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こてつ物語4  作者: 貫雪
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「はくしょん!」礼似は派手なくしゃみをしながら、自分の部屋へと向かっていた。


 どうにか由美とこてつを自宅へ送り届けると、シャワーを浴びろと言う由美やタエの勧めを断って、礼似は自宅に着替えをする為に戻っているところだった。二人が大騒ぎをしながらこてつを洗っているのに、自分まで世話になるのは気が引けたのだ。どうせ着替えも取りに行かなければないのだし。


 風邪をひいては堪らない。部屋はもうすぐそこだ。うつ向き気味に急ぎ足で歩いていると、角を曲がったところで危うく誰かとぶつかりそうになって慌てて身をよける。


「すいません、急いでいたもので」よそいきの声を上げつつ顔を上げようとすると


「礼似、どうしたの? そんなに泥まみれで」


 聞きなれた声に驚いて相手の顔を見ると、御子と良平が立っていた。


「こんなところで何してるの?」礼似の方が聞き返してしまう。


「ちょっと式の前にケチをつけた連中をからかってやろうと思ってね。あんたこそ何? いい年して泥遊び?」


「ちょっとしたアクシデントがあってね。それより、良平を襲った連中、どこにいるか知ってるの?」


「それがひどく間の抜けた連中でね」御子はニセ電話の一件を話した。


「その声が多少作ってはあったけれども、あの時の中心人物らしい男の声によく似ていたのよ」

 御子が説明した。


「あいつホントに電話したんだ。あきれた。行けばきっと西岡もいるわよ」

 今度は礼似が説明する番だった。


「ふーん。西岡を絞ってやるには絶好の機会かもね。良平をこっそり連れていくつもりだったんだけど、礼似、あんたも参加したい?」


「勿論よ! 待ってて、五分で着替えて来るから!」

 そう言って礼似は矢の様に駆け出すと、すぐに息を切らせて戻ってきた。さすがに五分は無理で、七分ほどかかったが。



 一樹は街の繁華街の噂話をかき集めていた。田中の金の使い方はなかなかのものがあった。


 自らの見栄には一切使わないが、人脈を得るためなら糸目はつけない。いや、それは金だけではなかった。


 自分よりの意見を持たせるためなら、まさしく身を惜しむ事はないらしい。交渉に、人間関係の修復に、女の世話に、かなりの汚れ仕事まで、綿密に人の世話を焼く。それは世話焼きというよりも、こまめなマメ男ぶりを発揮していると言った風情で、フットワークのよい西岡と、うまく連携がとれているらしい。


 反面、明らかに自分へ組しない人間や、立場の弱そうな堅気などには、ちらちらと傲慢さをにじませる。腹の据わりが足りない。しかもそこを金で解決しようとするから、強い反感も買う。おかげで情報も集まったが、味方を作っても同じ数の敵を作っているような男だ。これでは常に気をもんで、おちおちしていられなさそうだ。


 その分、金や数の力、権力ばかりが欲しくなる。これでは会長に取って代わっても、本当に腹の据わった奴にすぐにでも乗っ取られかねない。だからこそ、様々な動きが出てきて、複雑化するんだが。


 身に余る黒幕を演じ切るのにおたおたしている姿が透けて見える。田中自体は大した脅威にはなりえない。問題はこの間隙を突いて、組の解体を狙うような連中の方だろう。


 そう言う連中に直接手を出すことはできない。だからこそ、ここは田中達をしっかり叩いておかないといけない。


 会長が舐められるような事があれば、そっちの方が厄介な事になる。


「こりゃ、会長に田中をさっさと潰してもらうのが一番だな」

 そう言いながら一樹はどこかへ電話をかける。



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