルブラスト』。2重に練り込まれた魔力の塊を破壊のエネルギーに変換して放出する大魔法だ。

 サフィードの咆哮と共に放たれた碧い光の砲撃は、一撃でもって頑強極まるゴーレムの胴体を貫通し、岩の肉体とその向こうの地面に大穴を穿った。

「すごい……!」

 だが。

「……まだ動いてるぞ!」

 体の中心に大穴を開けながらも、その巨体は健在だった。衝撃の余波で体をぐらつかせているが、尚もその体は崩れ落ちようとしない。


「ちょっと! お腹にコアがあるって言ってたじゃないの!」

「え、いやそれはあくまで予想で……」

 メリルの剣幕にたじろぐレウス。

「思いっきり格好付けてたのに外れって……」

「な、何よ! 格好付けちゃいけないって言うの!?」

 ショーマの呟きのメリルは顔を真っ赤にして逆ギレする。やっぱり意識的に格好付けていたらしい。元気が戻ったのは良くわかったが。

「……ていうか、全力でぶっ飛ばしちゃったから魔力空っぽだし、もうこの子送還しちゃうわよ。どうするつもりなの?」

 その言葉と共にサフィードは光に消えて、召喚を解除されてしまった。

「あ、消えちゃった」

「最も面倒な胴体が外れだとわかっただけでも十分だよ。他の部位はそこほど丈夫では無いだろうからね。それに今の魔力砲、あれのお陰でどうやら再生能力に不具合が起きているみたいだ。とりあえずはお疲れ様だ、メリル」

 残る部位は頭に両手両足。どこを攻めるか。

「胴体じゃないなら、やはり頭かな。……フィオン、ここまで使う機会が無かった……、例えば爆弾とか無いかな」

 レウスがここまで特に出番の無かったフィオンに聞いた。

「そんな都合の良い物が……」

「あ、は、はい、持ってきてます」

「あるんだ……」

 肩に提げていた鞄から金属の筒を取り出す。

「これでいくらか壊せるかな」

「あ、あの、でもそれを使うには、あのゴーレムに、ち、近づかないと……。それに、起爆には、導火線で火を着けないと……」

「うん。どちらにせよこいつで頭を狙うのは難しいだろう。身長が高すぎる。狙うのは足だ。転倒させられれば頭の位置も低くなるし、行動も制限できる。そこを接近して畳み掛ける」

「それは良いけど、どうやって爆弾を置いてくるんだ?」

「そこはまあ、近接部隊の3人で頑張ろうかな、と」

 レウスはデュランとバムスに笑いかける。

「3人で上手いこと敵を撹乱させながら爆弾を置いてくる。危険だけど、まあなんとかなるよね」

 にやりと笑いながら無茶を振るレウスだったが、2人は反対しなかった。

「フン。爆弾を置いてくるだけで失敗するヤツがいるかよ」

「……レウス。それ、俺に任せてくれないか」

 レウスが手にする爆弾を指し、神妙な面持ちで頼み込むデュラン。

「さっきのような無様はしない。……挽回の機会が欲しい」

「……責任感じて自爆とかはしないでおくれよ」

「そんなことはしない。全員無事に戻ることが、1番の成功なんだろう?」

「ああ、その通りさ。……では君に任せるよ」

 デュランの目をまっすぐに見据え、レウスは爆弾を手渡す。

「……ああ。必ず、やって見せるさ」

 デュランはそれをぐっと握りしめた。


「設置を確認したら、すぐに着火してくれ」

「は、はい。……威力、結構あって、危ないから、す、すぐに逃げて、下さいね」

 導火線を爆弾に接続し、先端をフィオンに預ける。

「ああ。わかってる。……それじゃ行くぞ!」

 3人は駆け出す。前方にレウスとバムス。後方に爆弾を手にしたデュランが続く。

 足元に接近する敵に対し、ゴーレムは右の巨腕を振りかぶる。その威力はアイスベアの比では無い。だがレウスは冷静にそれを回避。轟音と土埃が舞う中、その腕の肘のあたりに向け斬撃を放つ。さらにその反対側から挟撃する形でバムスが拳を打ち込む。両側から受けた力によって外殻が大きく削れた。

 ゴーレムがその腕を持ち上げようとすると、削られた部位から先が自重に耐えきれずもげ落ちる。だがゴーレムはそんなことを気にすることも無く、さらに左の巨腕を叩き込もうとする。

 今度は回避に専念し反撃を行わない2人。

 隙は作った。

「今だ!」

 デュランは一気にゴーレムの足の間に滑り込み、手早く爆弾を設置する。

「着火ー!!」

 それを見てレウスが声を上げる。同時に3人は、それぞれ別方向に駆け出し爆弾から距離を取る。

 声を確認したフィオンが導火線に火を付ける。15秒ほどで爆弾に到達するはずだ。

 だがその時、左腕を地面に叩き付けていたゴーレムは、そのまま地面を凪ぎはらい、土を飛ばした。

 それは導火線に被さるように飛び、火を消してしまう。

「なっ!?」

 ゴーレム程度の知能では爆弾の能力も、ましてや導火線の仕組みも理解出来ないはずだった。なのに足元の脅威に対し、適切な対処をとる。これは一体どういうことか。

 どこかで使役している者がいるのか? 騎士ルーシェは周囲に強く気を張る。だがそんな気配は無い。……では魔族に堕ちたから危機察知能力が増したとでも?

