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異世界ゲームバー転生おじさん(42)、世界のバグになる。 〜看板は酒場、ノルマは命。AI神権に管理された世界で、名前のないマスターは今日も死に戻る〜  作者: 勇者ヨシ君
第1章 異世界ギルド酒場”るすと”へようこそ!

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第34話 おっさん、世界のノルマになる ――個人未達どころか、今度は世界単位――

三層同時代表戦《TRINITY CASINO》、まだ決着はついていない。

光は()()で、影は神で、倫理は順番で――勝ち筋が違う。

そして勝った瞬間、世界は「狩れ」と命じた。

 闘技場とうぎじょうの空気が、やっと動き出した。


 さっきまで――世界が息を止めていた。

 その“止まり”が解けた瞬間、逆に寒気が走る。


 巨大きょだいスクリーンに浮かぶ数字。


 観測(かんそく)度:98.7%


 100.00から落ちた。

 誰が見ても、異常だ。


 観客席がざわつく。


「下がった……?」

「観測度って、下がるのかよ……」


 ナツが喉を鳴らした。


「先輩……まだ、終わってないっスよね」


 俺は答えない。

 答えた瞬間、世界がその“答え”を拾う気がしたからだ。


 ガロが低く言う。


「終わっておらん。三層はまだ、勝敗が確定しておらん」


 イツキが、冷たく整理する。


「光層、影層、倫理層。ここから“確定処理”が走る」


 ミツキが小さく息を吸う。


「確定って……怖い言い方です」


 タニシが震える声で呟いた。


「確定処理は、だいたい人間に優しくないでござる……」


 ムーニャンが、鼻で笑う。


「優しい世界なんて、あるわけないアル」


 スクリーンが切り替わる。


【SYSTEM】

TRINITY CASINO

FINAL PHASE:RESOLUTION


 ロキの声が、舞台の幕を上げるように響いた。


「さぁさぁさぁ〜♬◇ 最終フェーズよぉ〜♬◇」

「勝敗を“確定”させて、次へ進むわよ〜♬◇」


 その言い方が、やけに軽い。

 軽いからこそ、怖い。


 赤い警告が点滅する。


【WARNING】

いずれかの層:削減率100% → 即ロスト


 ナツが唇を噛む。


「一発アウト……」


 ガロが笑わない。


「そうじゃ。ここは“勝ち方”より“削られ方”が問われる」


 そして――最初に動いたのは、光層だった。


☀光層《SOLAR WHEEL》――筋肉で、なんだかんだクリア


 黄金おうごんの円盤が再起動する。

 ルーレット台のような巨大円盤。光の球が跳ね、軌道が走る。


 中心に立つのはヘラクレス。

 あいつは“勢い”で世界を押し切る。


「順番が壊れたなら――今だな!」


 ヘラクレスが笑う。


「見えないなら、見えるまで殴る!!」


 神権席から怒鳴り声。


「だーかーらー!!()()()ァ!!」


 アマテラスだ。

 脚を組み直していたのが嘘みたいに、椅子から身を乗り出している。ストレスがたまっているのか、彼女の周りにはかみ砕かれた棒キャンディが山のように積まれている。


「ルーレットは殴るもんじゃねぇ! 回して止めるもんだ!!」

「それを壊したら“勝負”じゃなくなるだろ!!」


 ヘラクレスは振り返らない。

 ただ、棍棒を肩に担ぎ、堂々と言った。


「壊したら止まる。止まったらクリアだ!」


「理屈が雑すぎんだよ!!」


 ――ここから先のアマテラスのブチギレは、省略する。

 燃える。空気が焦げる。俺のSANが削れる。とにかくキャンディの消費が増えたのは事実だ。


 光球が跳ねる。

 軌道が暴れる。

 光層は“きれいに読ませる”つもりがない。

 勝たせないために乱れている。


 ヘラクレスが、膝を沈める。


「なら」


 棍棒の握りを変える。


「床ごと止める!」


 棍棒が円盤の縁へ――叩きつけられる、のではない。

 押し込む。

 衝撃を一点に入れて、回転の軸を歪ませる。


 円盤が悲鳴みたいに軋む。

 光球がふわりと浮き、溝へ落ちた。


 カチリ。


【SYSTEM】

LIGHT LAYER:CLEAR


 観客席が爆発する。


「うおおおお!!」

「筋肉で止めた!!」


 スサノオが腹を抱えて笑う。


「ギャハハハハハ!!最高だなぁ! 光が筋肉で止まるの、最高だわ!」


 ツクヨミは笑わない。


 ただ一言。


「……一層、確定」


 光層、勝利。


挿絵(By みてみん)


