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こてつ物語4  作者: 貫雪
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 良平が先に斬りかかっていく。速さがあるので相手はたちまち後ろに下がる。その間隙をぬって礼似が相手の武器をはらい落とす。しかし良平の体がバランスを崩しかける。そこを御子がサポートして、相手を近づけさせない。


 まず、良平の体が慣れるまでは、このペースで身を守るしかない。その後は攻めていけるが人数が多い。真柴からの助っ人が来るまでは、無理な真似はできない。助っ人が来れば来たで、これは久しぶりの大乱闘だ。心してかからなければ、何が起きるか分からない。あせりは禁物、とにかく身を守り続ける。


 すると突然、駐車場に車の隊列が次々と侵入してきた。思わず全員がそちらに気を取られる。三人は後ろに人影を感じて振りかえった。礼似が一人で驚いた。


「一樹! なんでここにいるの?」


 御子と良平はキョトンとしている。


「会長が雇った情報屋よ」礼似は客観的事実だけを説明する。面倒な事を話している場合じゃない。


「今はこてつ組の助っ人と呼んでくれよ。これだけの面子がそろっているんだからな」


 車の中からは会長と幹部が数人、腕っ節のいい若い者たちがずらりと出てきて田中達を睨みつけている。人数的には少ないが、威圧感がまるで違った。


 この姿を見て、田中達は後ずさる。車に向かって身を翻そうとするが、会長たちはそれを許さない。一斉に乱闘が始まった。


 乱闘のさなかにもかかわらず、礼似は一樹に聞いた。


「わざわざ会長までお出ましって、物々しいわね」

 ナイフの相手に鉄パイプを食らわしながらも、のんきに尋ねる。


「ここで甘さを見せれば会長が舐められるからな。おおっと」一樹は相手の木刀を慌ててよけた。


「一応、ちゃんと堅気だったのは認めてあげるわ」

 礼似が相手の木刀をはらい落としながら、一樹を助ける。


「動きが鈍ってる。ちょっとおとなしくしてて頂戴」

 そう、軽口をたたきながらも相手を次々倒していく。


 一樹は「俺が会長たちを案内したのに」とぶつぶつ言いながらも、動きでは現役の礼似にかなわないのを認めて、礼似の後に下がった。


 しかしその間に良平の感覚が慣れて来たらしく、数人があっという間に倒れると、向こうは簡単に近づかなくなってきた。にらみ合いが続く。


「礼似さん! お待たせ」

 と、香の声がして真柴組長や組員達、土間や華風組の若い者、ハルオもやってきた。


 これで人数的にも有利だ。勝負あった。


 だが乱闘には勢いがついてしまっていた。収まる気配どころか、やや、やけになった反会長派の者達が逆に仕掛け続けて来る。



 N病院の駐車場に向かう途中で、土間はハルオにドスを渡した。


「これは私が初めて喧嘩に出た時に使ったドスなの。これをあんたに渡すから、しっかり身を守りなさい。まずは自分を守れなくちゃ、誰も守れないんだからね」


 ハルオは恐る恐る受け取った。


「私があんたに言いたい事は一つだけ。これで決して人を斬らないで。この教えは私の師匠だった人が、私を信じて繰り返し教え続けてくれた事なの。私もあんたを信じてる。あんたは人を斬ったりは出来ない。だからこそ、あんたにこのドスを使ってほしいの」


「お、俺にも、斬れるとは、お、思いません」


 ハルオの言葉に土間は返事の代わりにほほ笑んで見せる。横で香は不満げに「ふん」と、鼻を鳴らした。



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