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こてつ物語4  作者: 貫雪
15/28

15

 由美はこてつの散歩に少し広めの公園に来ていた。最近こてつのお気に入りの公園である。


 結局真柴から夫の仕事の話は聞けなかったが


「どんな仕事でも、山場というのはあるものですよ。決してずっと続く訳でもないでしょうから、こんな時こそ奥さんが明るく、ドンっと構えていないと。やはり安心できる場所は家庭なのですから」


 と、励ましの言葉を貰って、そうだ、自分もこてつも、こんな時こそ元気でいないといけない。と思いなおしていた。


 こてつも嬉しそうにしているし、今日はここで少しゆっくり過ごそうかしら。そう思いながら、池や小川の周りに張り巡らされた木道へと進んで行く。こてつはこの木道を渡るのが大好きなのだ。


 ところが今日は行く先の途中に、人の集団が見える。どうやら立ち話でもしているらしい。すぐ横に東屋があるのだが、東屋に入るでもなく、木道を進むでもなく、中途半端に木道をふさいでいる。


 反対側には小川を渡るための飛び石があるが、これはこてつが苦手な道で、石に飛び移るのに少々勇気がいるらしい。こてつは普段、跳ねまわるように走る割には柴にしては恰幅の良い体型が災いしてか、ジャンプは得意でないようだ。しかし道がふさがれていては仕方がない。由美は飛び石の方へとリードで誘導するが、こてつは気が乗らないらしく、木道の方に行きたがった。


(困ったわ)由美も途方に暮れてしまう。



 礼似は公園の東屋の陰に隠れていた。東屋には西岡が、街のチンピラ達を待っていた。


 昨夜、香はやや遅くなって帰って来た。事の顛末を香から聞き、ハルオに尾行はさせられなくなったので、今度は香が西岡に盗聴器を仕掛けた。田中の交友関係は一樹の言ったとおり広く浅いものだったので、そこから田中が反会長派なのか見分けるには時間がかかる。だが、田中が西岡と接触を図れば、田中の黒幕はほぼ確定だろう。証拠固めはこの際後回しだ。


 しかし、そう都合良く田中からの接触はなく、西岡は街のチンピラ達に連絡を取ったようだった。礼似はその声に聞き覚えがあった。マイク越しではっきりとはしなかったが、良平を襲った男達の中心人物らしい、細身の男の声に似ていたのだ。東公園で待ち合わせると言う。

 これで待ち合わせにその男が現れれば反会長派が真柴を狙ったのは決まりだ。後は田中の関与を確認したい。


 そして、東屋の前を通る木道を渡って、やはりあの、細身の男が西岡の前に現れた。


「お前らじゃ、まるで役に立たないようだな」いきなり西岡は相手を侮蔑した。


「冗談じゃない。あの女とくっついていた時も厄介だったが、今は出先では華風組の組長といつも一緒にいるんです。隙の欠片も見受けられません。命がいくらあっても足りませんよ」

 細身の男は泣きごとを言った。


「こっちも事情が変わってきているんだ。そろそろ結果を出さないと、痛い目に会うのはお前らの方だぞ」


「そこを何とかあんたの方から田中さんにとりなしておいてくださいよ。今度はあんたもこの役目を振られたんでしょう?真柴は結構手ごわいんですよ」


 ついに田中の名前が出た。やはり反会長派の黒幕は田中だったのか。


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