第7話 修行の続き ――当てられなかっただけなのに、かかってこいと言われました 修行②
修行回・中編です。
今回は温度差が激しめです。
※笑ってたら、急に殴られます。
第7話:修行の続き
――当てられなかっただけなのに、――乾いた風が、肌を打つ。
荒野。
草もろくに生えない、外界。
「立て」
短い命令。
言ったのはレイだ。
腕を組み、こちらを見下ろしている。
地面に転がったままの俺は、立ち上がろうとして――失敗した。
「……っ、今のは――」
「言い訳はいらない」
最後まで言わせてもらえない。
次の瞬間、視界が跳ねた。
――背中。
地面に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
「遅い」
それだけ。
レイは本当に容赦がない。
手加減も、説明も、ない。
動こうとするたびに、先を取られる。
「今のあんたじゃ、外では三秒も持たない」
「……っ」
「だから修行なんだ」
淡々とした声。
そのとき――
遠くで、金属が弾けるような音がした。
反射的に顔を上げる。
外界を探査していた冒険者。
軽装。銀等級か、それ以下。
「……あれ、」
「見るな」
レイの声が、低く刺さる。
「今のあんたじゃ、間に合わない」
分かっている。
頭では。
それでも――
「ちょ、ちょっと待つでござるよアニキ!」
横から、場違いな声。
なぜかギルドから抜けてきて俺たちの特訓を見ている――タニシだ。
「拙者、こういうの……正直、見てられないでござる!」
目を逸らし、肩をすくめる。
「こんな時はムフフな動画でも見ながら、エール飲んで現実逃避が一番でござるよ!」
「……お前」
「大丈夫でござろう?
どうせ……どうせ助からないやつでござる!」
軽口。
逃避。
でも、その声は微妙に震えていた。
レイが、タニシを一瞥する。
「正しい判断だ」
「えっ」
「見ない。関わらない。深入りしない」
「それが、外で長く生きるやつのやり方」
遠くで、冒険者が倒れた。
悲鳴は、途中で途切れる。
――終わった。
「……ほら、言ったでござる」
タニシが、力なく笑う。
「だから拙者は、見ない方を選ぶでござるよ……」
胸の奥が、嫌な形で締めつけられた。
その瞬間――
世界が、歪んだ。
――ギルド酒場。
「ちょっと!!
いい加減にするアル!!」
甲高い声。
メイド服の中国娘――ウーニャンが、カウンターを叩く。
「下着、どこいったアルか!!あのキモオタデブ野郎!!」
「はいはい、落ち着いて」
イツキが帳簿を閉じる。
「洗濯場のカゴに戻ってたでしょ?」
「気持ちの問題アル!!」
笑いが起きる。
「今日も平和だねぇ」
「外が荒れてるって噂はあるけどさ」
ガロがエールを傾ける。
「ここにいると、そんな気はしねぇな」
「見えないだけさ」
フー子が煙を吐く。
「煙の向こうは、いつも同じじゃない」
笑い声。
酒の音。
――誰も、減った人数の話はしない。
視界が、白く弾けた。
《……マスター》
ルステラの声。
《認識負荷が許容値を超過しています》
《感情ログ:混線》
《通常サポートでは対応不可》
「……やれ」
《緊急診断プロトコル、起動》
SYSTEM ALERT
> COGNITIVE LOAD : CRITICAL
M.I.R.-CORE 起動
B.A.L.-PROCESSOR 起動
E.T.I.-CORE 起動
世界が分解される。
助かる可能性のあった分岐だけが、露骨に見える。
《最適解は存在しません》
《倫理評価値:閾値超過》
視界が、戻る。
荒野。
風。
そして――レイ。
「起動したね」
「しかも三つ同時に」
――見られている。
「……次は、当てる」
一瞬。
レイの目の奥で、評価が更新された。
「いいね」
薄く笑う。
「かかってこい」
《警告》
《次回衝突時、秘匿属性解除の可能性》
――もう、引けない。かかってこいと言われました
今回は修行編・中編。
とうとう3AIが本領発揮。
オーバードライブは「発動」しただけで、勝ってはいません。
主人公ステータス(第7話終了時)
状態:修行中/精神負荷(中)
スキル:オーバードライブ Lv.1(部分起動)
危険度:上昇
観測度:増加
次話、レイにぶつけます。




