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Data.100 開戦の夜明け

 土曜日の朝が来た。開戦の朝だ。


 学校がある日よりパッチリと目が覚めたのは幸先が良い。顔を洗って歯を磨き、まずはリビングでゆっくり冷えたお茶でも飲む。さて、朝ご飯は……。


《ピーンポーンピーンポーン!》


 家のインターホンが鳴った。この連続2回は竜美だな。今日は朝から来てくれる予定になっていたけど、こんなに早いなんて……いつも通りね。


 リビングから遠隔で玄関のカギを開け、親友を迎え入れる。


「おはよう優虎ちゃん!」


「おはよう竜美」


 私はあくまでも平静を(よそお)っているのに、竜美のテンションはすこぶる高い。


「今日はいよいよ戰の日だね! 参戦しない私はどうやって優虎ちゃんを応援しようかと思ってたけど、やっぱりリアルの優虎ちゃんのそばにいられるのは私だけだから、VR装置の隣でパソコンを見ながら応援することにしたよ!」


「それ、昨日電話で聞いたよ」


「直接伝えておきたくて! さぁて、朝ご飯はなに食べる!?」


 そうそう、それを考えている最中だった。竜美が来たからには選択肢は無限大になる。でも、これといって強く食べたいものはないんだよねぇ~。となると、大事な勝負事の前だし、ここはげんを(かつ)いでアレを……。


「トンカツとか、どう? 勝つだけに……」


「朝から? 食べれる?」


「うっ……」


 そう言われると朝からバリバリの揚げ物はキツイ気もする。まあ、私は若いから胃がもたれることはないけどね! 気分的にキツイかもってことね! あと、揚げ物って油とか準備が大変そうだし、朝から悪いかなってのも……。


「そうだ! 近所に美味しいパン屋さんがあるから、そこでカツサンドを買うのはどうかな?」


「あー、確かにサンドイッチにすると急に軽い食べ物に思えるよね。いいんじゃない?」


「じゃあ、私が買いに行ってくるから優虎ちゃんは待っててね! 飲み物とか他に欲しいものがあったら連絡してね!」


「う、うん……ありがとう」


 来たばかりの竜美は、落ち着く間もなく家を出て行った。トンカツからカツサンド……そこまで大きく内容が変わるわけではないが、この2種のメニューの差は大きく感じる。竜美の提案に感謝しないといけないな。


 その後、竜美は20分ほどで帰ってきた。本当に近所のパン屋なんだなぁ~。近所に住んでるはずの私は知らなかったけど……。


「はい! 優虎ちゃんにはカツサンドとたまごサンド! 柔らかいパン好きだもんね! 飲み物はフルーツオレ! トラヒメちゃんっぽい黄色い飲み物だね!」


「ありがとう。いつも本当に感謝してるよ竜美」


「……やっ、いきなりそんなこと言われたらビックリしちゃうじゃない! もー、優虎ちゃんはいつも突然なんだから~」


「ごめんごめん、今度からは定期的に言うよ」


「それはそれでなんだかなぁ~。えっと、私もカツ! でも、エビカツサンドだよ! それとクリームパン! しょっぱいパンと甘いパンの組み合わせ! 飲み物は甘めのカフェオレ!」


 竜美はコーヒーが飲める。甘いカフェオレとはいえ、そもそもコーヒーの味が苦手で飲めない私には竜美が大人に見える。シャレた喫茶店とかでもジュースを飲んでる私に対して、竜美はサラッとコーヒーを頼む。


 制服を着てる時は姉妹みたいだと言われる私たちだけど、私服で外を出歩いてる時は親子に間違えられたことがある。まあ、私は歳相応の服を着てるのに、竜美が若奥様みたいな服を着てるのが悪いんだけどね!


 そんな感じで並んで立っていても釣り合わない私たちだけど、やっぱり一緒にいて一番幸せを感じるのは竜美なんだよなぁ。


「優虎ちゃん、私の顔にパンくずでもついてる?」


「いや、ただ見てただけよ」


「ふーん、今日の優虎ちゃんは気取ってるね。いつも通りリラックスリラックスだよ!」


「そういう竜美はいつもよりテンション高いけどね!」


 行儀は良くないけど、こんな感じで会話をしつつパンを食べる。竜美が選んだパン屋さんだけあって味はとっても美味しく、あっという間に2人ともすべてのパンを食べてしまった。


 開戦は12時なので、早起きして朝ご飯を食べた私には時間的余裕がかなりある。


「お昼ご飯はどうする? 戰の前に食べる?」


「……いや、すべてが終わった後に食べるよ。そんなに長くはかからないだろうからさ」


「うん、わかった! 楽しいランチになるように応援するね!」


 食事の後はリビングで存分にくつろいだ。いつもは眠たくなるんだけど、今日は不思議と眠たくならない。携帯端末で戰のルールなどを予習しつつ、数時間後に始まる戦いを思い描く。


 うーん、自分が負けるところは想像できないな!


「よし! そろそろログインして準備するよ! リュカさんたちはもうログインしてるみたいだし」


「そうだね。戰は普段のゲームとは違う独自の要素が多いから、みんなと何度も確認しないとね」


 参加者ではないとはいえ、そこのところをキッチリ学んでいるのも竜美らしい。


 私の家にはVR装置が1台しかないので、竜美はリオとして『電脳戦国絵巻』の世界に来ることはできない。でも、開戦まではボイスチャットなどで自由に意思疎通ができる。竜美を孤独にすることはない。


 でも、戰が始まったら誰もが孤独になる……!


 午前11時頃、私は『電脳戦国絵巻』にログインした。降り立った場所はいつも通り『いろはに町』。ここから戦場となる『双丘の竹林』および『谷間の平原』に向かう!

新章開幕&本編100話到達!

引き続き頑張ってまいりますので、ポイント・ブックマーク・レビュー・感想などで応援よろしくお願いします!

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