「どうする……!」

 この窮地に、突然セリアがゴーレムに向かって駆け出した。

 正確には、その足元の爆弾に向かって。

「あ、おい!」

 慌ててショーマも追う。

「何をやっているんだ!」

 さらに続けて騎士ルーシェも2人を追った。

 セリアは自分の魔法が届く距離まで接近する。『ファイアボール』を爆弾に直接打ち込み爆発させるつもりだった。

 走りながら魔力の練り上げと術式の組み上げを行う。

 ……それは不思議と、今までのどんな練習よりも素早く正確にできた。

「危ない……ッ!」

 炎の弾の発射と同時に追い付いたショーマが彼女の腕を引き寄せ、そのまま庇うように抱きしめ後ろへ倒れる。そしてその2人の盾になるようマントを広げた騎士ルーシェが立つ。

 炎の弾が爆弾に命中し、起爆する。

 爆発はゴーレムの足元から広がり、その両足から腰までを吹き飛ばす。大穴から上の体だけが残り、地面へと叩きつけられる。

 爆発はショーマ達にも及ぶ。だが騎士ルーシェの纏う真紅のマントと甲冑は、その抗魔力によって爆風のダメージを減じさせていた。

「大丈夫か!」

 騎士ルーシェがショーマとセリアに聞く。

「は、はい……。セリア、大丈夫か!」

「う、うん……」

 胸元に両腕で抱き込んだ頭からくぐもった声が聞こえた。腕の力を緩めると、見上げたセリアと目が合う。

「なんでこんな無茶を……」

「ご、ごめんなさい……」

 とりあえずは立ち上がる。まだ爆発の余波で土煙が舞っていた。

「私、あんまり役に立ってなかったから、その……」

「だからって無茶が過ぎる……」

「私から言わせれば君も大概だがな」

「あ、す、すいません。つい……」

 騎士ルーシェに叱責される。セリアが走り出した時、危険を省みず彼女を追ったのは本当に『つい』やってしまったことだった。

「私も、つい……」

 その時、土煙の中から鈍い音が響いた。土埃が晴れていく。

「まだ終わってはいないぞ」

 いよいよ胸から上だけの存在になったゴーレムがもがいている。その敵意は健在であった。

 レウス達もゴーレムを挟んでショーマ達の反対に立っている。後方からメリル達3人も駆け寄ってきた。

「……さあ、行こうか。みんな」

「……了解!」

 決着の時であった。


 懲りもなく叩きつけられる左の巨腕を避け、レウスとデュランは頭部へと斬りかかり外殻を削る。そこへバムスが拳を打ち込み、さらに削っていく。そのままゴーレムの後方、レウス達のいる方向へと駆け抜ける。それを追って振り向いたゴーレムに、ショーマとセリアが魔法を放つ。ちょうど削られた部位に命中し、また削る。

「……見えました!」

 集中攻撃を受け、頭部の中から青白い石のような物が僅かに覗いた。

 あれがコアだ。だが、すぐさま覆い隠すように頭部が歪んでいく。

「コアが隠れる!」

「問題ありません。……あの程度なら!」

 ローゼがとっておきの矢を抜く。炎の魔力を込めた赤い宝石を鏃に練り込んだ魔導の矢だ。

 弓を構え、矢に闘気を込める。弓術技、『烈火迅』は、高密度に凝縮された炎の魔力を得て、更なる破壊力を備える。

「――ッ!!」

 赤き閃光を纏い放たれた矢は、一直線にゴーレムの頭部外殻を突き抜け、奥へと潜り込もうとするコアへと突き刺さる。

 闘気と魔力が放出され、コアは頭部ごと燃え上がった。がらがらとけたたましい音を立てながら外殻は崩れ落ち、露出したコアはどろりと熔けて、やがて消える。

 そしてコアを失ったゴーレムは、ただの砂と瓦礫に戻っていった。


「やった……んだよ、な」

 辺りを静寂が包む。もはや敵の姿は無い。


 あまりにも、静かだった。

 ここはもう、ずっと昔に滅びた小さな村だった。

 魔族の姿など、ここには無い。

 勝利のファンファーレを鳴らす者もいない。

 今ここにいるのは、共に戦った9人だけだ。


「ああ……。僕達の勝利だ」


 初めての戦いは、あまりにも静かな勝利だった。


   ※


 第1小隊のメンバーは、川近くの拠点へと戻ってきた。時間はもうすぐ太陽が最も高い位置に昇る1200時であった。

「おお、お帰りなさい! なんだかすごい音してたし、心配してたんだよ」

 第2小隊長を務めるリシウスは呑気に彼らの帰還を祝った。

「ああ。第1小隊、ただいま帰還しました」

「うん。みんな無事なようで何より……。無傷って訳でも無いようだけど」

 リシウスはショーマのローブにこびりついた血痕をはじめ、メンバーのくたびれた様子に気が付く。

「ああ、それなんだけど、ちょっと話が……」

「私から話そう。ロックス、少し良いか」

 騎士ルーシェが前に出る。騎士ロックスを呼びつけ、ひそひそと会話をする。

「わかりました。……第2小隊! 重要な話がある! 集まってくれ」


 騎士ルーシェは先程の戦いにおいての異常事態について伝えた。想定外の内容に第2小隊の間にざわつきが起こる。

「では、これから我々の行う予定の攻撃はどうするのです?」

「いや、……第1小隊に関しては敵の情報を把握できていなかったため、危機に転じてしまったと言うだけだ。今はその情報があるため、それに対応できる、と私は判断する。攻撃は行う。

