夜の期待
勤務終了時間、哲也はデスクから飛び上がる。オフィスの喧騒が、静かに収まる。
「お疲れさんっす!!定時になりゃ即帰宅!」
未来は笑顔で応じ、鞄を手に持つ。心の中で、今夜の「特別な時間」を想像する。
「お疲れ様。今日は楽させて貰えたわよ。じゃあ行きましょうか。今日はゆっくり飲むわよ?」
「あざ〜っす!ご馳走様っす!」
未来は頬を赤らめ、照れを隠すように歩き出す。夜の街のネオンが、二人を照らす。
「も、もう!そんなに喜ばれると照れるじゃないか...ほら、行くわよ。」
寿司屋のカウンターに座り、未来と哲也はメニューを眺める。木の温もりが漂う店内、寿司職人の手際が響く。未来は、恋の進展を夢見て心を弾ませる。
「うわっ、回転寿司と全然違うわ……マジでこんな所いいんすか?」
「いいのよ。今日は特別なんだから...好きなもの頼んでいいわよ?」
「カニ味噌とか、いってみていいっすか?」
「カニ味噌?いいわね...あ、私もそれにしようかな。お酌していい?」
哲也は慌てて手を振る。ビールを注文し、未来のグラスに注ぐ。
「あっ、いや、すいません。それこっちがやる事ですわ。どうぞどうぞ。」
未来は注がれたビールを飲み、ほっと息をつく。哲也の気遣いに、心が温まる。
「ふふ、ありがとう。あ、このお刺身美味しそうね...一緒に食べない?」
「あざっす!!」
未来は出されたお刺身を哲也の皿に取り分け、頬を赤らめた。恋の小さな一歩を踏み出した気分だ。
「ふふ...可愛い後輩ね。もっと食べなさい?」
「いや、本当ありがとうございます。僕の先輩の後輩になれて光栄っす」
未来の目が潤み、胸が熱くなる。哲也の言葉に、特別な意味を求めてしまう。
「そ、そんな風に言われると...私...嬉しいわ。今日は特別な日になりそう...」
哲也はビールを一口飲み、急に話題を変える。
「僕、前の部署の斎藤さんと滅茶苦茶気が合わなかったんすよ」




