結界に入るベコ
ヌコサは、農場を営む有菜 芝郎の牧草地を借りて、結界魔術の練習をしていた。
この日は、内部の自分の姿を隠す結界を張っていたのだが、そこに南部鉄器という名前の牛が一匹入り込んできた。
と、ここで、南部鉄器の説明をしよう。
・正式名称は、広牛・南部鉄器・江刺。
・品種は日本短角種。年齢は12歳の種牛
・一見ただの牛だが、催眠術が効かないという特殊能力を持っている。
・また、素人が入ることのできない結界内に出入りすることができるという特性も持っている。
「ようヌコサ。今日はどったな結界を張ってらが?」
勝手に結界内に入り込んできた南部鉄器は、ヌコサに問いかけた。
「今日は内部に居る人物を、外から見えなくする結界よ。あなた以外わたしの存在に気づいていないでしょ?」
ヌコサはそう返答した。
「んだんだ。見えね。」
南部鉄器もそう反応した。
「で、どうするの?ここにいてもただ退屈なだけだけど。」
逆にヌコサが問いかけた。それに対し、南部鉄器は、
「ああ、もう出るよ。お前、今日これ練習なんだべ?んだば頑張ってな。」
と言って、結界の外に出ていった。
さて、問題なのは、その後の南部鉄器の行動である。
南部鉄器は、ヌコサが結界を張っている場所を知っている。
そのため、他の牛たちに、
「ここさヌコサが結界を張って、姿隠してらぞ。」
と、伝えてヌコサが出て来るのを待ち構えていた。
そして、ヌコサが結界を解除した時、そこには、
「待ってました。」
と、いう表情をした牛が数頭、群れになっていた。
それを見て、ヌコサは恥ずかしそうに、
「あいつ、ここでわたしが結界を張っていることを教えやがったな。」
と、思いつつ、農場から帰っていった。




