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2-11 村へ

 子供達と手を繋いで村へ向かった俺を出迎えてくれたのは、百人以上もの武装した子供達の親や村の自警団らしき人達だった。

 おっとう、村ではすでに魔物の討伐隊が組織されていたようだ。


 子供達を連れて帰ったから、ひどく注目されていたようで、俺は頭をかいて挨拶をした。


「やあ、なかなか勇猛な村ですね。

 俺はカズホ。

 ところで俺の連れ二人はどこかな」


 まあ一人は見渡せばどこにいたってすぐに見つかる奴なのだが。


 頭一つどころか、ユーモ村という村の名前を書いた入り口の標識付近を埋め尽くした人垣の中で、その倍近い高さのあるフォミオが笑顔で片手を上げて、お帰りなさいの挨拶をしてくれる。


「ただいま、フォミオ」

「お帰りなさいませ、カズホ様」


「あ、お帰りなさい、カズホさん。

 その様子だと無事にネストは討伐できたようですね」


 俺が探していたのは主にこっちだ。

 彼の髪も派手なオレンジ色、橙黄色の髪なので帽子を取ってくれていれば一発でわかるがね。


「ああ、立派な蜂の巣ネストも一つ手に入ったよ。

 まあ、あのような物に御用命はないだろうから死蔵品になってしまいそうなのだが。

 ショウ、お前も特にいらないよね」


「うわあ、毎度の事ながら無茶ばかりしますね」


 俺は笑って誤魔化しておいた。

 あのでかい蜂は、正直言って俺もあまり相手にはしたくはない魔物だったのだ。


「もしかすると前のでかいネストも俺が収納した土と一緒になっていて、まだ生きているのかもしれん。

 あの時も慎重に土を取り除いていたら、ネストを拝めたのかもしれないなあ」


「やれやれ。

 そいつだけは絶対に収納の外に出さないでくださいよ。

 まあカズホさんが御無事で何よりでした。


 村の皆さん、魔物は無事に討伐されました。

 子供達も十人全員無事に帰ってまいりましたし。

 ね、僕が言った通りでしょう」


 どうやら俺を信頼して、ショウが村人達を上手に説得して引き留めてくれていたらしい。

 よかったぜ、もし彼らに来られていたら死人の山が出来ていたところだ。


 さすがにこの人数を、あの毒針マシンガンからは守れないからな。

 相変わらずショウは頭が回るし判断もいい。


 何よりも人から信頼される真摯な性格が、この結果を生んでくれたのだから。


 その村人達の中から、頭にはもう白い物がかなり混じっているが、しかし体はまだまだ壮健そうながっちりとした体格の男が前に進み出た。


「あなたが魔物を退治して子供達も助けてくださったのか。

 村を代表して、この村長ムラークが心より御礼申し上げる」


 そう言って彼は蜂除けなのか、耳から首元まで守ってくれる革の帽子、まるで革の兜のような物を外して頭を下げてくれた。


 手には年季の入ったような槍がある。

 元は兵役でも務めたものか、手付きも素人臭くない。


 一方、この俺と来た日にはスキルや特殊な武器がないと、たとえ雑魚なゴブリンなんてものが相手だろうが大いに苦戦しそうな按排なのだ。


「いやあ、どうやら俺は魔物とは戦う宿命のようでしてね。

 村にいようが、旅に出ようが、どこに行っても連中が湧いてきますので本当に困ったものです」


 これで、えーと狼に熊二回に魔物穴に、あの糞蟷螂と合わせて今回で六回目になるのかなあ。


 あ、そういえばフォミオもいたなあ。

 あれは別に討伐対象じゃないんだけど。


「それはあの魔王ある限り、今の世界の宿命でございましょうなあ。

 さ、あなたも旅をしてきて魔物の大群と激しい戦闘までされて、さぞかしお疲れでございましょう。

 どうか、今日はこの村に御泊りください。

 宿屋ではなく是非とも我が家へお越しくだされ。


 あなた様は村の恩人なのですから歓待いたしますぞ。

 ショウとそちらの大きな従者さんも」



 あはは、主にスキルでの戦いだから、子供達のところまで走ったのが一番疲れたんだけどね。

 まあここはありがたく、お言葉には甘えておきましょうか。


 いや荷馬車の上に乗っているだけでも、揺られた按排で疲れたんだけど、結構走ったので。


 今までの予定とは様子が変わり、こんなお昼休憩予定だった村で一泊する事になった。

 まあ急ぐ旅でもなし、別にいいんだけどね。


 脳内で早く街へ行ってこいと文句を垂れている幼女様が約二名いらっしゃったが、脳内フォミオに命じて優しく寝かしつけておいた。


 フォミオは子守歌も名手だ。

 どんどんあいつの子守りスキルが上がっていくな。


 俺はよく整備されたなだらかな道を彼らと一緒に歩いて進み、村のメインストリートへと進んだ。


「へえ、この村はなかなかのものですね」

「おそれいります」


 ここはメインストリートも広く、また店の数は多いし、そして何よりも石で舗装されていた。

 ここまで来て、やっとまともなこの世界の舗装路に出くわしたのだ。


 これは小さな街と言ってしまっても遜色はないのではないかと思ったが、そこは呼び方が何らかの国の指針で決まっているのだろう。


 あるいは領主が直接治めるようなところ以外は少々大きくても村とかね。

 日本でも確か人口五万人が市と認定されるボーダーラインじゃなかったろうか。


「これは王様も泊まるわけだ。

 あの村からこの方、まともな村はここが初めてだろうからな」


 それから砦までは泊まらずに強行軍だったのだろう。


 帰りもそうだったのだとしたら、あの勇者どもめ、さぞかし音を上げた事だろう。

 特に尻がな。


 よかったなあ、俺はあの連中と一緒に王都まで行くのじゃなくって。


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