表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/17

第6話 おじさん、ローグライクで安全確認しただけなのに ――人間のほうがよっぽどバグってる件 修行①

前書き


第6話です。


今回は全体的にコメディ寄り……に見えて、

**「人間のダメさ」「逃げ方の種類」**をかなり露骨に描いています。


ナツはこの話で初めてしっかり前に出ますが、

彼女はあくまで 読みやすさ担当。

難しいことは考えず、直感で「おかしいものはおかしい」と言う役です。


一方で、

無念・イツキ・フー子といった面々は、

それぞれ別の角度から「アウト」を突きつけます。


そして後半、

レイの一言で話の空気が変わります。


次回はいよいよ修行編本格スタート。

神権AI三体も、少しずつ無視できなくなっていきます。


それでは本編をどうぞ。

おじさん、ローグライクで安全確認しただけなのに

――人間のほうがよっぽどバグってる件


 レイが《るすと》に来てから、数日が経った。

 酒場はいつも通り騒がしく、冒険者たちはゲームと酒と雑談に興じている。表面だけを見れば、何も変わらない日常だ。


 だが、俺には分かる。

 どこかが、()()()()()


 カウンターの端。

 レイは今日も酒を口にせず、ただ静かに店内を眺めていた。視線は固定されない。誰か一人を見るでもなく、全体を、均等に、淡々と。


 観測。

 そんな言葉が、頭に浮かぶ。


 その昼下がり。

 酒場の扉が、勢いよく開いた。


 「戻りましたー!」


 やけに通る声だった。

 振り向くと、軽装の前衛装備に身を包んだ女性冒険者が立っている。日に焼けた肌、無駄のない体つき。長く現場にいた人間特有の、余計な力の抜けた立ち方。

挿絵(By みてみん)

 ――ナツ。


 その名前は、俺も知っていた。

 ギルマスやイツキの帳簿、冒険者ログに何度か出てくる。


 長期ダイブ専門。

 外縁探索。

 帰還まで情報遮断。


 だが、顔を見るのは初めてだ。正直美しい、というのは違う気がするが、健康的でとても魅力がある。

 多分自分が、ずっと引きこもりのような生活を送っていたから、ああいう健康的な女性にはどこか惹かれてしまうのだろう。と自問自答しているとナツが口を開いた。


 「長期ダイブ、無事帰還っす!」

 「外縁、地味にキツかったっすけど、生きて帰ってきました!」


 周囲から、労いと冷やかしの声が飛ぶ。――それにしても長期ダイブとは。この前、不毛の大地に少し踏み出して萎えてしまった俺とは大違いだ。やはり彼女は尊敬できる。異性というより、人として。


 「よく生きてたな」

 「また世界の端見てきたのか」


 ナツは笑いながら応じ、ふと、俺の方を見た。


 「あ」

 「もしかして……マスターっすか?」


 不意に振られて、少し戸惑う。


 「え、ああ……そうだけど」

 「初対面、だよな?」


 「はい!」

 「噂は聞いてます、先輩!」


 噂。

 その言葉に、肩の奥がわずかに重くなる。


 「長期ダイブ中は、ほぼ情報遮断なんで」

 「戻ってきて、やっと最近の話をまとめて聞いた感じっす」


 なるほど。

 この世界では、珍しくない話だ。


 だから――


 「……あれ?」


 ナツの視線が、酒場の一角で止まった。

 そこにいたのは、ニヤついた顔で女性陣を眺めている男。


 タニシ。


 「……誰すか、あれ」


 空気が、一拍遅れて固まる。

 イツキが帳簿から目も上げずに答えた。


 「最近入り浸ってる厄介枠」

 「深く関わらないほうがいいよ」


 ナツは数秒だけタニシを観察し、即座に顔をしかめた。


 「……俺、こいつ無理っす」

 「初対面ですけど、無理っす」


 判断が、早すぎる。


 「早くない?」

 「早いっすけど」

 「目と動きで分かります」

 「距離感、おかしい人っす」


 体育会系の直感は、だいたい正しい。


 その直後。


 「拙者、初めましてでござるな!」


 タニシが、にじり寄ってきた。

 だが、その動きを止めたのは、別の声だった。


 「……ねえ」


 無念ウーニャンが、腕を組んで立っている。

 視線は真っ直ぐ、タニシ。


 「こいつさ」

 「さっきから、ワタシのおっぱいじろじろ見てくるね」


 ――空気が、()()()


