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第18話 昼下がりの災厄

 ウェーブの掛かった淡い水色のロングヘアー、濃い褐色の肌、妖艶漂わす美しい顔立ち、Fカップ巨乳のダイナマイトセクシーボディを煌びやかな紅のコルセットドレスで包んだ美女が紅茶を飲んでいる。

 その長く尖った耳はルナット族、レハラントではダークエルフ族と呼ばれ、魔族とされる種族である事を示す。尚、レハラントではエルフとダークエルフを区別するが、実際は同一種族“ルナット族”だ。作中では便宜上“闇ルナット”と表現させていただく。

 彼女は屋外のガーデンテーブルで優雅にティータイムを楽しんでいる。

 その彼女の目の前のテーブルの上に何かがポトリと落ちた。黒いアレだ。黒くて、平べったくて、動きが早くて、六本脚で、長い触角を持つアレだ。

 だが彼女は全く動じずに、しばらくソレを見ている。


「そう、御苦労様。あなたはこれで解放よ。」


 そう言うと彼女はソレを傍にあったペンでピンッと撥ね飛ばした。


「うわ! こっちに飛ばさないでくださいよ、ユディの姐御! 俺、こいつ苦手なんスよ!」


 ソレが飛んだ先では全身甲冑の上から衣服を着るという、珍妙なファッションの身長1-1/4セルベ(2.5メートル)程もある大男が飛び跳ねて避けた。


「あら、そうなの? お仲間かと思ったわ。クスクス。」


 『ユディ』と呼ばれた彼女は悪戯っぽく笑った。


「もういい加減、そのボケはやめてくださいよ。まったく…。」


 その男は甲冑を着込んでいるのではない。それが地肌である。頭部にカブトムシの様な一本の角。昆虫の様な複眼。両肩上部から生えている先端がカニの様な鋏の腕は飾りでは無く、ちゃんと生きている。だが、腕はその下から生える三本指の腕がメインの様だ。

 下半身は後方へL字に屈曲し、四本の足が生える。その屈曲部を合せた全長は1-1/2セルベ(3メートル)に及ぶだろう。そして、その体格に合ったカジュアルな衣服を着用していた。

 彼の種族はパラビュサス族、レハラントではインセクト族と呼ばれている。


「それにしてもジアッラちゃんってば、随分大胆な案内標識を出したわねぇ。」


「ジアッラの姉御がそんな大サービスとか、信じられないッス。」


「まあ、面と向かって教える訳にはいかないから、独り言の体裁をとったけどね。」


「左様。それによりその子は教えられたのでは無く、独り言を聞き逃さなかった、つまり自力で情報を拾ったという図式を作った訳だ。」


 そう言うのは派手な紋様が描かれたフード付きローブを着込み、魔法の杖らしき物を携えた男。

 身長は1セルベに満たない。9/10セルベ(180センチ)といったところか。そしてフードから見える顔と袖から出る手に生気は無くひび割れている。ミイラだ。目には眼球は無い。声を出すのも口を動かすのでは無く、まるで身体のどこかにあるスピーカーから音が出ているかのようだ。

 同類はいない、世界で唯一無二の存在。しかし、口に並ぶ牙で彼が元マスチゴブロント族、レハラントで言うところのデーモン族であった事が判別できる。


「かなり強引というか、グレーゾーンな気がするんだが、どうなんだね?」


「ウチの主にさり気なく訊いてみましたが、ピクロランゲリシャーキンディロー・ブリグデリエル三世様が最初に言った見解で捉えている様ですよ。ヤヨイ・ウエハラ自身の功績だとね。」


 答えたのは狛犬の様な珍獣だ。

 そしてピクロランゲリシャーキンディロー・ブリグデリエル三世はミイラ男の名前である。


「あなた、よく噛まないで言えるわね。あたし達みたいに“ピクロ”でいいじゃない。」


「いえいえ、私ごとき使いッ走りが恐れ多い。」


「それにしてもズルっこくないッスかぁ~? 依怙贔屓じゃないッスかぁ~?」


「うふふ、あの子の探求心と好奇心の強さを見てると大昔の自分を見てる様な気分になるのよね。ジアッラちゃんも同じ気持ちじゃないかしら?」


「確かにな。懐かしさを感じるわい。」


「ジアッラの姉御は探求心のハンドル切り間違えて、ただのマッドサイエンティストじゃないッスか? ガハハッ!」


 ドンッ!


 突然の衝突音と共に昆虫男は座っていた椅子から弾き飛ばされ、地面に引っ繰り返った。彼の座っていた椅子の座面には黒い霧の様な闇があり、そこから小さな足が飛び出している。その足に蹴り飛ばされたのだ。そしてその足が引っ込むと、代わりにジアッラがヒョコッと顔を出す。


「あら、ジアッラちゃん。おかえりなさい。」


「今、誰かがわたしの悪口を言った気がしたから戻っただけ。またすぐに出る。

 おや? こんな所に脳筋カブトムシが引っ繰り返っているぞ。開発中の新魔法術式の実験台に使えるかも知れない。捕獲しておこうか。」


「ゴメンナサイ。カンベンシテクダサイ。」


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