体、死にます!②
俺は今、円柱がたくさん並んでいる神殿らしき所に1人立っていた。
ここがどこなのか分からない。
ここがどういった場所なのかも分からない。
ーーただ、1つ仮説を立てるなら、
「俺、死んだのか…」
そういうことになる。
ここが天国なのか分からない。
神殿と柱しかなく、それ以外になにか目立ったものが無い事から、地獄の可能性もある。
どちらにせよ、今は、実感こそないが歩いてみることにした。
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どれだけ歩いたのか、自分でもわからないぐらい歩いてみた。
この世界は太陽が無く、時間も分からない。
ただ全体的に明るいので周りの風景は見える。
ただ、同じような道をひたすら歩いていた。
そして、歩いた先に何かが見つかると信じてみた結果、大きくひらけた場所にたどり着いた。
その中央には、とてつもなくデカく、赤いオーラを纏っている人型のドラゴンが、目を閉じて丸くなって眠っていた。
おいおい、こんな所にドラゴンなんているのかよ。
ドラゴンは神よりも強い力を持ち、好き放題暴れ回ったため、手のつけようが無いことから神々が協力して異空間に封じ込めだはずだろ?
なぜ、そんな存在が、こんな所にいるのか?俺は不思議に思った。
そんな事を考えているうちに、赤いドラゴンはこちらに気付いたような素振りを見せて、大きなあくびをして、気さくに話し掛けてきた。
「やっとここにたどり着いたか。来るのが遅すぎて、ひと眠りしてしまったぞ!」
「俺は人間なんだよ!ここまで来るのにどれだけ疲れたか!お前にわかるか!?」
「ここは精神世界で肉体が無いはずだが、疲れを感じるのか?それはまた、面白い小僧だ!」
「今の疲れたは肉体的では無く、精神的に疲れたって事なんだけどな!て、いうか、今お前も寝てたとかなんとか言ってたけど、精神的に眠たかったのか?なんじゃそりゃ。」
「お前という呼び方はやめてくれ、俺はソウルドラゴンという名前を持っている。」
「そうか、じゃあソウルドラゴン教えてくれよ。俺は今なぜ精神世界とかいう所にいるんだ?」
「その前に、今の小僧の状態は分かるか?」
「あぁ、瓦礫に潰されて死んだとかそんな感じじゃ無いのか?」
「正解だ。だが、私は魂が昇天する前にこちらの世界に引き込んだ。」
一体何のために呼んだのか、俺が聞こうとする前にソウルドラゴンは言い放った。
「小僧の能力と私の能力、この2つは実に相性が良くてなぁ。どうだ、私と手を組まないか?極一部の最上位ドラゴンには各々、生まれながらに異能力を保有していてな。私は【リンク】という能力を持っている。これは、どんな存在でも繋がり、どんなことだって出来る、使い方次第では最強の能力だ。しかし欠点がある。この能力は、誰かと魂で繋がっている状態でなければ使えないのだ。私はこの能力を使ったことがなくてな。仲間からは宝の持ち腐れと言われた事がある。」
そこまで言ったソウルドラゴンは、一息つきながら
「そこで、お前の能力の出番だ、小僧。」
と、期待に満ちた目で見つめてきた。
「い、いや、ちょっと待て!確かに俺はあらゆる存在と意思疎通は出来るけど、それだけだ!期待に応えられない!」
俺は必死になって自分の能力を説明した。
「ふむ、貴様は自分の能力を過小評価しすぎている。もしくは、本当の能力を勘違いして理解している可能性もあるな。」
ふむふむと、頷きながら独り言のようにボソボソ呟いているソウルドラゴンの放った言葉に引っかかり、俺は質問してみた。
「本当の能力?ソウルドラゴンは能力を見通す事が出来るのか?」
「ん?あぁ、出来るぞ。今試して見るとやはり間違って理解していたようだな。」
と、返ってきた。
「俺の本当の能力は何なんだ?教えてくれ、ソウルドラゴン!」
「構わんが1つ条件がある。」
「条件?」
「あぁ、私をここから出すのに手伝ってくれないか?」
「どうやって出るつもりだよ?考えでもあるのか?」
「あるにはあるが、絶対出れる確証は無い。なに、私は出れなくとも小僧は出れるようにするつもりだ。手伝ってくれるか?」
「分かった、交渉成立だ!」
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「ではまず、小僧の本当の能力は、意思疎通をとった対象の能力を最大限にまで伸ばす能力だ。」
え、なにそれ。初めて聞いたんだけど。
俺が唖然としていると、それをみたソウルドラゴンは面白そうな顔をした。
「本当になにも知らなかったようだな!能力を伸ばす能力は、相手の魂と【リンク】していなければ、伸ばすことが出来ないのでな!安心しろ!小僧が今まで話しかけていた生き物たちは、中途半端に乗っ取って心を読み取っていただけだ。人間であれ動物であれ、実質無害だ」
そこまで言いきるとソウルドラゴンは満足そうに頷いていた。
確か、ソウルドラゴンは誰かと繋がっていないと【リンク】を発揮出来ない。だけど今こいつは、俺の能力を見通していた。となると…
「その通りだ、小僧!私は今能力を存分に発揮している!それは、小僧と繋がっているからできることだ!小僧が存在しているから、一生使うことが無かったこの【リンク】という能力を使えている!小僧には感謝しているぞ」
と、ソウルドラゴンが、まるで俺の心を読んでいたかのように続けてきた。
「あぁしっかり読んでいるぞ、小僧の心の中を。」
訂正、まるででは無くしっかり読んでいました。
「でも、どうしておれは今ソウルドラゴンと【リンク】出来るんだ?」
「それは、ここが精神世界だからだ。精神=魂だからな。小僧は今、魂の存在である私に直接語りかけている。その瞬間【リンク】が発動した」
なるほど、だから【リンク】を使えるのか。
「では、そろそろここを出ようか。小僧も現実世界に戻りたいだろ?」
「え?戻れるの?確か体はぐちゃぐちゃになったって言ってたよな?」
「体が完全に消えたわけでは無いだろう。一部分でも残っているのなら、その体と【リンク】して修復できる。」
「まじか、そんなことまで出来るのか?もうなんでもありだな」
「言っただろう?【リンク】はどんな存在でも繋がる事ができる能力だと。」
改めて考えると、ホント反則級の力だな。ただ、使える条件が厳しすぎるんだけどな。と、ソウルドラゴンが、
「だが、現実に戻っても、小僧や小僧のクラスメートを殺した連中ががうじゃうじゃといる。このまま戻ってもまた殺されるだけだ。どうだ、私をつかって反撃しないか?」
急にそんな事を言い出した。
「いやいや、人殺すのはちょっと躊躇いがあるっていうか、あいつらと同じようなことはしたく無いっていうか…」
「甘い男だな。だがまぁ、人を殺したく無いのであれば、守るために使えばいいのでは無いか?小僧?」
「それは、自分をか?」
「自分でも他人でもなんでもいい。何かを守るために戦うのだ、小僧!」
…分かったよ、ソウルドラゴン
「俺戦うわ」
「おう、そうか。じゃあまずはこの世界から抜け出すぞ!こんな、なにも無い世界とはおさらばだ!神如きが何百万年と封印しおって!おい小僧!この世界に【リンク】して、ここを離れるぞ!つかまれ!」
「そろそろ小僧っていうのやめないか?一様一時的とはいえ協力する仲だ、名前で呼んでほしい!俺の名前は留糸だ!」
「そうか!では行くぞ留糸!現実世界に!」
さぁ、
反撃開始だ!