表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/61

第12話 眠りの境界と、起こしてはいけない子供 ――やさしい場所ほど、壊れる時は怖い――

昼のはずなのに、

この村はずっと「夜の続きを引きずっている」ようでした。

今回は、少し笑えて、でも確実に戻れなくなる回です。

第12話 眠りの境界と、起きてはいけない子供 〜ダイブが終わらないだけなのに、守る対象が増えました〜


挿絵(By みてみん)


 廃村の昼は、()()()()()


 音がないわけじゃない。

 風は吹いているし、遠くで何かがきしむ音もする。


 だが、生き物の気配だけが、決定的に欠けている。


 まるで、

 この時間帯だけ、世界が一時停止しているかのようだった。


 その違和感を、最初に打ち消したのは――ムーニャンだった。


挿絵(By みてみん)


「もーっ! この前はちょっと油断したアル!」


 両腕に残る包帯をぶら下げながら、ムーニャンは軽く跳ねる。

 裂傷れっしょう打撲だぼく

 深かったが、致命ではない。


 一時的に動けなくなったのは事実だが、

 命の瀬戸際だったわけじゃない。


 だからこそ、今こうして元気なのは自然だった。


 ……()()()()()()()()


「ケガした分、ムシャクシャするネ!」


 そう言って、ムーニャンは振り返り――


挿絵(By みてみん)


「オラァ!!」


 鈍い音が響いた。


「ぐえっ!?」


 床を転がったのは、ゲス――タニシだった。

 脇腹を押さえ、情けない声を上げる。


「な、なぜでござるか!? 拙者、何も――」


「昨日、後ろに立ってたアル」


「えっ」


「理由はそれで十分ネ」


 言い終わるより早く、二発目。

 蹴り。

 正確に、痛いところ。


「ぐあぁっ!」


「反省タイム延長アル!」


 さらにもう一発。

 完全に私怨だが、誰も止めない。


 俺は空を見上げた。


「……平和だな」


「どこが――」


 タマモが、呆れたように言う。


 笑い声。

 騒音。

 日常の延長。


 だが――

 この軽さが、逆に浮いていた。


挿絵(By みてみん)


 昼間の探索は、拍子抜けするほど何も起きなかった。


 敵影なし。

 クエスト更新なし。

 環境変化なし。


「……昼は安全、ってやつか?」


 俺の言葉に、タマモは静かに首を横に振る。


「違うね」

「“安全”じゃない」

「反応が、ない」


 その瞬間、ルステラのHUDが淡く光った。


挿絵(By みてみん)


《カンソク中》

《エリア挙動:低活動》

《敵対生成率:極小》


「極小って……ゼロじゃないのか」


《ゼロではありません》

《ただし、この数値は“()()|”ではありません》


 ルステラの声は、いつもより平坦だった。

 感情を抑えた、AIの声。


《ここは、()()()()()()から一時的に切り離されています》


「切り離されてる?」


《正確には、“使()()()()()()()|”》


 使われていない。


 その言葉が、妙に引っかかった。


 まるで――

 誰かが、意図的に放置した空間みたいじゃないか。


挿絵(By みてみん)


「……タグ反応」


 タマモが立ち止まる。

 指先が、地面の一点を示した。


 冒険者タグ。

 微弱だが、確かに生体反応がある。


「生きてるのか?」


「たぶんね。ただ――」


 タマモは、言葉を濁した。


 瓦礫を越え、崩れた家屋の奥へ進む。

 ほこりと、古い木の匂い。


挿絵(By みてみん)


 そこで見つけたのは――

 子供だった。


 年齢は七つ前後。

 完全に女の子にしか見えない外見。

 青と白が混じった髪が、片目を隠している。


 服は、ぼろぼろ。

 だが、無計画に生き延びたわけじゃないことは分かる。


 誰かが、守っていた。


「……こんにちは」


 その子は、小さく頭を下げた。


「お嬢ちゃん、お名前、は何ッすか?」とナツが聞く。


「ネムリ」


 ()()

 ()

 ダイブと現実の境界みたいな名前だ。


 ムーニャンが、そっと近づく。


「ここ、あぶないアルよ?」


「うん」

「でも、だいじょうぶ」


 その返事が――

 妙に、確信めいていた。


 タマモが、視線を逸らす。


「……この子、前からここにいたわけじゃない」


「どういうことだ?」


「このダイブが、外から隔離されてた」

「だから、かくまえた」


「でも、今回の異常で――」

「たぶん、バレた」


「誰に――だ?」


「“向こう”に」


挿絵(By みてみん)


 空気が、一段冷えた。


 ルステラのHUDが、微かにノイズを走らせる。


《ケイコク》

《カンソク度、上昇》


 撤退を決めた。


「一度戻る」


 ダイブ終了操作。

 本来なら、ここで現実に帰れる。


 だが――

 何も起きない。


《ダイブ継続中》


「……は?」


《シュウリョウ要求、未応答》


 代わりに、別の声。


《――()()()()()を確認》


《秩序を乱す要素を検出》

《回収プロセスを開始》


挿絵(By みてみん)


《観測値、上昇》

《戦闘確率、上昇》

《倫理閾値、低下》


 ミル。

 バル。

 エティ。


 三つの声が、同時に走る。


 ネムリが、眠そうに目を伏せた。


「……ねむい」


 その胸元で、かすかな光。


《ETHICA:起動準備》


 一瞬だけ、表示された文字。


 俺は理解した。


 この子は、守るべき存在だ。

 そして――

 ()()()()


 夜は、完全に来ていた。


 この村から、この子を連れて脱出しなければならない。


〈つづく〉

■ ムーニャンの状態(公式)

ムーニャンは前話で裂傷・打撲を負いましたが、致命傷まではいっていないようです。

一時的に行動不能になるほどのケガではあったものの、

生命危機・瀕死状態ではなく、適切な処置により回復しています。


ただし完全回復ではなく、

無理をすれば再び影響が出る状態です。


次話以降、

ネムリや、物語の核心に迫る存在が徐々に姿を現してきます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでいただきありがとうございます。
少しでも気になっていただけたら、作品ページものぞいていただけると嬉しいです。

小説家になろう 勝手にランキング
ギルド酒場るすと公式サイト

影森ゆらは今日も死ぬ
女子高生×オカルト×ちょっと変な日常。
そんな空気が好きでしたら、たぶん刺さる作品です。
お気に召しましたら、ブックマークなどで応援いただけると励みになります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