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1-65 あれこれと作って

 そして、それからはスキルであれこれ試したり、爆弾用に作ったでんぷんを使って、偽わらび餅を作ったりして楽しんでいたのだった。


 贅沢にも地球のお菓子から化合物単位収納によって取り出した上等な砂糖を使って、この世界初と思われる砂糖入り黄な粉も開発したのだった。


「わらび餅おいしー」

「黄な粉大好きなの~」


 この世界で作られたキャンデーの方から取った砂糖は品質が良くない感じで、それは元の砂糖の品質が今一つであるせいなのかもしれない。

 おそらくは精製の方法が未熟なのだろう。


 それで楓の樹液から砂糖を取ろうとしたのだが、純度が低いせいなのか、メイプルシロップのせいなのか、どうも上手くいかない。


 俺がこの新しいスキルの使い方に未熟なせいかもしれない。

 あるいはこの力自体が、材料に使われた元の物質のレベルに左右されるのかもしれない。


 地球のお菓子からは高品質な砂糖や原料が取り出せるので。

 それを使ってフォミオに新しいお菓子などを作らせようと思っている。


 例の焼きメレンゲのロッシェも、チョコの材料の素材を個別収納して得た材料からフォミオに作らせたが、この世界の物よりも数段美味い物に仕上がった。


 あいつは何をやらせても天才だ。

 せっかく作った、この黄な粉餅がこの村の名物にならないかなあ。


 できれば砂糖楓のシロップがけで。

 いや、ここの楓は砂糖楓じゃないから無理だなあ。


 どこかでピート(てんさい)とか栽培されていない物だろうか。

 あれなら砂糖の原料として村のいい作物になるだろうに。


 あれは寒い北海道で多く作られているものだから、この辺じゃ無理なのかなあ。


 俺は農家の関係者でもなければ、家庭菜園やレンタル畑にも興味なかったので農作物の知識はまったく自信がない。


 大根のような根菜は糖分をよく蓄えるようだが、それも種類によるだろう。


 この世界の砂糖はかなり貴重品のようだが、サトウキビか何かから作られているのだろうか。

 錬金術で合成して作っていたりしたら大笑いだな。


 そもそも、ここを訪れる人がいないので、名物もへったくれもないのだがな。

 まず道と宿を整備しないと。


 もう名物は、あの隣町パンを改良した新焼き締めパンでもいいかもしれない。


 できれば『フォミオママの愛情焼き締めパン』を王都へ持ち込んで流行らせたいものだ。

 あの国王推奨の料理になる事請け合いさ。


 いやいや、こいつは高級過ぎて、あの王様には受け付けないかもしれないな。


 この前作った陶器の方はなんとか乾燥できているようで、半分くらいの物がひび割れてしまっていたが、なんとかここまではいけた。


 あとは焼いてどうかだが、正直な話無理やり陶器にする必要はない。

 とりあえず鉄容器はないので、これでもいいさ。

 爆発の威力を高めるのなら焼いて硬くした方がいいのだろうけど。

 鍛冶屋には鉄容器の製作を頼んであるのだが、制度の良い物が作れるかどうか。


 今のままでも火薬を内部にホールドするだけなら出来るし、中に入ったパチンコ玉をバラまくだけならこれでもいい。

 内容物の詰め方次第で、それなりの威力になるのではないだろうか。


 そいつは火薬と大量のパチンコ玉を詰めて導火線も装着し、作り上げて収納にしまっておいた。


 パチンコ玉をたくさん詰めようと思ったので、ハンドボールのボールよりも若干小さいくらいの比較的大きな物になってしまったのだ。


 まるで昔のマンガなんかに出てきたような爆弾なのでデザイン的には失笑物だ。

 うっかりミスって自分で食らってしまったなら絶対に笑えない代物だけど。


 焼き物は地面に穴を掘って燃料と一緒に焼く、野焼きのスタイルだ。

 日本では窒がない時に用いるような簡便なやり方だと思うが、これが案外と上手くいくものらしい。


 まあ特別な焼き物とかじゃなくて、カイザが作るレベルの代物ならこれで十分だ。

 本式な窯なんか始めたら山が丸裸になってしまう。


 ここらは人が少なくて山とか森ばかりだから、どうということはないが、人口の多い街の方へ行くと禿げ山も少なくないらしい。

 木を切ったら、その跡にはちゃんと次の木を植えろよな。


 今度ソーラークッカーでも御飯を作ってみようか。

 きっと子供達が大喜びするぜ。

 ふっふう、アルミ地金ならもう作ってあるんだからな。


 そうこうするうちに、そろそろショウが戻ってくる頃合いだ。

 最低限の榴散弾容器は入手したので、焼き物はカイザに任せて、もう隣村へ行ってみるか。


「じゃあ、ベンリ村へ行ってくるので、行商人がまだ来ていなかったら帰りは遅くなるかも」


「えー、いいなあ。

 アリシャも行きたいなあ」


「今日はお父さんもやる事があって忙しいから付き添えないし、速度記録にも挑戦するつもりなんで、また今度な。

 行商人さんがまた新しいお菓子を持ってきてくれるんじゃないかなあ」


「ちぇえー」


「そうかあ。

 それでは六歳児からも、一言残念ですとお報せしておきますね」


 隣村行きに未練たらたらな幼女様方を置いて、俺は韋駄天壱号へと乗り込んだ。

 敷藁は変えていないのだが、一応はお天道様に当てたりしてお手入れはしてあるのだ。


 そのうちに潰れて完全にぺちゃんこになってしまいそうだが、今日は何とかこれで大丈夫だ。


「じゃあフォミオ、今日は少し飛ばしてくれ。

 だが路面の具合はちゃんと考えてな。

 速度は出ても車の方が持たなくて壊れてしまうだろう。

 あと、その前に上に乗っている俺の方がまず持たん」


「わかりましたー、じゃあ行きますよ~」


 その言葉を号砲代わりに颯爽と駆けるフォミオ。

 この道は殆ど誰も通らないため、天下の往来は俺達だけのものだった。


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