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1-56 子供のお遊びじゃなかったはずなのに

 翌日には乾いた火薬を刻ませて、色々な火薬を完成させていった。

 そして燃焼テストの結果、一番威力のあった物を採用とした。


 数回に分けて作らせてあったそいつを、本日のスキルで万倍化しておいた。


 これで結構いい武器になったと思う。

 あとは、こいつを例の爆弾容器に入れてみるだけだ。


 その他に炸裂弾を作ってみようと思いついた。

 昔、元寇の時代に使われていたという、丸い陶器の器に入れた破片で倒す手榴弾の原型みたいな奴だ。


 前に作った導火線を太く改良したものをねじ込んで使おうと思ったのだ。

 中には火薬と一緒にパチンコ玉を入れてみる予定だ。


 カイザが使っている陶器の器を作るための粘土をもらい、フォミオが丸太の輪切りを使って半球状にくりぬいた型に、粘土を張り付けて半球状に作ったものを二つ合わせて球状の陶器の容器を作る予定だ。


 これも乾燥が必要なので軒下に置いておく。

 電子レンジがあれば早く乾燥させられるんだがな。

 本物の陶芸でも乾燥に電子レンジを使ったりするし、乾燥用の機械もあったような気がする。


 一応、見学していたお嬢様方が悪戯しないように釘を刺しておいて。


「これ絶対に触っちゃ駄目だからなあ」


 何せ兵器の材料だから、本来であるならばお子様が触っていいものじゃあないのだ。


 どうせ、かなりの物が割れてしまうだろうから沢山作って並べてある。


 まあ試作品だけど、粘土はフォミオが調合して捏ねたからスキルの影響で案外と上手くできているかもしれない。


「えー、あたしも粘土に触りたいー」


「面白そう~」


 そういえば、粘土遊びなんてものは幼稚園の授業の定番ではないか。

 この二人にとっては、まさに今が旬といってもいい遊びだから触りたいのも無理はないよな。


 今度ひまし油を使って油粘土でも作るか。

 あれの匂いは昔から苦手なのだがなあ。

 弄って遊ぶのは好きだったけどな。


 あと紙はあるので紙粘土をこしらえて、そいつで工作なども悪くないし。


「じゃあ、お前らも昼から何か作る?」


「作るー」

「やるー」


 子供と遊ぶんだと粘土の量が心許ないので、お昼は粘土の採掘場にピクニック代わりにおでかけする事にした。


 まあ採掘場ったって、カイザが粘土を見つけて掘り出した跡に過ぎないので、単に森での御飯会だった。


 そのうちにフォミオに釉薬の調合を試させてみようと思った。

 ああいう事は本当に長い時間かけて修行したような人でないと扱えない筈だが、フォミオは元々器用な上に、調合のスキルがあるのでやってのけるかもしれない。


 あと、せっかく柿渋があるので、そいつで下塗りをして、どこかで漆の木を捜して漆塗りの茶碗でも作らせたい。


 アルファ米のオニギリしかないが、仮にもお米はあるので、せっかくならいい茶碗で食べてみたいものだ。



 現場まで結構歩くので、途中で休憩して御飯にした。

 俺は例のオニギリで、具は鮭と梅の両方があるのだ。


 薄っぺらいし、少量なので二個は欲しかった代物だ。

 今はこの異世界で唯一食べられる日本飯である。


 今度、フォリオに大豆から味噌と溜まりを作ってもらおう。

 焼きオニギリなんて堪らないぜ。


 畜生、絶対にあの勇者どもより美味い物、日本食を食ってやるぜ。

 フォミオならきっと、俺のうろ覚えの製造知識からだって絶対に味噌溜まりの製造をやってのけられるはずだ。


 今や、この従者は俺からの絶対的な信頼を一心に受けていた。

 しかも、器用なので料理まで素晴らしくこなすので、食生活が一気に華やかになった。


 同じ塩スープを作らせても、カイザのスープなんかもう泥水みたいなもので、とても飲めたものじゃない。


 もちろん、俺が作ったものも右に同じだ。

 フォミオは今や我が家の料理長も兼ねている。


 掃除人なんかも兼ねているので、たった一日くらいで家の中もかなり片付いて綺麗になっていて、またカイザパパをしきりに唸らせている。


 今まで男手一つだったから行き届かなかったようだからなあ。

 カイザの奴も、そこまで小器用な男じゃないし。

 自家製の酒瓶の出来一つ見ても頷ける。


 そろそろフォミオには掃除専用のスキルが芽生えた頃かもしれない。


 フォミオは森で採集した、採れたてのキノコで美味しいスープを作ってくれた。

 このあたりの採集の技術は人間の比ではない。


 食料を入手して兵站を築く能力でも人間軍は魔王軍に負けていないか?

 

 奴らだって、定期的な入手が望めない人間なんか食べていないと思うぞ。


「これ、いい出汁が出て最高のスープねー。

 これに焼き締めパンを浸して食べるのが美味しい。

 柔らかく味が染みたところと、歯ごたえのある堅いところを食べ比べるのも好きなのでございやす」


「前の方の意見には賛同するが、後半の意見にはちょっと賛同できかねるかなあ」


「でも、スープパンは美味しいー」

「げきうまなのです」


 なんと子供達が焼き締めパンに再洗脳された瞬間だった。

 元々、生まれた時からこれ一本の生活だったろうからなあ。


 よく子供があのパンを食えていたもんだ。


 まあ俺だって、こういう食べ方限定なら別に、あの焼き締めパンをむやみに否定はせんのだがね。

 堅いパンには堅いパンなりの味わい方もあるんだなあ。


 その他になんとフォミオの奴め、隣村パンの出来立て焼き締めパンなんて物まで作ってくれた。


 焚火で焼いた焼き締めパンは香ばしく、それをスープに浸して食べるとまさに絶品だった。

 こんなパンはあの王様だって食べた事がないのではないだろうか。

 なんて贅沢なランチだ。


 いかん、俺まで焼き締めパンに洗脳されそうだ。


 俺はクルトンにしてスープなどに浮かべるスタイルが好きなのだが、特に屋外の森御飯なのだし、こういう豪快な食べ方もなかなかいいよな。


 御飯が終わったので、二人はフォミオの膝を枕にお昼寝だ。

 こやつ、もはや二人の姫の忠臣というか、爺やさんも同然である。


 まったく戦闘力はないようだが、そんな些事はこいつの価値にとって、なんの瑕疵にもならない。


 その他の能力では、おそらく今回召喚されたすべての勇者軍団の力を合わせた物よりも遥かに上回るのではないだろうか。


 これで下っ端の雑魚魔物とは、おそるべし魔王軍。

 人間の軍勢は大丈夫なのかねえ。


 かくいう俺だって、あれこれと防衛準備してはいるものの、幼女様のお守りがメインの任務になってしまっているがね。


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