話したがり 【月夜譚No.276】
彼の自慢話には、もううんざりだ。偶になら付き合ってやっても良いと思うが、彼の場合は些細なことも自慢しにくるから、結構頻繁である。しかも、割とどうでも良いことばかり。
最近は適当に相槌を打って受け流しているが、彼はそれを解っているのかいないのか、いつも楽しそうに話す。今もファミレスのテーブル席の正面でペラペラと自慢する彼を頬杖をつきながらぼんやりと見遣って、こいつは馬鹿なのではないかと内心失礼なことを思う。
私がコーラのストローを咥えながらメニューに目を落としても、彼は構わず話し続けている。正直話の半分も頭に入っていないが、問題ないだろう。
「すみません。苺パフェ一つください」
「あ、オレ、パンケーキ食べたい」
驚いて顔を上げると、彼がニコニコしながらこちらを見ている。
「後でシェアしよ。それでさ――」
何事もなかったかのように話に戻っていく彼に、私はバレないようにそっと息を吐いた。
メニューを見比べて迷っていたのが筒抜けだったらしい。変わらず楽しそうに話す彼から目を逸らす。
これだから、自慢話はうんざりでも、彼自身は嫌いになれないのだ。