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第17話 親と子の溝【愚痴よりつまらない無価値な小説】 

狭い路地に入ると石造りの老婆の家は、外界との接触を拒むようにひっそりと佇んでいた。

扉の蝶番は錆びつき窓枠は煤け、長年手入れはされていないのがうかがえた。

そんな折ふと違和感を覚え、Nobodyとエレインは家の前で暫し足を止める

魔物が徘徊しい生きる者を貪る街だというのに、家の前には魔除けの符もなければ、香草の束も見当たらないのだ。

案内されて室内に入って確認するも、怪物の侵入を防ぐ護符や聖水の類は置かれていなかった。

異世界にきてから日が浅いNobodyですら街で生きる者のほとんどが家の周囲に、魔物避けの薬草や護符を置いているのをエレインに聞かされ、実際に目の当たりにしてきた。

無論すべての魔物に対し有効とはいえず、人には無意味だが、ないのとあるのでは雲泥の差だ。

だというのに老婆の家には、それらの品々がまったくないのだ。


(……生きる気がないのか?)


室内に目を凝らすがあるのは、最低限の生活必需品くらいなもの。

死を迎える準備を整えたかのように、がらんとした室内は、ノックスで生き抜くにはあまりにも無防備だった。

Nobodyはエレインと目を合わせ、薄暗い室内を見回しつつ、 老婆の心境をそれとなく察した。


「Here, have a seat. I'll make you a pot of herbal tea in a minute(ほら、座りなさいな。すぐにハーブティーを淹れるから待ってなさいよ)」


しかしながら招き入れた老婆は努めて明るく振る舞い、暖炉の火でケトルの水を沸かすと、温かい茶を振る舞った。

寒空に冷え切った肌を湯気が温める反面、小さな食卓を囲むも会話は途絶え、ただ時間だけが過ぎていった。

2人が適当な話題を探そうと生活感の薄い部屋を見渡すと、その中で明らかに場違いなものが目に入る。

―――隅にあるのは冒険者用の大きめでポケットの多めな道具袋。

机の上には文章を書きかけの羊皮紙と羽根ペンがあり、老婆は時折慈しむようにそれらを眺めた。


「That doesn't look like an old lady's property, does it? Those belonged to my son(婆の持ち物らしくないだろう? ……あれは息子のものだよ)」


エレインに翻訳してもらい、Nobodyは眉を寄せる。

老婆はすっと立ち上がると冒険者の武具を、飼い猫でも可愛がるみたいに優しい手つきで撫でた。


「I thought my son was unworthy to quit being an adventurer and devote himself to writing. ...... I yelled at him about it, and he resumed his adventuring activities and was never seen again. ......(冒険者を辞めて、書き物に没頭する息子が不甲斐ないと思ったんだよ……それを怒鳴ったら冒険活動を再開し、それっきり行方知れずさ……)」


遠くを見遣るように目を細めた老婆の声が掠れる。


「I've always regretted the last words I said to you(最後にかけた言葉を、ずっと後悔しているんだよ)」


彼女の後悔の念が家の空気をさらに重たくする。

彼女は俯いたまま、静かに口を開いた。


 「......I'm possessed by the Grim Reaper and I don't have long to live. But I'm afraid to pass away alone(……死神憑きの私はもう長くない。でも独りで逝くのは怖いんだよ)」


Nobodyとエレインをまっすぐに見据える瞳には迷いも打算もなく、ただ切実な願いが宿っている。


 「At least protect me from demons and thugs until I pass away. ......(せめて逝くまでの間だけ、私を魔物や暴漢から守っておくれ……)」


横のエレインが顎に手を乗せて思考を巡らせる中、Nの脳裏には蘇る。

現代の世界で彼は"親"という存在に対し、嫌悪感と不信感を募らせていた。

親とは愛を与えるものではなく、我が子を思い通り支配し、期待に沿わなければ罵詈雑言の嵐が飛ぶ。

無法者ばかりの世界ではあるが親の願望を勝手に背負わされ、自由を奪われた日々に比べれば楽園だった。

老婆の語る息子の姿も親に生き方を押し付けられ、どこか自分と重なるものがあった。

目の前の老婆は、かつての自分を傷つけた親とは違うのかもしれない。

だが親の後悔に付き合わされるのは、Nobodyには耐え難い苦痛だったのだ。


「……悪いけど俺たちは冒険者だから。護衛の仕事なら別の人間に請け負ってもらってほしい」


口調は柔らかく、それでいて明確に拒絶の意を示す。

老婆は一瞬だけ寂しそうな顔をしたが、すぐに微笑みを作り直し


「I'm sorry I pushed you to go to ......(……無理を言ってすまなかったね)」


Nobodyが罪悪感からか目を伏せると、エレインは彼の横顔をじっと眺めるも何も言わず、そっとカップを手に取った。

沈黙がまた部屋に満ちていき、こうして言葉にできない溝が親と子の間だけでなく、老婆とNobodyの間にも横たわるのであった。

拙作を後書きまで読んでいただき、ありがとうございます。

質の向上のため、以下の点についてご意見をいただけると幸いです。


好きなキャラクター(複数可)とその理由

好きだった展開やエピソード

好きなキャラ同士の関係性

好きな文章表現


また、誤字脱字の指摘や気に入らないキャラクター、展開についてのご意見もお聞かせください。ただしネットの画面越しに人間がいることを自覚し、発言した自分自身の品位を下げない、節度ある言葉遣いを心掛けてください。

作者にも感情がありますので、明らかに小馬鹿にしたような発言に関しては無視させていただきます。

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