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 親方と役所の男の話は亡くなったこの店の主人の話題になっていた。直接の面識がない役所の男にのみならず、親方が常連客に前の主人の話をするのは、今ちょうど親方が座っている席と小太りの男達が座っている席との間に小さな足の細い丸テーブルが一つ置いてあり、その上にある写真立ての中の主人が目に入ってくるのもきっかけに一つにあるのだろう。店を背景に前の主人はコック帽を被り、腕を組み威厳のある顔立ちで立っていて、隣りには若いころの女将さんが今よりも痩せていて、顔立ちにまだ少女の面影さえ残して寄り添っていた。店のオープンのときに写したのだろう、建物の外観が今に比べて真新しかった。親方はレストランが出来た当初からの常連で、主人は若いころから外国に行って料理の腕を磨き、町の外からも熱心に通う客がいるぐらい腕は確かな男だった。「無口だが、料理の事を聞くと熱く説明してくれたなぁ、年がちょうど一緒で、まだあのころは俺もようやく師匠に一人で仕事を任されるようになってきたころでなぁ、業種は違うがアイツの料理を口にするたびに、感心すると同時に俺も負けてはられんと励みになったものさ」と役所の男に話すと、役所の男は写真を見て、うなずきながら「女将さんにもずいぶん可愛らしい時期があったもんだ」と言い、女将さんが「今だってこの子たちよりも十分いけるよ」と一部始終を聞いていた女二人を顎でしゃくり上げながら言うと、女二人は「女将さんにはかないません」と顔を見合わせて笑い、親方も豪快に笑った。小太りの男と話していた男も、相手の話しよりも後ろの方に聞き耳を立てていたので、少し笑みがこぼれ、真面目な話しをしていたつもりの小太りの男は「真剣に聞いているのか」と声を裏返すのだった。

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