 「な、なにを言うでござるか!」

 「拙者、そのような――」


 「見てるよ」

 「三回」

 「……いや、四回」


 無念は指を折り、淡々と続ける。


 「目線、ここ」

 「次、顔」

 「また、ここ」


 ナツが一歩引いた。


 「……俺、やっぱ無理っす」

 「先輩、これ無理っす」


 ミツキが困ったように視線を逸らす。

 その横で、イツキが深くため息をついた。


 「……はぁ」


 帳簿を閉じ、前に出る。


 「ねえ」

 「アンタさ」


 声が、低い。


 「見たいんなら、直接言ってこいや!」


 言葉が、叩きつけられた。


 「欲情するなとは言わない」

 「それ、人間だし」


 イツキは、はっきりと言う。


 「でもね」

 「()()()()()()。堂々と断られろ」


 タニシは、言葉を失った。ずっと土下座していてももはや誰も見ていない。あるのは女性陣の侮蔑の表情だけだ。


挿絵(By みてみん)


 「安心しな」

 「ログ、全部残ってる」


 「角度」

 「滞留時間」

 「視線移動」


 「()()()()()()()、正確に」


 その日の夕方。

 洗濯物の枚数が合わないことが発覚した。


 フー子が煙をくゆらせ、笑う。


 「無念にも……」

 「おぬし、まったく無念なやつじゃのう...」

 

 挿絵(By みてみん)


 事件はこれで終わらなかった。


 翌日、盗撮未遂。

 裁定。

 監視。

 接触禁止。


 それらを、レイは何も言わず見ていた。


 その背後で、見えないログが静かに更新される。これは、、3つのAIとかいうやつか?


 ――()()()()():上昇。

 ――()()()():揺らぎ。

 ――()()()():不要。


 人間的すぎるコメディ現象。

 だからこそ、介入しない。


ルステラがいう。

 「マスター、ニンゲンの異常な行動に私の中のナニカが反応しているヨウです」


そういわれてもな。とりあえず俺は今日のノルマをどうするかしか考えていなかった。


 その夜。

 俺はノルマクエストとして、ローグライクを選んでいた。


 「その選択は、合理的だ」


 背後から、レイの声。


 「だが」

 「それで、何を測っている?」


 沈黙。


 「彼は、欲に逃げる」

 「お前は、安全に逃げる」


 胸が、少し痛んだ。


 「結果は違うが」

 「構造は同じだ」


 「実力を見たい」

 「……面を貸せ」


 俺は深く息を吐いた。


 そして、レイに導かれるまま、

 酒場の裏口を抜け、荒れた不毛の大地へと足を踏み出す。

 

 荒野に、細い杭が点々と立っていた。

 白い布が絡まり、風に鳴る。

 近づくと、金属の札が一枚、ぶら下がっていた。

 レイは足を止めない。

 「ここは、回収が遅れる」

 それだけ言った。


 遠く、修行用の隔離フィールドが、薄く光っていた。


 ローグライクで済ませときゃよかった。

 心の底から、そう思いながら。

今回は

**「人間的すぎるノイズ」**の回でした。


・欲に逃げる者

・安全に逃げる者

・正論で殴る者

・数字で断罪する者


どれもAI的に見れば非効率で、

だからこそ 今はまだ“介入しない”。


しかし、この「どうでもよさそうなコメディ現象」が、

次の段階では観測対象として無視できなくなっていきます。


次回、

レイとの修行が本格化し、

マスターは「安全に逃げる」という選択肢を奪われます。


そして――

ミル/バル/エティは、

同時稼働という“例外”に、少しずつ近づいていきます。


主人公マスターの現在のステータス


名前:NO NAME(通称:マスター)

等級:白磁(はくじ(白磁)|)

レベル:2


基本ステータス

・力:低

・守り:低

・速さ:普通

・賢さ:やや高

・運:不安定


特殊ステータス

・危険度:上昇中(※管理側のみ表示)

・観測度:微増(※イツキ・上位観測者のみ参照可)


スキル

・《オーバードライブ Lv.1》(未使用)

 ※観測/戦闘/倫理を同時最大稼働させる異常スキル

 ※次回以降、使用条件が揃い始める


制約

・《L.L.R.(Low Level Representative)制約》

 低位成長固定/解除不可


装備・所持品

・特筆すべき戦闘装備なし

・ギルド酒場るすとへの自由出入り(非公式・黙認)

・ローグライク用簡易データログ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