2.初仕事。
今回さらっと。
次回で、オープニング終了。
デイビッドは、ワインを楽しみながら夜景を楽しんでいた。
「あぁ、あの夫妻も惨めだったなぁ。儂に逆らわなければ、このように命を落とさずに済んだものを……」
そして、思い出すのは自分の目の前で無惨な死を遂げた貴族の夫婦。
本当にただ自分にとって、目障りだっただけ。なにか罪を為したわけでもない、善良といえば、限りなくそれに近い者たちだった。
だが、デイビッドには罪悪感というものが欠如している。
自分の行く道に転がっていた石ころを、蹴とばした程度の認識しかなかった。
「ふふん。さぁて、次はどうやって上を目指すか……?」
だから、もう次のこと。
自分の指示で殺害された者たちのことなど、忘却していた。
だからこそ、彼は気付かなかったのだ。
「ん、誰だ……?」
自分が蹴とばした石が、恐ろしい獣を呼び覚ましたことなど。
「お前は、何者だ……?」
そこには、一人の少年が立っていた。
あまりに平々凡々で、特徴のない顔立ちをした少年。ゆらりと歩み寄ってくる相手に、デイビッドは言い知れぬ恐怖心を抱いた。
椅子から立ち上がり、後退りしながら思う。
「け、警備の奴らは何をしている……!?」
なにかが、おかしい――と。
このように平凡な少年一人の侵入を許す、など。
デイビッドは、そんな違和感を抱きながら尻餅をついた。
すると、そんな彼に少年はこう言うのだ。
「ごめんなさい。これも、人助けなんです」――と。
それは、あまりにも凡庸で。
どこにでもいる、普通の人が口にする台詞のようだった。
「が……っ!?」
少年の手にしたナイフが、デイビッドの喉元を切り裂く。
血が噴出し、瞬く間に悪徳貴族は絶命した。
倒れる男を見下ろして。
少年――リーシャスは、静かな祈りを捧げるのだった。