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こてつ物語4  作者: 貫雪
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「こっちは現在のこてつ組の幹部の資料と写真。こっちは麗愛会時代の幹部達の資料と写真。で、こっちは幹部候補として名前の挙がった事のある人間の大まかな情報。これでも全部とはいえないけれどね」


 礼似は大量の書類の束を、大きく三つに分けて説明する。かなりの枚数。目を通すだけでも時間がかかりそうだ。


「あの時は良平が義足を使っていない事は、こてつ組の人間なら、みんな知ってたしね。写真館に行ったこともお義父さんや、真柴の人間には隠していたけど、他に誰かに隠そうと思っていた訳じゃないから、ちょっと後をつけられたら、行き先なんてすぐにわかっただろうし」

 御子は資料に目を通しながら振り返る。


「じゃあ、反会長派として会長に反目しそうな人物を洗うしかないのかしら? この写真の中にあんた達を襲った人間はいる?」

 礼似が写真だけを抜き出しながら聞く。


「いないみたいね。まあ、相手もそんなに間が抜けてるとも思えないし。それにしても幹部だけで三十人以上。こてつ組で、トップダウン方式は事実上無理ね。必ず途中で何らかの思惑が入りそうだわ」


 礼似と御子が資料を広げて検討しているので、香は仕方なく一緒に写真を見ていたのだが……


「あれ?」つい声を上げてしまう。


「何? どうかしたの?」礼似が聞いた。


「ここに関口が写ってる」関口は倉田と香を襲った相手だ。


「関口の写真なんてあったっけ?」礼似も写真を覗きこむ。


「関口のって言うか。ほら、この写真の後ろに写っている背の高い男。関口に間違いないわ」


 写真は幹部候補として名の挙がった者の資料の中に入っていたようだ。手前に一人の男が正面を向いて写っているが、その後ろに偶然に写りこんだかのように、背の高い男の姿があった。


「これ、誰の資料?」礼似が慌ててページをめくる。


「大谷。うわあ。かなりの古株だわ」礼似が声を上げた。


「古株って。じゃあ麗愛会の出身?」御子が身を乗り出して写真を見る。


「麗愛会どころか、その前のかなり昔からこてつ組にいる人物らしいわ。麗愛会時代にも一時幹部をやっていたし、また候補に挙がっていたのね。これは執念深そうだわ」


「でもこの頃、礼似さんも幹部、やってたんですね。これなら大谷って人、知ってるんじゃないですか?」香が資料を覗きながら聞いてくる。


「残念ながら私が麗愛会で幹部をしたのは初期のほんの短い時間なの。向いて無くってね。大谷の事も、顔を見知っている程度の認識しかないわ。まてよ?」


 礼似が何かを思い出すように目を泳がせる。


「大谷は別の街の大きな組織にすり寄ろうとしたり、流れの殺し屋を雇おうとしたりして、問題になった事があったっけ。でも、あの、副組長と対立して方針転換したのよね。ひょっとして、そのまま切れてなかったのかしら?」


「じゃあ、流れの殺し屋達と、古くからの繋がりはある訳ね。香、関口はあんたになんて言ってたの?」 御子が聞く。


「刀使いが増えるのを見過ごせない。こてつ組も一枚岩とはいえないって」


「つまり、こてつ組の内部の事を知っていたのよね。大谷か、その関係者から聞いた可能性が高そうだわ」


「でも、候補に挙がっている大谷が、反会長派だなんて要領悪い真似するのかしら?」礼似は懐疑的だ。


「そっちはまた別なんじゃない? 大谷は自分の勢力維持に、関口達を利用してる。それとは別で反会長派が、うちをつぶしにかかってる。大谷が執念深いのなら、会長派、反会長派、どっちに転んでも勢力維持が出来るように、根回しをしているかもしれない」


「わざわざ、話しを難しくしないでよ。それじゃ、反会長派が見つけられないじゃない」

 礼似がむくれる。


「見つけられるわよ。大谷をしっかりマークすれば。大谷だって反会長派の動きを察知したからこうやって動き出したんだから。これは完全に情報戦よ。しっかりしてよ、こてつ組の中にいるのは私達の中では、あんたと香なんだからね」


 良平の身がかかっているせいか、御子の口調もやや、命令的になる。


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