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魔法百貨堂 ~魔女と魔法使いの弟子~  作者: 野村勇輔
ふたりめ

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13/21

第1回

   1


 ここ最近、なんだか心が不安でならなかった。


 本当に彼――友平大夢(ひろむ)くんは私のことを愛してくれているのだろうか。


 本当に私のことを好いてくれているのだろうか。


 そんなことばかりを考えるようになってしまったのだ。


 きっかけは、同じクラスの上柳くんからの告白だった。


 そのときにはもう私はヒロムくんと付き合っていて、上柳くんはそれを承知のうえで私に告白してきたのだ。


 彼の私への気持ちは十分すぎるほどに伝わってきた。


「オレ、本当にお前のことが好きなんだ! ヒロムと付き合ってることはわかってる。でも、この気持ちだけは抑えきれなくて、どうしても伝えたくて」


 それは図書委員会が終わった、教室への帰り道でのことだった。


 話があると言ってついていった図書館棟の裏で、そう告白されたのだ。


「こんなこと言われて、お前も困るよな。ごめん。でも、いつもお前のことを考えちゃうんだ。お前のことが頭から離れないんだ。ヒロムと別れろなんて言わない。けど、俺の気持ちだけはわかっていてほしい。頼む」


「た、頼むって言われても……」


 上柳くんとはただのクラスメイトのつもりだった。


 よく話をすることはあったけれど、好きか嫌いかといわれたらどっちでもない。


 そこまで意識したことのない彼だったのに――


 いざ好きと告白されてしまうと、どうしても意識せざるを得なかった。


 なにより、ヒロムくんとの関係が脳裏をよぎる。


 ヒロムくんは、どこか冷ややかなところがあった。


 何を話しても「ふうん」「へぇ」「そうなんだ」としか返事をくれない。


 一緒に帰ろうと誘うのも私。


 一緒に遊ぼうと誘うのも私。


 デートをしていても、どこか上の空といった感じのヒロムくんは、果たして私のことを愛してくれているのだろうか。


 そんな不安がいつも心のどこかにぼんやりあった。


 それもそのはずだ。


 だって、ヒロムに告白したのはわたしの方からだったのだから。


 彼は「付き合ってくれない?」という私の告白に対して、

「……いいよ」

 静かにそう答えてくれた。


 そんなどこか斜に構えた感じがかっこよくて好きだったのだけれど……


「――はぁ」


 何度目かのため息を漏らしながら、私はひとり帰宅の途に就いていた。


 上柳くんからの告白を受けて、その後の部活に出る気持ちにもなれなくて、適当な理由で部活を休んで帰りながら、冷静にヒロムくんと上柳くんのことを比べている自分がいた。


 私のことを好きなのか愛してくれているのかわからないヒロムくんと、私のことが好きでヒロムくんと付き合っているにもかかわらず告白してくるほど愛してくれている上柳くん。


 私は、いったいどっちを選ぶべきなのだろうか。


 私は、ヒロムくんとの関係を終わらせて、上柳くんと付き合うべきなのだろうか。


 悩みは膨らんで膨らんで、どうしようもなかった。


「――あれ? ヒトミ?」


 ふいに目の前から声をかけられて視線を向けてみれば、

「――茜」

 そこには、友達で同じクラスの那由多茜の姿があった。


 手にはやや大きめの箱を抱えており、どこかへ向かっているところのようだった。


「どうしたの? 今日は。ひとりなんだ?」


「今日は委員会があったから」


「なるほど。あれ? でも部活は?」


 私は茜に、「実はね」と上柳くんから告白されたこと、ヒロムくんからの愛を感じられていないことをその場で軽く茜に語った。


 すると茜は「ふんふん」と何度か頷いて、

「そういうことなら、いいお店を知ってるよ」


「……お店? どういうこと?」


「ちょうどこれから行くところだから、ヒトミも一緒においでよ」


「一緒にって――」


 いったい、私をなんのお店に連れて行くつもりなのだろうか。


「まぁまぁ、私を信じなさいな!」


 そう言って、茜はにかっと笑ったのだった。

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