誘いの朝と揺れる心
オフィスの蛍光灯が、静かに瞬く朝。澤野未来は、デスクで書類を整理しながら、数週間前に転属してきた岡田哲也に目を向けた。哲也の軽快な笑顔が、朝の空気を明るくする。
未来は少し照れた笑みを浮かべ、声をかけると、頬がほのかに赤らむ。心の中で、数年間温めてきた恋心がざわめく。
「おはよう岡田君。この前は助けてくれてありがとう…。その…なんだ、もしよかったらそのお礼に今夜ご飯でもどう…?」
哲也は、椅子に座ったままニッコリ笑う。
「んとね。僕、回らないお寿司がいいっすね」
未来の胸がドキリと跳ね、嬉しそうに頬を赤らめる。心の中で小さくガッツポーズ。
「お寿司か...いいセンスしてるじゃないか。じゃあ仕事が終わったらまた声掛けるよ。今日は私が奢るからな。」
哲也は目を丸くし、慌てて手を振る。
「え!?本気にしたんですか!?いやいや、回るお寿司でいいっすよ」
未来は照れ隠しに咳払いし、胸を張った。上司としての威厳を保とうと必死だ。
「ふん、遠慮なんかいらないんだ。たまには上司の顔を立ててくれてもいいだろう?」
「そう言うなら、お言葉に甘えさせて頂きます!ありがとうございます!今日、仕事頑張って楽させますわ」
未来の顔が真っ赤になり、心臓がドキリと跳ねる。哲也の無邪気な笑顔に、胸が締め付けられる。
「そ、そう...頑張るのはいいけど、変なミスだけはするなよ。楽しみにしてるからな...」