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異世界ゲームバー転生おじさん(42)、世界のバグになる。 〜看板は酒場、ノルマは命。AI神権に管理された世界で、名前のないマスターは今日も死に戻る〜  作者: 勇者ヨシ君
第1章 異世界ギルド酒場”るすと”へようこそ!

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幕間 管理ログ:大会直前監査 ――始まる前から、もう見られている――

大会は娯楽ではありません。

選別です。


幕間

「管理ログ:大会直前監査」

これは大会直前の一幕。

マスターたちが眠った後の一幕。


 だが、その数時間前――


ギルド酒場るすと受付。


 昼の営業中、マスターたちは特訓で出かけているとき、ギルドの扉が開く。

 ざわめきが、一瞬だけ止まった。


 現れたのは――

 ()()()()()()()()()()()()()。武装した兵士たちを連れてさっそうと現れた。


挿絵(By みてみん)


 極端に盛られた金髪。

 黒く縁取られた目元。

 白く強調された唇。

 ネオンのような色味が、酒場の木壁とあまりにも不釣り合いだった。


 場違いなほどに派手。


 だが、その歩き方は静かで無駄がない。


 神権管理装束の徽章が、胸元で淡く光る。


 ナツキの手が止まる。


 書類が、かすかに震える。


「……」


 喉が鳴る。


()()()……()()()……」


 絶句に近い声。


 名前が、そこで初めて落ちた。


 イツキは帳簿から目を上げる。


 派手な外見とは裏腹に、その瞳だけが冷たいのを確認してから、淡々と言った。


()()()?」


 ヤマンバメイクの長女――サツキは、感情のない声で答える。


「管理確認」 


 第一声は事務的だった。


 彼女はもう姉でも冒険者でもない。そう思っているがイツキは感情が止められないでいた。


 彼女は神権の管理者。銀等級直前まで上り詰めたギルドでも屈指の実力を持つ冒険者だった。そしてイツキ、ナツキ共に自慢の姉でもあった。その彼女が今は管理側の人間として目の前に立っている。


 イツキは帳簿から目を上げる。


「――もう一度聞くけど、具体的には何の用?」


「大会前監査。稼働状況確認。異常ログの抽出」


 無駄がない。


 ミツキの指が止まる。


「……裏切り者」


 小さく、しかしはっきり。


 サツキは反応しない。


「監査権限コード提示」


 イツキが言う。


 声は軽いが、棘がある。


 サツキは端末を展開。


 神権認証コードが浮かぶ。


 本物。


「神権の犬が直々に?」


 イツキ。


「必要だから来た」


「へぇ」


「ログ提出。直近三十日分」


「拒否権は?」


「ない」


 短い。


 冷たい。


 ミツキが顔を上げる。


「よくここに来られますね――」


 サツキは視線を向ける。


 感情はない。


「監査対象だから来た」


「ギルドを売った人が」


 ミツキの声が強くなる。


「裏切り者が――」


 サツキは否定しない。


 肯定もしない。


 管理に()()()()()()()()()()からだ。


 ログが転送される。


 サツキの視線が高速で走査する。


 数値、観測度、逸脱、例外挙動。


「例外ノード継続」


 淡々と呟く。


「ビーコン挙動不安定」


「仕様外なんで」


 イツキが返す。


「前から知ってるでしょ」


 サツキは返答しない。


「大会当日、監視強化」


「知ってる」


「不測事態は即時介入」


 ミツキが吐き捨てる。


「最初から全部決まってるくせに」


「決まっているから管理する」


 それだけ。


「用件は以上」


 端末を閉じる。


 振り返らない。


「最低」


 ミツキ。


「裏切り者」


 今度ははっきり。


 サツキは足を止めない。


 そのまま出ていく。


 扉が閉まる。


 受付に重い沈黙が落ちる。


その後――

【神権管理ログ/大会前監査報告】


提出者:サツキ

識別:管理権限レベルB

任務:例外ノード監査/大会前最終確認


■対象拠点


ギルド酒場るすと


・ビーコン挙動:不安定

・ログ干渉:再現不能事象あり

・観測優先度:段階上昇中


評価:例外ノード認定維持。


■受付個体


・イツキ

 記録処理能力:高

 管理抵抗傾向:潜在


・ミツキ

 感情反応:強

 管理不信:顕在


監視継続。


■大会関連


・選別対象:複数

・観測負荷予測:中〜高

・介入準備:完了


結論:大会実施に支障なし。


 報告は送信された。


 感情の記述は存在しない。


 必要がない。


夜――酒場内部


 ランタンの灯りが静かに揺れる。


 マスターは眠っている。


 ナツは毛布を蹴り、

 タニシはいびきをかき、

 ヘラクレスは夢の中でも筋トレしている。


 ルステラのHUDは待機。


 静かだ。


 嵐の前の静寂。


 受付カウンター。


 イツキが帳簿を閉じる。


「……管理が直に来るってことは」


 小さく呟く。


「本気だね」


 ミツキはもういない。


 感情が強すぎるから、帰らせた。


別棟――大会エントリー区画


 レイがエントリーボードを見上げる。


 観測度がゆっくり上昇している。


「管理が動いた」


 低く言う。


 隣に立つのはカナエ。


「大会は救出現場じゃない」


「分かってる」


 短く返す。


「でも観測が集中するなら、核心に近づく」


 目的は変わらない。


 救出。


 管理の奥へ。


「死ぬな」


「そっちこそ――」


 握手はしない。


 視線だけ交わす。


屋根の上


 煙が夜に溶ける。


「ほほ……」


 フー子が笑う。


「管理も、本気じゃの」


 空に星はない。


 観測光だけが走る。


 夜は深まる。


 明日は大会。


 歓声の下で、選別が始まる。


 酒場はまだ眠っている。


 だが管理は、もう動いている。

いよいよ大会前夜。


この幕間では「感情を抑えた側」と「揺れている側」の対比を描きました。


サツキは長女。

ですが今回は姉としてではなく、完全に管理側の立場で登場しています。


情はまだ描きません。

今は歯車です。


■今回の登場人物

サツキ(長女)


神権管理側の監査担当。

ヤマンバメイクの派手な外見だが、完全に理性的。

姉妹への情はこの段階では描写しない。

管理ログを優先する存在。


イツキ(次女)


ギルド受付。合理主義。

帳簿とログを最優先で見る観測者タイプ。

サツキの立場を理解しているが受け入れてはいない。


ミツキ(三女)


感情型。

姉の帰還に動揺を隠せない。

管理への不信が強い。


カナエ(タマモ/ANCHOR-07)


ダイブ救出専門職リコーラー

大会を「事故が起きる前提」で見ている側。

表には出ないが、静かに準備している。


レイ


キャラバン調査隊所属。

観測と距離を保つ存在。

大会を「選別」であると理解している数少ない人物。


フー子

不思議な存在の魔女。

煙の向こうで分岐を観測する例外存在。

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読んでいただきありがとうございます。
少しでも気になっていただけたら、作品ページものぞいていただけると嬉しいです。

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