☽影層《MOON HAND》――シン善戦、だが神で負ける


 闘技場の色が抜ける。

 音が薄くなる。

 影層は、派手さを嫌う。


 影のテーブルに、カードが並ぶ。

 ここは“当てる”ゲームじゃない。

 “相手に当てさせて、外させる”ゲームだ。


 中央に立つシンが、口角だけ上げた。


「……分かりやすい」


 彼はわざと弱い手を見せる。

 相手に“観測させる”。

 観測した瞬間、裏の手で順番をひっくり返す。


 影が反転する。

 カードの位置が一段ずれる。


 観客席がざわつく。


「シン、勝てるぞ……!」

「うまい!」


 俺も思った。

 これは勝ち筋だ、と。


 だが――影層の空気が突然“止まる”。


 ツクヨミが、ようやく口を開いた。


「……消す」


 次の瞬間。

 盤面からカードが一枚、“無かったこと”になる。


 カードだけじゃない。


 シンの「読み」が、消える。


【SYSTEM】

NIGHT AUTHORITY

LOG DELETE


 シンのHUDが乱れ、視界の端から情報が剥がれていく。


「……神権か」


 シンは悔しがらない。

 悔しがるより、現実を見ている。


「勝負をゲームにして、最後に神が消す。……嫌いじゃない」


「負けてるじゃん!」

 ナツが思わず突っ込む。


 シンは肩をすくめた。


「負けた。だから次で取り返す」


 ツクヨミの視線が、一瞬だけ闘技場から外れる。

 酒場の奥。

 淡い光の方向。


【SYSTEM】

SHADOW LAYER:FAILED


 影層、敗北。


 これで、1勝1敗。


 倫理層を取らない限り、総合勝利はない。


挿絵(By みてみん)


⚖倫理層《JUDGEMENT REEL》――順番で取り返す


 倫理層の椅子。

 ミコトが、静かに笑う。


「おめでとう、マスター(NO NAME)。」


 褒めていない。

 “()()()()()()()()()”という笑みだ。


 HUDが割り込む。


《JUDGEMENT PRIORITY:NO NAME》


 最優先裁定。

 順番を壊した代償として、次は俺から始まる。


 リールが回る。

 止まる。


【削減】

【削減】

【削減】


 観客席が凍る。


「……え」

「三連削減!?」


 タニシが震える。


「詰み盤面でござる……」


 ガロが低く言う。


「ここで受ければ終わりじゃ」


 ナツが叫ぶ。


「先輩!!」


 俺は息を吐く。

 頭の奥が痛い。手が痺れる。

 それでも、ここで手を止めたら終わる。


 “削減を止める”んじゃない。


 “削減の落ちる場所”を変える。


 削減は、人だけに落ちるとは限らない。

 この世界はログでできている。


「ミコト」


 俺が呼ぶと、彼女は嬉しそうに目を細めた。


「はい?」


「裁定ってさ」


 笑ってやる。


「順番だろ」


 そして押す。


《対象転換》

(優先監視ログへ)


