ルアと旅立ち
町で巨大なドラゴンと戦った数名の若い冒険者は隣町へ避難した民衆に事態が収束した事を伝え、襲撃で破壊された門とは反対の門から続々と帰ってきている。
家が無事な事に安堵する者もいれば、壊された家を見て嘆く者もいた。
この襲撃の被害規模は大きく、この大きな町の五分の二程度の家が破壊されている。
民衆で埋め尽くすされた道路の中をくぐり抜け、ノアは自分の家に向かっていた。
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【ノアの家】
「ルア!居るか?」
ガーベラを連れ、家に帰ってきたノアはルアを心配し、大声でルアを呼んだ。
「兄貴!どこに居たんだよ!隣町に避難している時探したけど居なかったよね?」
「あれ?その豚は?」
ルアは他の民衆と一緒にこの町へ帰ってきていたようだ。
ルアがノアの手を握りながら早口で質問する。ガーベラの方を見て、不思議そうにしている。
「こいつはガーベラ。俺が召喚したんだ!」
「えぇ!?ドラゴンじゃなくて豚を召喚しちゃったの!?」
ルアが驚いた声で言う。ドラゴンでは無く豚を召喚するなど例外中の例外だからだ。
「そうだ。でも、大切なのはこいつとの絆なんだ。さっき現れたドラゴンもこいつと一緒に戦ったんだぜ!」
ノアが家を走り回るガーベラを抱え、自慢げにルアに話す。ガーベラもどこか満足気にフガフガと鼻息を立てている。
「兄さんがあのドラゴンを…」
「兄さんはやっぱり凄いよ!」
少しおっちょこちょいだがやる時はやるノアの事をルアは尊敬していた。
お互いを見つめ楽しそうに笑うノアとガーベラの姿を見て、ルアはノアの様になりたいと考えていた。
「ルア。俺は前から決めていた通り、冒険者になるよ。こいつと一緒にもっと強くなりたい。」
「分かってたよ、兄貴。頑張ってね。俺はこの町でいつでも待っているからね」
「俺、絶対こいつと一緒にたくさんの人を救ってみせるよ!」
ノアは子供の頃から冒険者になるとルアに目を輝かせながら話していた。
その頃話していたのはドラゴンとの活躍だが、十五歳になった今のノアは、ガーベラとの活躍する未来をルアに話す。
「俺はまず、世界の中心…ヘイムダルの街の冒険者ギルド本部に向かうよ。」
冒険者ギルドとは、政府公認の冒険者となるため設けられた組織である。税金を使い、襲撃の被害にあった町に人員を派遣し、襲撃から町を守った冒険者に報酬を渡して平和を守っている。
一流の冒険者になるにはここに行くのが絶対条件である。
「兄さん、分かった。行ってらっしゃい!」
「あぁ、行ってくるよ。」
そう言うとノアは扉の前に立ち、ルアの事を振り返って笑い、前を見て扉を開けた。
ルアの見たその姿はいつもより凛々しく見えた。
「どうか…どうかご無事で…」
兄の旅の安全を願いルアはノアを送り出した。
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【冒険者ギルド支部】
冒険者ギルドが各地に設けた冒険者ギルド支部では、その町で起きた襲撃を素早く本部に伝える役割がある。
その一室で、今回の件の犯人…巨大なドラゴンを従えていた悪人が取り調べを受けていた。
「何故この町を襲ったんだ!言い訳を聞かせてもらおう。」
「待、待、待ってください!僕はた、ただ命令されただけで!」
本部から来たベテランの冒険者が犯人に向けて怒号を浴びせる。
犯人はとても怯えた様子でベテランの冒険者に話す。
「命令だと?一体誰にだ!?」
「そ、それは………………」
「何だ!言ってみろ!」
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