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第8話 触れられざる傷

所詮、世の中は結果と自身の利益が全て。


・異世界恋愛

・婚約破棄

・追放もの

・短編恋愛

・Vtuberに転生etc


時流には疎いので正確かは知りませんが、これらのような売れ線でなく、よくあるテンプレートに則らない作品の自覚はあります。

ですから無償で投稿し続けて書籍化……という未来は永劫に訪れない。

小説家になろうにおいてウケる作風でもなく(1人称ではなく、無駄に暗い作品)、地の文も必要だと感じたら、それなりの長さで挿入するので、こういう部分もテンプレート作品を頭を使わず、惰性で読みたい側からすれば〝ウザい〟のでしょう。

人気の設定などを模倣しておらず、読者に称賛(世間一般でウケるかはともかく、web小説界隈ではアクセスが稼げるし、書籍化までこぎつける)される要素はないので、今まで通りの落胆するだけの結果が待ち受けているかもしれません。

ただ評価する読者の需要に応えた作品より、自分が面白い、読ませたいと思ったものを作りたいので、今回も所謂テンプレ作品ではありません。

ただ前述の通り結果が全て、結果がでなければ、創作などちっとも面白くない。

なので評価が芳しくなければ継続しても、将来の自分に利得をもたらさないと判断し、容赦なく拙作「奈落に啼くペレグリヌス〜ウェルニクロの女〜」を打ち切ります。

現時点では無償公開範囲は序章から第1章、第2章までのどちらかの予定ですが、無償で投稿して


アクセス数稼ぎや将来的な金銭に繋がる=ファン層の獲得=メリットがある


と判断すれば、第3章、第4章と無償での公開範囲を広げていくかもしれません。

なので作品を支える意志のある方は評価、コメント、いいね、レビュー、外部サイトでの小説購入などの形で行動し、作者への支援をお願いします。

作者は評価や支援をしてもらい気分よく筆を進め、読者も提供される作品を楽しむという、双方が利益を享受する、win-winの関係となれれば幸いです。

長々と語りましたが、本編にどうぞ。

3年前 酒場〝幸運の悪魔〟にて




「……ククッ! こりゃこの前、港の商隊から奪った戦利品だ。欲しいなら5ゴールドでやるよ」

「お、相場よりは安いな。買ったぜ」


賑やかにテーブルを囲み、酒を飲み干す冒険者に紛れ、悪党はこそこそと暗躍する。

またある客同士は台の中央に金貨と瓶に詰められた蠢く炎―――捕獲の禁止された精霊を置き、何やら小声で取引を行う最中だ。

ノックスの警備隊や街に雇われる秩序の守護者アピス・アンジェルスの構成員が、猛禽類の如く鋭く目を光らせる中でも、酒場〝幸運の悪魔〟には考え得る限りの悪事がはびこる。