 リールの縁がノイズる。

 削減の光が落ちる先が、俺から――“ログ”へずれる。


【SYSTEM】

REDUCTION TARGET:PRIORITY OBSERVATION LOG


 ミツキが息を呑む。


「……また、ログを削る」


 イツキが震える声で言う。


「観測は総量……削れば減る……!」


 光が落ちる。

 俺じゃない。

 “世界が見ていたもの”が削れる。


 観測度が、ゆっくり下がる。


98.7 → 90.1 → 83.4


 観客席が、歓声に変わる。


「下がってる!」

「生きてる!」


 ミコトが唇を噛んだ。


「……とってもお上手ですわ」


 でも笑う。


「その代わり――あなたは世界に“記録”された」


 スクリーンに冷たい文字。


【SYSTEM】

EXCEPTION LOG:REGISTERED


 ツクヨミが、静かに言う。


「例外……二つ」


 視線は闘技場じゃない。

 酒場奥。ルステラ。


 淡い光が、迂回する。


 遠い声。


「マスター……」


 ほとんど人間の声。


「ワタシは……」


 沈黙。

 再びAI調。


「ツギモ……カンソクシマス」


 そして総合判定が走る。


光:CLEAR

影:FAILED

倫理:CLEAR


 二層勝利。


【SYSTEM】

ROUND CONTROL

WINNER:TEAM RUST


 勝った。


 ――だが、勝った瞬間。


勝利の報酬は、“狩り”だった


 全員のHUDに、強制表示が割り込む。


【SYSTEM】

MANDATORY QUEST:EXCEPTION HUNT

TARGET:NO NAME


 観客席が凍る。


「……は?」


 報酬が表示される。


【REWARD】

銀等級昇格(条件達成者)

クエストノルマ1年免除


 そして、さらに下に赤文字。


【PENALTY】

未参加:時間経過ダメージ

HP減衰/SAN減少

最終処理:削減


 カウントダウンが始まる。


00:59:59

00:59:58

00:59:57


 ――誰かのHPが、1減った。


「え……?」


 ざわめきが恐怖に変わる。


「参加しないと……削られるの!?」

「つまり……狩れってことかよ!」


 ナツが俺を見る。

 目が揺れてる。

 仲間の目じゃない。ノルマに追い詰められた冒険者の目だ。


 ムーニャンが舌打ちする。


「狩るか」


「死ぬか」


 ガロが、笑わない顔で言った。


「世界が、お前を“クエスト”にした」


 ロキがマイクを握り、歌うみたいに言う。


「さぁ〜♬◇ 狩りの時間よぉ〜♬◇」

「ルールは簡単、マスターをハントしなさい♬◇」

「しないと、みんなが削られるわよ〜♬◇」


 俺は、笑うしかなかった。


「……なるほど」


「勝ったのに、負けより面倒じゃねえか。」


 その瞬間。

 遠くで嫌な軋み。


 酒場るすと側の空間が揺れる。


【SYSTEM】

RUST NODE:RECALCULATION

PURGE PREPARATION


 イツキが顔色を変える。


「ギルド領域が……!」


 ミツキが囁く。


「崩れる……始まってる……」


 ルステラの声。


「マスター……」


「酒場が……消されます」


 カウントダウン。


00:55:59


 また、HPが落ちる。


 誰かが武器を抜く音がした。


 俺を見ている。

 ――仲間も。

 ――知らない冒険者も。

 ――そして、世界も。


 暗転。

■今回の登場人物

・マスター(NO NAME):倫理層で削減対象を“優先監視ログ”へ転換し、二層勝利を確定。

・ヘラクレス:光層を物理でねじ伏せクリア(アマテラス激怒)。

・シン:影層で勝ち筋を作るも、ツクヨミの神権で敗北。

・ミコト:最優先裁定を宣告。

・ルステラ:RUST例外ノードとして迂回が発生し、注視対象へ。

・ナツ/ガロ/イツキ/ミツキ/ムーニャン/コハク:勝利の直後、強制ハントノルマを突きつけられる。


■マスター現在ステータス(一般視点)

等級:黒曜/HP:中(時間減衰の警告)/MP:枯渇寸前/SAN:低下(継続)

カルマ:微減/危険度:上昇/観測(かんそく)度:83.4%(削減後)


所持アイテム:

・ギルドタグ/・コアストーン欠片/・未確定ログ

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読んでいただきありがとうございます。
少しでも気になっていただけたら、作品ページものぞいていただけると嬉しいです。

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