ヌコサ伝 第3話 紙の無駄遣いには気をつけよう
風呂に入った後、サイズが二回り大きな男子用の服を着たヌコサは、本棚から本を取り出そうとするものの、その本はなかなか重く、うまく取り出せないでいた。
そのため、仕方がなく部屋を歩き回っていたら、机に新聞が乗っかっていたので、それを見るも、字が読めないヌコサは、なんて書いてあるか理解できないでいた。
白里が風呂から上がってきたため、ヌコサは新聞になんて書いてあるか、聞いてみた。
(ヌコサ)「ここ、なんて書いてあるの?」
(白里)「どれどれ…『ナスノノの高級住宅街で殺人!薬物中毒の夫を妻が刺す』…なるほど。これは昨日の朝刊だね。なになに、『本日未明、ナスノノ高級住宅街ツバキヶ丘3−8番地で、隣の家から叫び声が聞こえたと隣人の女性が警察に通報。警察が駆けつけたところ…』…うーん、ヌコサにとってはちょっと難しい内容だねぇ。」
殺人事件の説明をするには時間がかかり、手間だな、と感じた白里は、そう言うと、本棚から絵本を手に取り、
(白里)「今はとりあえず、この本を読もうよ。」
と、話題を変えた。
(白里)「『ももたろう。むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが…』」
白里は、昔話を読みきかせた。
しばらくして、白里の家に、一人の少女がやって来た。
(???)「白里〜今日の夕刊、届けに来たよ。」
その声に気づいたヌコサは、たったたったと、玄関に走っていった。
白里は、マズイ。と、思いながらも、その少女に会うために玄関に向かった。
白里が、少女を迎えると、少女は、幼い女の子(=ヌコサ)がいる事に驚いて、つい、
(???)「その女の子、どうしたの?」
と、白里に問いかけた。
「ああ、穂希。この子はヌコサ。大陸で親が殺されたと言っていたから、僕が助けたんだ。」
白里は、(まだこの頃は)印刷屋の娘である赤木 穂希に、そう伝えた。そしてさらに、
(白里)「ヌコサ。この子はあかぎ ほまれと言って隣の印刷屋に住んでいるんだよ。」
と、勝手に穂希の紹介をした。
(穂希)「でも、白里。あんた…。」
穂希は、何かを言おうとしたが、ヌコサの前であるということで、自ら言葉を慎んだ。
(白里)「じゃあ、配達にい…穂希、ヌコサの面倒、みてちょうだい。」
(穂希)「しょうがない。今日は私が面倒を見るよ。」
穂希はそう言い、白里の家に上がると、白里は、夕刊を配達しに行った。
(穂希)「しっかし、白里もよくヌコサを拾おうと思ったのね。」
穂希はそう思っていた。
そもそも白里は、1ヶ月前に、魔法使いの両親を亡くしたばかりである。
白里の母親は病気で倒れ、父親は交通事故で帰らぬ人となった。
今の白里は、新聞の配達や道路の補修などの仕事をして、かろうじて飯を食っていると言う状況である。
それなのに、たまたま遠出先の大陸で見つけた女の子を拾ってきたのは、もしかしたら白里の心のうちで、何か思うところがあったのではないかな。
…と、穂希はその様に感じていた。
すると、ヌコサが
(ヌコサ)「ねぇみてみて。空飛ぶ魔法使い!」
と言って、大きな紙に書いた絵を見せてきた。
(穂希)「わー上手だねー。」
穂希はそう言うが、所詮、幼児が書いた絵であるため、腕前はご察し願いたい。
それよりも、ヌコサが絵を描いたのは、60×120の大きな紙である。
印刷屋の娘である穂希にとって、かなりの高価な紙に、(言葉は悪いが)落書きをされているのを見て、なんだか恐ろしい気分になった。
…多分その紙に精密な魔法陣でも描こうとしたのだろう。残りが何枚かあるはずだし、大丈夫か。と、穂希はグッと思い込んだ。
その後、穂希は、歌を歌ったり、絵本を読み聞かせたりしながら、白里が帰ってくるのを待った。
(白里)「ただいま。ヌコサおとなしくしてた?」
どうやら白里が帰ってきた様だ。
(穂希)「あ、おかえり。ヌコサは今ぐっすりと寝ているわよ。」
迎えた穂希は、そう言った。
(白里)「穂希、今日はありがとう。明日、役場に言ってヌコサのこと言いに行くよ。」
(穂希)「うん。分かった。じゃあ私はもう帰るね。」
穂希はそう言うと、白里の家を後にした。




