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【完結】ゲームの世界に転生したら、いきなり全滅ルートに突入した件〜攻略知識を活かして、なんとかして生き延びる〜  作者: みなかみしょう


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第29話:ザイアムの町

 リコニア辺境伯領、ザイアムの町。メイナス王国西端にあり、帝国の国境と最も近い町である。

 ミレスの町からは馬車を乗り継いで五日ほどで到着した。街道が整備されているおかげで、移動はとても早い。一度行った町は、今後転移魔法テレポートで移動できるので、時間が大分節約できそうだ。


 辺境伯領とはいうが、ザイアムの町は大きくて都会だ。ミレスのような上品な風景はなく、雑多で活気に満ちた都市である。周囲は草原や森で、帝国まで大きな街道が通っているという環境のおかげだろう。交易が盛んで、経済的にはかなり恵まれている。

 実際、少し東にある辺境伯のいる町よりも規模としては大きいらしい。金周りの良いところが大きくなるのはどこも同じだ。


 賑やかな分、治安が心配なので今回は更に良い宿をとった。その名も『砂漠の魚』亭だ。もはや見た目はしっかりしたホテルであり、部屋も大分広い。ザイアムは冒険者が集まる場所でもあるため、冒険者向きの部屋があり、アイテム類を保管する小部屋までついている。


 そんなわけで、長旅を終えたオレ達は、軽く休憩してからいつも通りの会議を始めた。場所はオレの部屋である。今回は広さに余裕があって、テーブルも広い。

 

「長旅お疲れ様です。それで、今後の方針ですが」

「なんで事務的なんですが、マイス君……」

「いや、なんか改めて打ち合わせとかいうと、どう始めたらいいかわからなくなって」


 だんだん宿のグレードが上がるにつれて、現代的になってくるんだよな。つい昔を思い出してしまった。

 気を取り直して、オレはザイアムの町での活動方針の説明に入る。


「とりあえず、明日からメタポー狩りに入ろうと思う」

「とりあえず、じゃないですよ! メタポーって、凄い力を与える代わりに見つけにくいし倒しにくいって有名なモンスターじゃないですか!」


 メタポーというのは、いわゆる経験値稼ぎ用のモンスターだ。見た目は丸っこいデフォルメされたブタで、金属質な外観をしている。特定の世代には一目で経験値を持ってるとわかる見た目だ。


「いるところにはいるし、結構簡単に倒せるもんだよ」

「マイス君のそういう情報、間違ってないのが恐いんですよね……」


 ザイアムから少し離れた辺鄙なダンジョンには、メタポー部屋がある。出現率が滅茶苦茶高い小部屋だ。当然のように隠されており、<貫通>と同じように救済用だと言われている。 ゲーム時代と同じく、今回も遠慮無く救済させていただこう。

 

 メタポー退治についても、<貫通>のスキルがあるので特に問題なし。ザイアムに来てすぐ、魔法屋で閃光の腕輪という先制率が更に上がるアイテムを購入したので、かなり効率よく狩れるはずだ。


「少し離れたところの人気のないダンジョンにいく。そこで試してみよう。できれば、今度こそ三次職になりたい」

「三次職、私達は何になるんでしょうね」

「どうだろうな……」


 派生先が決まっている二次職と違い、三次職は全員が専用職となる。フォミナの場合は、アークという攻防一体の聖職者になり、強力な聖属性攻撃と支援が可能になる。お祭り的なファンディスクの追加職業ということもあってか、かなり強い。


 一方、オレことマイスの三次職は不明だ。ゲーム内では用意されてなかったから、全くの未知数である。まさか三次職になれないなんてことはないだろうけど、多少の不安はある。


「とにかく、まずはミレスで達成できなかった目標を終える。そうしたら、冒険者ギルドで依頼を受けよう」

「有名になって、エリアさんと接触する機会を得るんですね。上手くいくかなぁ」

「多分、なんとかなると思う」


 こちらはゲームに無かった行動なので確証はない。この時期のエリアは実家に帰って、家の手伝いとか治安維持をやってるので、そっち方面の依頼を受ければ接触の機会は得やすくなるはずだ。


「とりあえず、やってみましょう。帝国と商業連合の戦争は、結構進んでるみたいですしね」

「そうだな」


 国境近くまで来たおかげか、北の方の戦争の話題が入ってきた。どうやら商業連合はかなり劣勢らしい。まだ夏前だっていうのに、ゲームよりも展開が早い。これも不安要素だ。できれば早く正確な情報を得たい。


 いや、焦っちゃ駄目だな。できることから着実にいこう。


「あとはクラム様との連絡だな。日記に魔族のことを書いたら、少し動いてくれるといってくれたね」


 例のクラム様から貰った中身を共有できる日記はとても便利だ。先日の旧大聖堂のことを書いたら、さっそく向こうのアクションが来た。あまり期待するなとは言われたが、情報収集してくれる人がいるのは頼もしい。


「はい。それから、国境に来たと言ったら珍しい食べ物のことを書けと要求されました」

「新しい刺激に飢えてるみたいだな。あそこから出れないし……」


 考えてみると可哀想な話だ。流血の宮殿は広いけど、ずっといれば飽きるだろう。セバスに新しい料理を作って貰うとかで、ザイアムに着くなり物凄い勢いで日記に文章が書かれてちょっと引いた。

 そろそろ転移魔法も使えるようになることだし、今度差し入れでももっていこうか。


「とりあえず、この後食事にして、早めに休もう。明日からまたお仕事だ」

「はい。宜しくお願いします!」


 冒険者としての仕事が再開するのが嬉しいのか、フォミナから元気な返事が来た。

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