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1-47 実験

 黒色火薬の製法として、簡易には鍋で煮てベースを作る方法もあるが、油断すると成型・乾燥・切断加工の行程のどこかの段階で爆発しそうだ。


 なので、最初は材料を粉砕してから二種類を混ぜて二味混合物とし、さらに混ぜていき三味混合物としていき粉状にするに留めた。


 本来なら、おそらくは鉱山用爆薬として使用されるタイプであろう球状粒に成型する方が爆発用には適しているはずだが、素人作業では成型中に爆発しそうで非常に怖い。

 よく管理されているはずの工場でも、よく爆発事故が起きるのだから。


 よくわからないが、黒色火薬が発明された当時は単に材料を混ぜただけではないかと思うので、とりあえずこれでいく。


 まあ発明した連中も粉末だけではなく、あれこれ煮たり焼いたり、うっかり爆発させたりとかしていたのかもしれんが。


 当時は火薬取り扱い時における、静電気の危険性などという知識はなかっただろうし、そういう物も先人の不注意な事故による犠牲の積み重なりにより、今は理解されているという事なのだ。


 燃焼や爆発など目的別に混合比が変わるはずなので、その辺だけはあれこれ試すとする。


 どうしてもというのならリスクを負ってでも各原料を加工して燃焼速度を上げたい。

 衝撃波を生む爆発物レベルの物が作れるといいのだが。


 あれも使い方一つだと思うのだが、生憎と会社の仕事(えいぎょう)で爆発物取り扱い主任の資格は取ったりなどしないので、そんな事はよくわからない。



 というわけで、今俺はお花畑の真ん中で硫黄を石臼でゴリゴリと磨り潰している。

 なんでかというと、家でやっているとアリシャとかが必ず寄ってくるので大変危ないからだ。


 木炭粉と硝石粉と硫黄粉を混ぜる危険な作業もやりたかったので、ここへ来ている。


 エレは連れてきて見張りを頼んである。

 知らないうちに、どこかの熊とかに来られても困る。


 ここに熊はいないはずだが。

 いたらカイザが娘は絶対に来させないから。


 前に魔物が出た場所なので、ちょっと気になるのだ。

 しかも、あの熊公は大型肉球による威力の静穏性で忍び寄ってきていたしな。


「また何かヤバイ物を作っているのねー」


 自分の胴体ほどの大きさもあるチョコを盛大に齧りながら、空中に羽ばたきながら見学しているエレ。


「まあねー、そもそも魔王とかその手下がヤバイのだが。

 お陰様で俺達はこんな世界に呼ばれたってわけなのだからな。


 あの勇者め、頼りなさそうな餓鬼だったが、別にあいつが魔王と対峙して戦うわけじゃないんだ。

 王様め、さっさと魔王を倒してケリをつけちまえよな」


 だが、それにはあの子達も戦わねばならんのだろう。


 できれば、勇者の奴が奮起して王国兵士を完全にバーサーカー化して、彼女達の出番が来る前に魔王を倒してもらいたいものだ。


 おじ……お兄さんは遠くから見守っていますよ。

 黒色火薬を調合しながらね。


 傍から見ていたら、俺の言う事とやる事があまりにも違っているので、これじゃ勇者の小僧なんかまったく信用していないに等しいよなあ。


 まあ、それはそれ、これはこれっと。

 世の中には念のためっていう言葉があるんだからな。


「さて、一応は混ぜてみた。

 理屈としては、激しく燃焼する燃料部分と酸化剤として働く部分がよく混ざっていればいいわけなんだが。


 元々の働きは、それらの原材料の各化合物が既に内包しているわけだしな。

 どうやって実験するかなあ。


 本当なら万全を期するために、ランクが上のポーションが手に入ってからやりたいんものだ。

 大怪我をして動けなくなっていたり、死んでしまったりしていても困るんだ。

 よし、とりあえず少量だけ燃やしてみるか」


 俺は広場の岩石部分の上で実験をする事に決めた。俺はお灸のもぐさ程度に盛った黒色火薬に、少し離れた場所から収納を用いて火種を落とし込んで点火する事にした。


 硫黄を塗り付けたティッシュを実験用の導火線にしてもいいと思い用意してみたのだが、よく考えたらちゃんと燃えるのかどうかを実験するだけなので、そのようにしてみた。


 ちゃんと火薬ができているかどうかだけが見られればいいので。


「スリー・ツー・ワン、ズイーロ。ファイヤ!」


 シンプルで非常に短い点火シークエンスが完了した後に、この異世界で初めて作られただろう黒色火薬に点火した。


 ボンっというような激しい音で黒い煙を吹きだしてよく燃えた。

 ちゃんと燃えていればいいのだ。


 量が少ないからこんなものだろう。

 黒色火薬はあくまで発射薬に向いた火薬なのだから。


 これがまた火縄銃なんかに詰めると、耳が痛くなるような独特の強烈な破裂音を出すんだ。

 外国の射撃場でぶっぱなす無煙火薬で発射する銃の銃声なんか、あれに比べたら可愛いもんだ。


 銃は喉から手が出るほど欲しいのだが、さすがに作るのが厳しい。

 出来ても火縄銃がいいところだしな。


 あの警官の銃が欲しいよなあ。

 今はそのような事は望むべくもないので無理だけど。


 とりあえず投擲兵器、即ち槍に火薬の入った筒を括り付けて投げたりできるものが欲しい。


 あるいは、簡単な筒に発射薬を入れて飛ばすとか、あるいはロケット花火のようにしてみるか。

 それだと、どこへ飛んでいくかわからないので怖いのだが。


 そういう武器だと点火システムが欲しいが、それも作成は難しい。

 精度の高い細かい部品は工作機械がないと作れまい。

 高性能な銃もそうだ。


 火縄銃ですら非常に精巧に出来ているのだ。

 日本製の『種子島』は、精度が高いので外国でも非常に有名だった。


 それに、あれだけ大量の銃で本格的な戦争をやったのは、実は日本が初めてなのだ。


 今のところは収納を利用した爆弾投下と目視点火に頼る他はない。

 そもそも俺は、あまり戦闘に向いた能力を持っているわけではないのだから。


 いくつか、色々な混合比を変えた物を試して、一応の候補とした。


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