陰謀、策略、悪巧み……あらゆる無法や悪事を肯定し、その罪を覆い隠すような暗闇と、それを照らすランタンの灯火。

馬鹿騒ぎの喧騒と、この世の罪が煮詰まった混沌とした空間に数年もの間身を投じると、感覚が麻痺してくるのか。

もはや何が行われようと自分たちに被害がなければ傍観者でいるのが正しいと、善良な冒険者さえも言い聞かせるようになっていく。

そしてここにも、そんな男女の冒険者が3人……


「さ、作戦を立てましょうよ」

「ええ、そうね」


地図を広げた彼らは悪党の言葉を遮るように声を張り上げ、依頼の場所や内容を再度確認し合う。

依頼を受けた冒険者たちは先日、廃墟となった屋敷付近の教会に出現したという、魔物退治前の作戦を立てるために、冒険者ギルドの近場にある酒場を訪れていた。

少人数の冒険者には、こういった突発的な魔物退治の仕事がよく回される。

竜の討伐など大きな仕事は相応に名を上げた、冒険者組織に託されるからだ。

割がいい内容とはいえないが若人たちは、よりよい未来を夢見て、彼らは真面目に職務を全うしようと励んでいた。

……この場にいない、ただ1人を除いて。


「今日も遅刻なの? 道に迷ったり、鎧を前後逆に装備したり、悪酔いで喧嘩になったりしてないかな」


銀髪のロングヘアーに切れ長の碧眼が、黒の修道服に身を包んだ女性冒険者が狼狽える姿に


「別にいつものことだけど。心配性ね、ルシルは」

「……母親じゃあるまいに。酒飲みの怠け者でも、やる時はやる俺らのリーダーだ。きっと無事だろうよ」


エレインと彼女の横に座る、月を半分に割ったような形の弓を膝に置く男性は軽く流す。

呆れた様子の彼に同調するように腕に乗せた相棒の白鷹も、けたたましく咆哮した。

見るものに清楚な印象を与える、彼女の名はルシル・ロッドフォード。

混沌神メタモルフォシス信仰のメッカであるノックスでは珍しく、秩序神に仕える信徒である。

そして白鷹を右腕に乗せ、暗闇に溶け込む漆黒のフード付きマントを目深に被った、茶髪の弓使いの名はガヴィン。

ちなみに彼の無二の友の名はアルバートという。


ルシルは秩序の神イミタに仕える身でありながら、正反対の道徳心を持つ想い人がいた。

どうやら彼とは、幼少期からの幼馴染だという。

ヴォートゥミラ大陸の冒険者は冒険者ギルドにて、職員が珊瑚の粉末と呪文


〝サングイス・アルデンティア〟


を用い、秩序と模倣の神イミタ、中立と概念の神シグニフィカ、混沌と変容の神メタモルフォシスの神々の、どの価値観に共鳴するかを判別。

そして各国には冒険者の巨大組織が、3つ存在している。


アピス・アンジェルスは秩序神イミタの意志に従う、軍隊には不可能な治安維持に貢献する冒険者組織。

どの地域でも王侯貴族からの評判は盤石で、厳しく練兵された冒険者が統制の取れた部隊を組むため、魔物が強力な場所ほど重宝する。

冒険者組織の中では比較的死傷者は少なく、権力者の覚えがよければ立身出世の道も開かれており、貴族や市民のみならず冒険者からも人気が高い。


ピューパ・シグニフィカは、シグニフィカ神に冒険者組織。

依頼内容から構成員の個々人の能力に合わせ、適切に人選。

アピス・アンジェルスほどの堅苦しさも、コッチネラ・ディアボルスほどの放埒さもなく、依頼内容でどこに任せるか悩んだら、ピューパ・シグニフィカは堅実にこなす。

他方では知性と客観的な判断力を持つ冒険者たちが多数在籍し、腕自慢の荒くれ者が集う冒険者組織間の仲裁などの業務にも携わる。

交渉力を重んじ、利害関係の構築の巧みさから、近隣諸国との外交を重要視する大陸国家にて需要が高く、サピル・シヌスに並ぶ富国フィリウス・ディネ王国のピューパ・シグニフィカは群を抜いた精鋭揃いだ。

争う人間の双方の意見を汲み、無難な落としどころを探す倫理観と慎重さは、時折どっちつかずと詰られるものの、基本的には信頼のおける人物たちである。


コッチネラ・ディアボルスは混沌神メタモルフォシスへの教えを最良とみなす、極度の個人主義者や世間から弾かれた冒険者が寄せ集められた組織……否、アウトロー集団と呼ぶ方が、より的確だろう。

単独もしくは少数での効率的な活動を主とし、他国との経済的、人的交流が盛んで異文化への理解や造詣が深い人物が多い、海に面した海洋国家で特に栄える傾向にある。

その中でも大国サピル・シヌス帝国で彼らは最も力を持ち、絶海の孤島にある永劫の闇に閉ざされた街ノックスにおいても一大勢力。

他組織とは異なり経歴や種族、人格を無視し、純然たる冒険者の実力至上主義を唱え、自らを鍛え上げることのみが組織へ入る唯一の方法。

その方針が災いして問題児ばかりが揃うも、緩い規則だけは遵守する最低限の良識と社会性は持つ人物が多数派だからか。

意外にも大きな事件は頻発せず、今日に至るまで世間一般にはハイリスクハイリターンの依頼、依頼者不明のきな臭い内容、世間には公言しにくい職務。

或いは倫理的に問題のある学問、研究分野といった知的労働を請け負う。

組織の人気は国家や地域により両極端で、抑圧的な体制が敷かれた国では救世主のような扱いを受けるが、決して構成員は反体制を掲げる人物ばかりではない。

一匹狼たちを纏めあげるカリスマ性あるリーダーが台頭すると一気に組織力が伸びていき、組織の隆盛や歴史は波乱万丈。

また組織の理念や体質が真逆のアピス・アンジェルスと、犬猿の仲なのは詳しく語るまでもないだろう。


そしてルシルはアピス・アンジェルスに、その幼馴染はコッチネラ・ディアボルスに才覚を認められ、それぞれ勧誘を受けていた。

なのだが断って現在は、私とガヴィンを含めた4人組で冒険者として活動している。

理由は支部に在籍してしまうと、2人で逢う時間が減るから……らしい。

両者の言い分を耳にしただけで、こちらまで恥ずかしくなる。

外野からすると結婚適齢期の双方に好感を持つ男女が、付かず離れずの距離で親しく接する姿はいじらしくもあり


「別の誰かに気持ちが向けられる前に、互いに想いを告げるべきだ」


と、説教をかましてやりたい気分も湧き上がってきた。

だが甘酸っぱい関係性を間近で見ていられる、今を愉しむのも悪くない。

本来であれば最も早くに席につくはずのリーダーが訪れるまで、談笑していると


「お、ルシルにエレイン、ガヴィンもいるじゃ〜ん。集合すんの早いな〜」


仕込み杖を手にした緑髪の青年は相好を緩ませ、3人の元へと足早に近寄った。


「……デニスが遅いの。反省なさい、幼馴染として恥ずかしいわ」

「ははっ、相変わらずきっつ〜」


ルシルの説教にも動じず、顔をほんのりと赤らめたデニスがはにかむ。

先ほどまでの保護者のような発言を隠すためか、ルシルは厳しさに満ちた発言を繰り返した。

互いに素直とは言い難い性格と焦れったい関係性に呆れつつ、エレインが仲を取り持つと、ガヴィンは


「これはくっつくまで相当大変だな」


と言いたげに肩を竦めた。

いつまでも続くと胸の何処かに抱いた、淡く儚い平和な日常。

尊い日々は音を立てて崩れ、ガラス片の如く触れられざる傷だけを残して。

拙作を後書きまで読んでいただき、ありがとうございます。質の向上のため、以下の点についてご意見をいただけると幸いです。


好きなキャラクター(複数可)とその理由

好きだった展開やエピソード

好きなキャラ同士の関係性

好きな文章表現


また、誤字脱字の指摘や気に入らないキャラクター、展開についてのご意見もお聞かせください。

ただしネットの画面越しに人間がいることを自覚し、発言した自分自身の品位を下げない、節度ある言葉遣いを心掛けてください。作者にも感情がありますので、明らかに小馬鹿にしたような発言に関しては無視させていただきます。

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