双方側から見たトランプ関税
関税は、自由にその国が掛ける事が出来ます。ただし、21世紀では自由貿易が主流であり、問題があればWTOに提訴する事も可能です。FTAやEPAを結ぶことが多い時代、TPPなんかもその一種です。ただ、現実的には報復関税他色々とされるので、今回のような一方的なトランプ関税のような事は起こり得ないでしょう。アメリカは、同盟国に対しては同盟で脅し、BRICSに関しては何かとアラを探して高関税を掛ける事を正当化しています。
10%が最低関税率、鉄鋼・アルミと自動車は25%関税率。後者に関しては、製造業が弱いために守るというセーフガードに該当します。通商拡大法第232条を発動しています。一方で二国間貿易赤字国(対米)にも10%関税率を適用しており、これに関しては根拠が一切存在しません。
・双子の赤字解消
・アメリカ製造業復活
貿易赤字より経常赤字の方が大事であり、先進国は貿易赤字になるのが当たり前と言われています。アメリカだとデジタル黒字が凄いですよね。後、投資による黒字も凄いです(いつ還流させるかはアメリカ投資家側が決める)。経常収支で赤字になれば、ドルが吸い上げられるという事を意味します。国債同様、他国が通貨をたくさん持つという事は非常にリスクです。例えば、中国が大量に米国債を保有するのと日英が大量に米国債を保有するのでは全然違うのです。ドルは、世界基軸通貨であり、ユーロとドルは世界取り扱い量が半端ないです。親米国でも流れでドルをたくさん買ったり売ったりする時代であり、しかもアメリカは政策として為替に干渉する事はありません。市場でドルの価値が決まるという価値観を変えず、金融政策による実質為替操作や為替介入を行う事を極めて嫌います。しかしながら、何かの拍子にアメリカを快く思っていない国がドル売りを仕掛けると儲け目当てにハゲタカがたくさん襲い掛かり、ドル緊急安に繋がる可能性があります。損失を避けようとドル売りに加わる者もたくさん出てくるでしょう。リーマンショック時の急激な円高みたいな形で世界情勢次第で急激なドル安が起きる可能性はあります。関税による収入よりも貿易赤字を減らす事やアメリカ製造業復活(雇用)に力点を置いているのではないかと推測します。
・インフレ懸念
・米国からの切り替え
関税がどうなるかなんですよね。
①関税率をそのまま価格に転嫁する(極めて少ない)
②価格を変えず内部で吸収する(現状多い)
③関税率の一部を価格転嫁する(これから増加すると予想)
インフレの傾向がみられるとされており、結局内部で吸収しきれず赤字とか黒字がほぼない状況になり、値上げされるでしょう。そして、1社値上げすると他も追随して値上げしやすい環境になります。インフレになると、逆に金利を上げなくてはいけないため財政悪化に繋がります。最大の弊害とみられています。アメリカは大量消費国で利益率が高い国として知られています。けれどもアメリカ国内で製造しないと、旨味が少ない時代に突入します。とは言っても生産設備では固定費が掛かります。中国では顕著なようですが、その余った生産能力(生産品)を欧州に振り向けて輸出が増加している模様です。トランプ関税は短期的にアメリカ完全勝利ですが、アメリカとの貿易を意図的に減らす国も出てくるでしょう。報復関税を中国、EU、カナダ、ブラジルは検討し、インドは貿易障壁を取り除く気がありません。人間関係でもそうですが、一方的に無理難題を押し付けてくる国と今後も仲良くやっていきたいと思うでしょうか?これが考えられるデメリットです。
都合のよい脳みそだと、国内勢との競争になるから出来るだけ内部吸収し、価格は上がらないと思うでしょう。それで関税の税収が増えるし、一挙両得だと考えているかもしれません。アメリカとほぼイーブンな製品はよいですが、中国製が市場シェア90%以上の商品では価格決定力はそちらにあります。自動車が一番解かりやすいので例に挙げてみます。
①アメリカに工場建設(景気刺激)
②アメリカで生産(雇用貢献)
③アメリカで販売(輸出車より価格優位性)
問題は、自動車メーカーの既存工場です。そして、それらの雇用問題です。時代の変遷とともに工場の閉鎖は起こりえます。しかし、工場の老朽化やグローバルでの生産コスト優勢性が薄れてきたという理由です。今回の様にいきなりマグナム級を宣言されても、アメリカ工場建設の資金確保や稼働までの時間は、輸出で基本的に賄うという事になります。そしたら、一部メーカーでは赤字の垂れ流しか価格を上げて利益を確保するという形になります。価格を上げれば販売量が落ちるため生産台数が減り、工場稼働率が落ちるという問題が発生します。これが生産(製造業)が時代の急変に対応しにくい理由です。
最後にコントのような事を紹介します。実は、裁判中でして大統領権限で相互関税を掛ける事は出来ないと争っています。つまり、議会承認が必要と司法が認めた場合、議会に掛ける必要があります。そこで否決されれば相互関税は全て無効になります。そうなる可能性は十分あります。
自動車関税15%、相互関税15%政府交渉はよくやったと経済界は基本的に政府を評価しています。一方、SNSではかなり不評です。高市投稿でも話題になったあの内容が、一般人の感覚です。
・2.5%から15%自動車関税で成功?
・相互関税15%って日本製品売れなくなり(輸出減り)、アメリカ側は関税収入増えるだけだろ
・5500億ドルパッケージ??どこまで媚びてるの
全て正論なのですが、仮に自動車関税率25%と言われればそれまでなのです。勿論、日本側が自動車で報復しても意味がないため、他の製品で報復関税を掛ける事は可能です。しかし、それを行えば自動車関税率50%としてくるでしょう。結局、買い手はアメリカですから、そのアメリカ側が輸出してこなくていいと宣言しているのに等しい形であり、これだけの手数料を払うならアメリカでの販売を許可すると一方的に宣言している訳です。例えるなら、20万円の商品を17万円で売ってくれるなら買う。そうでなければ買わないと言っているのと同じです。アメリカ政府のスタンスは、別に売ってくれなくていいよなのです。これが、アメリカ消費者とトランプ共和党政権で同じかと言えばそうではありません。ただアメリカメーカーやアメリカ製で代用できるとみられるものに関しては、凄くいい政策であるのも事実です。アメリカは、貿易赤字や為替操作(通貨安政策で指定国にするぐらいだから)等に関して長年不満を溜めており、その対応としてトランプ関税で報復したというのが実際ではないでしょうか。ハマスのテロと同じように、長年の不満の結晶と言えるかもしれませんね。
壮大な社会実験であり、アメリカ国民でさえ駄目だと思えば民主党政権が誕生し、相互関税は撤廃されるでしょう。しかしながら、民主党政権になっても自動車や鉄鋼アルミのセーフガード関税は撤廃しない可能性が高いように思えます。
昨日、日銀の植田総裁が関税における影響(不確実性)は小さくなったと述べましたが、FRBパウエル議長は、2ヶ月間(次回FOMC迄)慎重に影響を見届けたい意向のようです。先進国の中央銀行総裁は、同じようなコメントが目立ちます。実例がなく(複雑に要素が絡み合い)予想が難しいため、データから追っていく(検証していく)という形を取っています。「見守り、学ぶしかない」と発言したその言葉が、まさに世界的規模の壮大な社会実験である事を物語っています。