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1-7 ああ無情

 そして、次々と有用なスキルがSランク以上のスキルが登場し、王様もかなり御満悦の御様子だった。


 それから最後に俺達三人の番だ。

 へっ、真打登場ってか。


 まずは妹ちゃんからだ。

 佳人の名を持つ美少女のスキルとはいかなるものなのか。


「おおお、こ、これは~」


 またもや神官が何か大変興奮していた。


「おお、どうしたというのじゃ」


「素晴らしい。

 王よ、これまた伝説のスキルが出ましたぞ。


 これこそは最強のSSSランク切断スキル、神の刃です。

 時空ごと、いかなる敵も切り裂くのだと古文書にもあります。

 勇者の力と合わせれば、魔王とても必ずや倒せましょうぞ」



 すげえスキルだな、おい。

 だが、宗篤姉妹は真っ青な顔をしている。


 そりゃあそうだ。

 はい、妹ちゃんは魔王軍というか、魔王その方が特等席で待つ最前線送りが決定しました。


 どうするんだよ、これは。

 この大人しそうな子には、いくらなんでも魔王と喧嘩するのはちょっと無理だろう。


 たとえ、そのスキルを譲ってくれると言われても、俺にだって無理だろうけどな。


 だが、彼女采女さんは例によって様子見する事にしたようだ。

 次は彼女の鑑定なのだから。


 その内容によって出方を決めるつもりなのだろう。


 妹だけは死んでも手放さないように、しっかりと妹の体に両手を回してギュッと抱きしめながら。

 あと、まだ知り合いの俺も残っているのだし。


 そして彼女の鑑定を終えた神官の反応は。


「うおおおお、これまた凄い。

 なんという事だ。

 この方、凄いスキルばかり三つも持っていらっしゃいます」


「なんじゃと。

 そのような事は、またまた歴史開闢以来の出来事じゃあ!」


 王様は血管が切れそうなほど興奮しまくっていて、今倒れたとしても何の不思議はない。


 いっそ倒れちまえよ。

 もう勇者が来たんだから、世間もあんたになんか用はない。


「スキルは【飛空】【絶対防御】【神の雷】の三つでございます。

 すべてSSからSSSランクの超絶で希少なスキルです。


 そちらの先ほど鑑定した少女は妹でしたな。

 素晴しい勇者のスキルの支援もあるのですから、お二人が力を合わせたならば必ずや魔王だって倒せましょうぞ」



 おいおい、女子供にばかり敵の親玉と戦わせるつもりなのかよ。

 仕方がねえなあ、俺にとびっきりのスキルを寄越すのなら考えてやってもいいぜ。


 俺は立て続けに飛び出していたスキル群に思わず酔いしれてしまっていて、そのような分不相応な事を考えていた。


 俺はどんなに凄いスキルがいただけるものなのかと。

 いや、もらえるんじゃなくって既に身に着けているスキルを鑑定してもらうだけなのだが。


 俺はきっとスーパーヒーローみたいな力の持ち主なのに違いない。

 この美少女達と勇者のパーティを組むのも悪くない、などと馬鹿な事を考えていた時間もあったのさ。


 まさか、あのような事態になるなんて思いもしなかったのだから。


 俺はにこにこしながら、堂々とした態度で鑑定していただいていたのだが、神官さんの様子が何か変だ。


 眉を八の字に寄せて、そして口も半開きのまま、への字っぽい感じにしている。


 なんだ、よっぽど凄まじい信じがたいスキルでも出ちまったのかな。

 俺はまだ余裕たっぷりで、そのような事を思っていた。


 王様も不思議がり、彼を急かした。


「どうしたのじゃ?

 早くせい」


「は、はあ。

 では申し上げます」


 何故か困惑していた彼は俺の方へ、何やら同情を載せたような眼差しを送ってきた。


「えー、彼の者のスキルは【本日一粒万倍日】であります」


「「「は?」」」


 この場にいる全員が同じような反応を寄越しやがった。

 もちろん、この俺自身も含めて。


「なんじゃ、その【本日一粒万倍日】というものは。

 そのようなものは言葉としても生まれてこの方聞いた事がないのだが」


 そりゃあ、ただの日本の占い用語みたいなものらしいからな。

 この俺だって昨日まで一度も聞いた事すらなかったよ。


 そもそも、そのスキル名の由来は、あの宝くじの幟に書かれていただけのものだよな。


 ほんじついちりゅうまんばいび。


 なんで、それが俺のスキルなんだよ!



 あんなものに意味なんてあるのか?

 まあ字面から意味が判断できるのが漢字のいいところなんで、うっすらと内容はわかるんだけど。


 もしかしたら、物凄い幸運をもたらす必殺のスキルなのだろうか。


 なんとなく似たような印象の言葉として秋良があるよな。

 確か意味は、秋に良しという事で万年豊作の意味だ。


 スキル万年豊作相当のスキルか、これってもしかして村とかで喜ばれそうなスキルなんじゃないのか。

 秋良は昔の農家の人に多い名前だったと思う。


 何故だ。

 いくら巻き込まれ勇者とはいえ、勇者のスキルとしてこのような物が何故発現するのだ。


 ジョブが村人とかいうんじゃないだろうな。


 シイラとかいう、でかくて釣れ過ぎるので釣り師を困らせると言われる魚も、地域によっては秋良という名で呼ばれていたっけ。


 そいつ自体は結構美味しくいただける良い魚のはずなのだが、狙った獲物がまったくかからず、そいつばかりがたくさん釣れるんで外道として嫌われるんだよな。


 またこれが卵をいっぱい産む、よく増える奴だったはずだ。


 あと釣り師のジョブというのも、やはり微妙だろうな。

 海の魔物なら釣れてしまうかもしれないが。


 はあ、本日一粒万倍日ねえ。

 うーん、どう考えても意味不明だ。


 ここは一つ、勇者とその軍勢に幸運をもたらす能力とかなんとか言いくるめておくとか。


 神官もあまり内容を言いたくなさそうにしていたが、王様の前で言わない訳にはいかないので、一瞬俺の方へ視線を走らせてから溜息を吐きながら、仕方がなく内容を告げた。


「これは、今まで該当するものがない新スキルでありますが、ランクは鑑定できます。

 ランクレス、つまりは何の役にも立たない屑スキルという奴です。

 これだけ有用なスキルが集まりましたので、全体として平均で考えれば中にはこういうものもあるかとは思っていましたが、よりにもよって一番期待のかかる最後の最後に出てしまいましたね」


 それを聞いた王様は思慮深く、白くなった威厳のある顎髭を弄りながら、慎重にこう言ってくださった。


「その新スキルが、実は有望なスキルだったという事は?」


 そうそう、国としては有望な人材は逃がさないようにしないとね。

 うんうん、そこのところどうなのよ、神官さん。


「残念ながら今まででそのような事象は有史以来ございません。

 有用であるならば必ずランクがつきますので。

 有用でないスキルなので、我ら専任神官の鑑定スキルでランクレスとしか鑑定されないのでございます」


 ガーン。

 この神官、なんという事を言うのだ。


 俺はおそるおそる王様の方をチラっと見たが、彼は非常に難しい顔をしていた。


 こ、これはマズイ!


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