別れの歌
「ポエムって痛いイメージあるけど、文学なんだからね」
暇だったらお付き合いください。
「別れの歌ってタイトルで、数十個はポエム書いてる」
「やば…」
柄にもなく、本気で引いてしまった。
知りたくなかった。そんな事。でも、聞いてしまったのなら、知りたくなるのが人間の性だ。
「ちなみに、どんな内容の?」
「それ聞く?」
横の相手は、恐ろしい程の我儘な人間だ。地雷とまでは言えないが、踏むと良くない物もある。
聞いて欲しいから言ったのか、ただ言ってみただけなのか。からかっているのかもしれない。そうであって欲しい。
一応、この関係が好きではあるのだ。例え、ギリギリの綱渡りでも。
「聞きたいかも?」
「何で疑問系なのよ」
楽しそうに笑っている。呑気なものだ。俺は、ヒヤッとしているのに。
「…いいよ。教えてあげる」
どことなく偉そうな言い方にイラッとしたが、しょうがない。今日は"そういう日"なんだ。
「昔の彼がね。死んじゃった時のやつ」
昔の彼。俺は、"そいつ"について知らない。何となく、付き合ってたやつなんだろうなと思っていたが。まさか、死んでいたとは。
「ポエムって言っても、気持ちを書き殴っただけなんだけどねー」
自嘲ぎみに笑う相手に、何も言えなかった。ちょっと見てみたかったが。
太陽が水平線に沈んでいく。久しぶりに、波の音は静かだった。