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イタ告から始まる恋を信じてもいいのか?  作者: 二狐
イタ告から始まる恋
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イタ告から始まる恋 3/4

 帰り道、ふと冷静になって思った。


 …待てよ?

 いや絶対言い過ぎたよね⁉

 いくら相手が冷やかし目的であれ、あんなの言い過ぎだよね⁉

 うわぁ~、絶対引かれたわぁ~…。

 間違いなく後で仲間内とかで噂されてるやつだよ、これ。

 ただでさえ悪目立ちせず、大人しく、影薄くをモットーに今日まで学校生活送ってきたのに、これじゃ今までの努力台無しじゃんかよ…。


 チャリに乗りながらめちゃめちゃ小っ恥ずかしくなって、なんか普通に落ち込んでしまった。

 まぁどうせここでいくら懺悔しようとも一緒だし…。

 後悔先に立たずとはよく言ったもので、今更悔いたところで状況が変わるわけでもないし、とりあえず今後も今まで通り生活するしかないという結論に至った。

 どうせ以前から捨てられた身なんだし、これでいいんだ。

 誰も俺に関心なんてあるはずない。

 名前すら知られていない。

 あの高校に掛川凌という男はいないのだから。


 家の前に着いて、チャリをガレージに仕舞う。

 すると、近くで門の開く音がした。

 隣家にも誰か帰ってきたらしい。

 俺も時を同じくして、ガレージからひょっこり顔を覗かせると、そこには幼馴染の(りん)の姿があった。

 たまたま同じタイミングで帰宅したようだ。

 俺に一瞬気付いたみたいだったが、結局一秒も目も合わせてくれないまま、凛は家へと入っていった。


 凛は先ほども述べた通り、俺の幼馴染の女の子だ。

 隣家の西野(にしの)家の一人娘である。

 彼女は俺と同じ浅葱野高校に通う二年で、クラスも俺と同じ四組だ。

 容姿端麗、成績優秀、おまけに巨乳といったアドバンテージを持つ、ラブコメであれば最強のヒロインに成り得るスペックなのだが、リアルとは手厳しいもので、俺は中学以来、彼女と一言も口を訊いていない。

 だから、よく見る幼馴染ツンデレキャラみたいなものや、親が出払っていて、誰もいない俺の家にわざわざ来ては、家事を全てこなしてくれる世話焼き幼馴染みたいなものはそもそも俺にとっては幻想であって、彼女のせいでそういった類のラブコメに対して、冷ややかな目線で鑑賞することしかできない体に調教されてしまったのだ。

 正直、凛に対しては幼馴染という感じも全くしないし、あくまで幼い頃に馴染みがあっただけの人間だから『幼(い頃に)馴染(があった人)』という表記がしっくりくる。


 たまに凛の姿を見るだけで、あの頃のフラッシュバックを起こすこともあるから、正直俺自身もあいつには会いたくないし、目を背けたくなる

 あいつが俺に関わってこないようにしているのも、俺なんかと関わってしまうと、あいつの株が下がるからってことなんだろうしな。

 何となくそう察していた俺は、あえてあいつと関わる事を敬遠しているのだ。

 その方がお互いのためだと思っている。


 とにかく今日一日疲れ果てた。

 今日は凛の事も千野の事も忘れて寝よう。

 寝たらきっと今日までの事、全部忘れられる気がするから。


 翌日、目が覚めた俺は確信した。

 やっぱ何も忘れられていない。

 正直メンタル面でも体力面でもかなり疲弊していた俺は、あんまり学校に行きたくなかった。

 もちろん今後の周囲の反応も怖いが、あの悍ましく壮絶な中学時代を経験した俺にとっては、そんな事屁でもなかった。

 そんな下らない事以上に、俺は千野に合わす顔が無かった。

 千野がどう考えて、昨日俺にあんな事を言ったのか分からないままだったが、その意図を汲み取るまでもなく、俺は彼女の思いに反して心にもない事を言ってしまったと感じていた。

 何か弁明しようにも、合わす顔が無いから会えもしない。


 複雑な感情を渦巻かせながら、学校の支度を済ませた。

 重い足取りのまま玄関を出て、学校へと急ぐ。

 誰も俺に視線など向けていないはずなのに、無いはずの視線が痛かった。

 とはいえ俺が選んだ修羅の道。

 今更後悔などない…なんて言えるほど俺は強くはないワケだが。

 学校に到着し、下駄箱から上履きを取り出すと、それと同時に下駄箱から紙切れが落ちてきた。

 見覚えのない筆跡…。名前は書かれていなかった。

 つーか、友達いねぇから見覚えのある筆跡などあるはずもないのだが。

 その手紙にはこう書かれていた。


『今日の昼休憩時に自転車置き場裏に来てください』


 この内容を見て、何となく浮かんだのは千野の顔だった。

 もしかして、千野は俺にもう一度チャンスをくれている…?

 なんて都合のいい妄想が浮かんで仕方がなかった。

 いずれにせよ、行く外あるまい。

 とにかくこの文言通りに、俺は昼休みに自転車置き場裏へと行くことを決意した。


 何一つ集中出来ぬまま、四時間の授業時間が終わった。

 昼休憩という俺にとって最高に都合のいい時間帯。

 飯を食う場所をとりあえずは考えなくてもよくなるという、ありがたい仰せ。

 期待と緊張と不安ががんじがらめに絡まったままの状態で向かった。


 しかし、自転車置き場裏に辿り着くと、そこにいたのは千野ではなかった。

読んで頂きありがとうございました!


次回投稿までしばらくお待ちください!

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