 ただし、さらに想定外の事態が起きる可能性を考慮し、ロックスだけでなく私も攻撃に随伴させてもらう」

 敵が同じ魔力を持った魔族同士で集中しているという情報があれば、第1小隊もどの魔法攻撃を使うべきか、敵の調査を行うという選択肢も持てていた。だがそれが出来なかったからこそ、レウスとデュランは負傷を負ったと言えた。

 だが第2小隊はそうでは無い。むしろ楽かもしれない。先程の戦いも、最初にメリルが『アイススピア』ではなく炎系の魔法を撃っていればそれだけで終わっていたかもしれないのだ。次の戦いではそれが出来る。

 つまり異常事態ではあるが、好機へと転換できるものでもあるのだ。そのため随伴騎士の2人は撤退ではなく攻撃の判断を下した。

「第1小隊の拠点防衛は私抜きで行ってもらうことになるが、第2小隊の報告によれば敵の接近は無かったとのことだ。安全と判断し、私が待機する代わりに、追加結界を張っておくのみに留める。追加結界はこちらで用意するので、君達は当初の予定通り防衛を行うこと。ただし、くれぐれも戦いが終わったからといって油断しすぎないように。

 ……それでは、1230時より第2小隊の行動を開始する。準備を急げ」

「了解」

 騎士ルーシェの話が終わると、第2小隊は装備等の準備を開始する。彼らにとっては、朝に第1小隊が抱いた気持ちをこれから持つことになるわけだ。


「第1小隊の皆も、ひと休みしたら食事にすると良い。第2小隊はもう済ませて、君達の分の用意も出来ているから。食べ終わったら片付けを頼む」

 騎士ロックスが告げた。

「了解しました」

 食事の話をされると、急にお腹が空いてくるものだった。時間も調度良い頃合いである。

「なんか、落ち着いたらお腹空いてきちゃった」

 セリアが笑って言った。他の皆も笑みをこぼす。

「はは。俺もだよ」

「装備を置いて第2小隊を見送ったら、いただこうか」

「うん、そうしよう」


   ※


「ふう、ごちそうさまっと……」

 第2小隊が出立して、食事を済ませる。皆黙々と食べていた。

「なんだか、今頃になって……、勝ったんだ。って実感がわいてきたよ」

 ショーマはゆったりとした心地で、そんなことを呟いた。

「あ、私もなんかわかるかも。終わった時は、なんかまだ緊張が解け切れなかったっていうか」

 セリアも同意する。隣でフィオンもこくこくと頷いている。

「なんだろうなあ、この感じ」

 達成感、というのとは違うような。

「私は、まあ、皆無事で終わって良かった。って感じだったわ」

 と、メリル。

「実戦は訓練通りにはいかない、ってよく言うけど、やっぱりその通りだったわね」

「そうですね。皆様無事で本当に良かったです」

 ローゼが同意する。

「俺は、……随分と情けない結果に終わってしまった。正直あまり良い気分では、無いな」

 デュランは目を伏せて言う。

「……さっきは言いそびれたが、ショーマ。治療してくれたこと、礼を言わせてもらう」

「ああ、うん……。ちゃんと上手くいって良かったよ」

 デュランの口からそんな言葉が出るとは。ショーマは少し意外に思う。そういえば彼とちゃんと言葉を交わしたのも、あの時が初めてだった気がする。

「ま、少々無鉄砲が過ぎたな、お前は。何だったらこの俺が鍛え直してやろうか」

「笑えない冗談はよせ」

 バムスが嫌味っぽく言う。デュランは否定したが、バムスが割りと本気で言っているというのはショーマにはわかる。何だかんだで放っておけないのだろう。

「レウスはどうだった?」

「僕は……、まだ終わったという気にはなれないよ。帰りの道中もあるし、今だって結構気を張ってるんだよ?」

 弛緩した空気に釘を指すように言うレウス。とは言え面持ちは穏やかである。

「リヨールに戻って、報告を済ませて、家のベッドに倒れ込んで、ようやっと実感が持てるんじゃないかな」

「そっか。うん。まだ終わりじゃないもんな。気を引き締めるよ」

「そうしてくれ」


 こうして第1小隊の8名は、それぞれ思い思いの『初めての戦い』を噛み締めていた。

 ……そしてまもなく、初めての旅もまた、終わりを迎える。

2012年 03月01日

話数表記追加、誤字等修正

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