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目的地には、既にお父さんの車があった。
私に気づきすぐ降りてきた。
「兄弟から聞いた。お母さんにもしっかり話した。おうちに帰ろう」
お父さんの手が私の手に伸びる。
ドクンドクン
鼓動が早くなる。
バシッ
私はその手をはたき落とした。
そして、それと同時に感情が溢れ出した。
「あの家に帰るくらいなら、死んだ方がまし。あの人が、それで反省するなら、とっくの昔になおしてるはずだし、病気だって、心の病気だからって今まで理解しようとしてきた」
歯を噛み締める。
涙が頬を伝い地面に落ちる。
「その結果がこれなんてあんまりでしょ、あの日どんな気持ちで逃げたかわかる?あんな格好でさ、お父さんは、護ってもくれなった。仕事から早く帰らない日はあの人は、いつも私たちに八つ当たりしてた……」
悲痛な叫び。
そう、理解しようとした。
“お母さん“だから、“精神的な病気だから“と思って。
「……悪かった。お前から連絡もらった時仕事切り上げて帰ってきて、家族で話し合った。そのまま今の感情をお母さんにぶつけたらいい。お父さんも側にいるから」
「……今日は話したくない。学校には、ちゃんと連絡して」
「わかった。だけど、寝るところはどうする?」
「……」
(あの家に帰るくらいなら、野宿でもいい。彼には、十分世話になったからこれ以上はムリだ)
「ほっといてよ」
「……わかった、祖父母のお家にとまりなさい。今、連絡しておくから」
結局、兄弟からの説得もあり母方の祖父母の家にとまる事になった。
お父さんが祖父母のところに車で送る事になった。
車のなかでは私も、お父さんも無言だった。
祖父母のところにつくと、祖父母は、私を出迎えてくれた。
お父さんは仕事があるらしく、職場に戻った。
「大変だったね、あの馬鹿は」
祖母が言った。
「ご飯とかは食べた?」
祖父が訪ねる。
さっき吐いたばかりだったので、頷いた。
祖母は、私のお母さんのことを言葉で攻め立ててた。
でも、私は、知っていた。
祖母が表面たって私を守ることはないと。
昔、お母さんが祖母に暴力を震い頭の骨にヒビが入ったことがあった。
祖母は、それがトラウマになっている。
私たちが、遊びに来る度に悪気はないがこんなことを言っていた。
-あなた達のお父さんがお母さんを見限ったら、わかるでしょ。ここにお母さんがきたら、もう想像しただけで恐ろしい-
この言葉を私はこうとらえた。
“おばあちゃんのことを思うならお母さんのことを我慢しなさい“
だからだろう。
私にとってはここは居心地が悪かったのだ。
だからといって、父方の祖父母のところにはいく気はなかった。
あっちは、お父さんの妹が里帰りをしていたからだ。
赤ちゃんのためを考えると“もしも“の為にここしか選択肢はなかった。
寝る時間になり、祖母の寝室で一緒に眠った。
カーン カーン
異音に目が覚めた。
まだ辺りは暗い。
「!!」
そとから声が聞こえる。
祖母も目を覚まし明かりをつけた。
音のする方へと視線を向ける。
その光景に震え上がる。
「あけろー!娘をかえせー!」
そこには鬼の形相で、鉄格子をなにかで叩きつけるお母さんの姿があった。
吐き気が込み上げてくる。
「あんたの娘は、自分でここにきたんだよ!あんたの娘に帰りたいか聞いてみるよ!」
祖母が大声で私に言った。
「おうちに帰りたいか」
私にとっては、この状況でこんなことを聞く祖母にも恐怖を感じた。私が帰るといったらお母さんに私を渡すのだろうと感じたから……
それに、この時の心情はまともではなかった。
声が出ず首を降った。
「帰りたくないって、これ以上は警察呼ぶよ」
祖母がそういうとお母さんは悔しそうに姿を消した。
バクッバクッバクッ
心臓が苦しい。
祖母はあの後すぐ眠ってしまった。
私は、お父さんにこの事を連絡し朝まで起きていた。