ジャックとロック
「あとは俺達に任せてくれ。」
ジャックがノア達に向けて語りかける。ノアの前に歩いていくジャックの背中はとても大きく、頼もしかった。
「お前達!そのドラゴンの注意を引いてくれ!」
冒険者達は数年前にジャックの執り行った召喚式で送り出された若者であった。
ジャックの声を聞き、冒険者の乗るドラゴンは最後の力を振り絞って空高く飛んだ。
巨大なドラゴンは空を見上げ大きな爪を振り上げて落とそうとしたが、冒険者達は必死に躱した。
「ジャックさん…頑張ってくれ!」
必死に願うノアと冒険者達の気持ちを背負い、ジャックはロックに乗った。
「ロック!火の玉をアイツにぶつけてやれ!」
ロックは重そうで岩のような鱗なんて無いように、軽快に空を舞っていく。
ロックは口から火の玉を連続で何個も吐き出し、巨大なドラゴン目掛けてぶつけた。
先程のガーベラの攻撃で弱っていたのかドラゴンは大きな咆哮と共に暴れた。
しかし、決め手にはならなかったようだ。
「俺達も協力するぞ!」
「応!」
冒険者達のドラゴン達の生み出した電気のオーラをまとった玉をぶつける。
「ロック、岩石砲だ!」
ジャックがロックに向けてそう叫ぶと、地面から石や岩がジャックの頭上に集まっていき、やがて大きな塊になった。
ジャックは大きくなったその塊を巨大なドラゴンにぶつけた。
鱗が壊れ、弱ったドラゴンの頭を目掛けて飛んだ岩石砲で動きを止めることが出来た。
どうやら、今すぐには動けなさそうだ。
巨大なドラゴンから降りてそそくさと逃げようとする人間を冒険者達が捕まえる。
「やめろ!離せ!」
「なにが離せだ!町を壊しておいてタダで済むと思うよ! 言い訳は後でじっくり聞かせてもらう!」
「やれやれ、隣町へ逃げ込んだ人達への説明もしなきゃいけないし、なんだか忙しくなりそうだな。」
「おぅ、お前達!捕まえておいてくれたか。」
ジャックがそこに駆け寄り、冒険者達に話しかける。先程までとは別人のように優しく、おちゃらけた様子だった。
「ジャックさん!本当にありがとうございました!ジャックさんがいなきゃこの町は無くなっていました!」
「ワハハ!これも俺達とノアが頑張ったからこそだぞ!」
笑いながらそう話すと、ガーベラを抱えたノアがジャック達の元へ駆け寄ってきた。
「ガーベラ、アイツと戦っている時急に大きくなったんです!まだ未熟かもしれないけど、俺達やっぱり冒険者になりたいんです!」
「ノアはガーベラの事を信じた。お互いが信じあった時こそ強さは生まれる。」
「そっか…俺…。」
ノアがガーベラを見ると、先程までより元気そうにガーベラは飛び跳ね、ノアを見て笑った。
「一旦解散しよう!お前達はこれからたくさん仕事があるだろうからな!」
「わかりました!ジャックさん。」
「ほら!いくぞ!」
巨大なドラゴンに乗っていた人間を拘束し、冒険者達は去っていった。
「そうだ!俺も家に戻らないと!ルアが心配だ!」
襲撃の際破壊された門とは反対側にある家に向かい、ノアとガーベラは走り出した。
岩石砲火の玉ジャックは腕を組み、二人の背中をじっと見つめていた。
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