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 さらに曲は続き、いったん座って休んだり、飲み物を飲んだりしながらも、皆の勢いが下がらないのは演奏する二人の選曲がいいのと、演奏者自信が一番盛り上がってるからだった。事実、女将も成年も疲れるどころか目の合図でアレンジを変えたりソロパートを差し込んだりして、それはさながら皆の踊りのためというより、二人のコンサートのようだった。鼠飼いの男は倒れ込んで泣いたのがついさっきのこととは思えないほど踊りに熱中し、小太りの男は額に汗噴きながら息を切らし、休んでは踊り、休んでは踊りを繰り返していたが、徐々に椅子に座る時間が長くなり、八曲目の途中あたりで腰掛けると、もう立ち上がりはしなかった。相棒は娘二人に接近することに成功し一緒に踊ろうとするが、二人は一箇所に留まらず踊りながら場所を変えていくので会話までには至らなかった。役所の男と漁師は老人の娘が踊りだしたあたりから、もう踊りの輪の中に引っ張られないようカウンターに移動していて、皆を見ながら二人で談笑していた。アザの男も椅子に腰掛け、はじめは手拍子や歓声を送っていたが、今はもう閉じようとする瞼を支えるのが精一杯だった。二人組みと材木屋はまだまだ元気に踊っていて、二人組みが姪をからかいに移動しようとすると、材木屋と老人の娘に野暮なことをするなと言われ、材木屋に腕や首根っこを捕まれ引き戻されると、娘からは説教を食らうのだった。見習いは姪の誘いを受けるまでもなく娘の踊りのあとは立ち上がっていて、まだ少しぼんやりとする頭でなんとか音楽にのろうとはしていた。姪は見習いの手を引いて一緒に踊ろうとするが、今の見習いではどうしても姪のテンポから遅れてしまうので見習いは姪に腕を捕まれ引っ張りまわされてるようにしか見えず、二人を観察するのが好きな先生は二人に気付かれないように笑い、老人の娘にもそれを教え、二人はできるだけ凝視しないようにしながらも顔を見合わせて笑うのだった。それにしても、あれだけ大人しい子なのに踊りが始まると積極的になるのは何故だろうと先生は思っていたが、実のところ姪はこの時間ぐらいになると眠気が次々に襲ってくるので、余計に動き回ったり勤めて明るく振舞おうと努力するのだが、睡魔がある一点を超えると今度は意識せずとも気分が高揚してきて、それがちょうど踊り出す時間と重なり、いつも見習いを不思議がらせるのだが、当の見習いは酔いがまわっているときには、そんなことまで意識はまわらないのだった。

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