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こてつ物語4  作者: 貫雪
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「外部の情報屋ですか」

 礼似はこてつ会長に呼び出されて、組の外の人物と接触を計るように頼まれた。


 自分もちょうど同じ事を考えていただけに、異論はない。ただ、会長が身近な側近たちさえ信用できなくなっていたのには驚いた。真柴の結婚式にやたらと人が出席しようとしていたのは、こういう事情もあったのか。こてつ会長の求心力を皆、確かめようとしていたに違いない。


「ただ、今や情報屋達もどんなネットワークでつながっているか分からんから、安易には使いにくい。欲しいのはあくまでも最新の情報なのだから、長くやっている者である必要もない。一度、この世界から足を洗った者にやむを得ず協力してもらう事にした」


「一度足を洗った人間を呼びもどしたんですか?」これは意外だ。会長にしては珍しい。


「今回は信用できる人物である事が第一なんだ。身内の人間がうちにゆかりの深い施設にいて、ずっと世話をしていた縁で私もよく知っている人物だ。情報を見極める動物的なカンの良さとスピードが持ち味だから、今度の件にはうってつけだ。しかも用心深い。後々外部に情報が漏れる心配もないだろう」


 ここまで会長が断言できる人物なら、間違いなく信用していい相手だろう。


「ただ、少し問題がある」会長が目を伏せる。若干、落ち着きを失ったようにも見える。


「なんです?」


「お前のよく知っている人物なんだ。どうも私はこの間から、お前に借りを作る羽目にばかりなっているな」


 この間というのは多分、香の事だろう。確かに昔の自分を突き付けられているようなもので、色々うっとおしい思いはしている。しかし、自分に情報屋の知り合いなんていただろうか? 足を洗っていたのならかなり前の話か?


「会えば分かる。色々不満はあるだろうが、とにかくこの件が片付くまではうまい事やって欲しい」


 歯切れの悪い物言いに引っ掛かりながらも、礼似は指定された場所へと向かった。



 移動の途中で礼似は香から、西岡という男の件の連絡を受けた。なるほど西岡ならいかにも反会長派にかかわっていそうだ。麗愛会出身組の礼似などは、西岡から普段から目の敵にされている。旗振り役にはピッタリだ。


 しかし、グループをまとめるとなると、やや、威厳に欠ける気がする。根が単純な所があるから、そんなに複雑な人間関係があるとも思えない。やはり大谷が黒幕なのだろうか? 西岡は麗愛会がらみの件にはすぐにムキになるから、そこをつつけば誰でも利用できそうだが、逆に元、麗愛会の人間ははずして良さそうだ。三十数人の幹部のうち十五人は麗愛会系だから、およそ半分。それでもまだ二十人近い……。

幹部なんて、みんな人を利用する事に長けた連中ばかりだ。


 待ち合わせの店に入る。いつも適度に混んでいてややざわついているので、人目にかえってつきにくく、話しを聞きとられにくい。陽が落ちたばかりで、駅に近い場所なので今日も店は混み気味だった。


 店の中ほど、確かに言われたとおりの服装の男がいる。背中を向けているが、何となく見覚えがある。


 しかし、ここ最近の記憶ではない。懐かしさが走る。遠い過去の記憶だ。少しばかり足がすくむ。礼似の気配に気がついて、男が振りかえった。


「か、一樹?」


「よう、礼似。久しぶりだな」


 この選択に、礼似は会長に山ほど文句がある。会長がどこまで事情を知っているかは分からないが、何も知らないとは思えない。だから、あんな風にためらったのだろう。


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