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4-75 山葵精霊捜索隊

「よおし、こうなったら捜索隊を出すかあ」


「おや、ついにその気に?」


「おお、イエー!」


 そのエレとのやりとりを聞いていた師匠達が不思議そうな顔をして聞いていた。


「また何かをやるのか?」


「ああ、もう俺の足が限界なので、俺に加護をくれた精霊を大量に呼び出して、エレのいうところの『山葵の精霊』を捜索するのさ」


「うーん、『山葵の精霊』ねえ」


「まあ、そういう正常な水と空気を極端に好む、それはもう山葵が生えているような場所でないといるのはイヤという、なんというか変わり種の精霊なんじゃないの。

 とにかく、人の手で探すより同じ精霊の手で探してもらった方が早いよ。

 ここは結構な秘境だぜ」


「そうだな、もう鮫皮の山葵下ろしまで作っているんだものな」


 師匠の指導により、それはフォミオの手により作られていた。

 まったく師匠ったら気が早いんだから。


 あの独裁国家の魚市場ってば、何故かお手頃サイズの鮫まで売っていたし。


「精霊の加護、オールアクティベート。

 おーい、俺に加護をくれた精霊どもー。

 チョコタイムだぜー、全員集合~」


 そして、一体どこから湧いてくるのか知らないのだが、いつものように雲霞の如くに押し寄せてきた精霊軍団。


 そして人の背にまで届きそうなほど山のように積み上げたチョコに群がっていた。


「おーい、お前達。

 ちょっと頼みがあるんだが、非常に清浄な水を好むだろう場所に住むような水精霊を捜してくれ。


 正確にはその場所に自生しているだろう、ある作物を捜したいのだ。

 そういう精霊なら多分場所を知っているんじゃないのかなと思ってね。

 こういうイメージの作物なのだが」


 そして、その山葵の形だけでなく、すり下ろした山葵の味のイメージになったら精霊どもが全員飛びあがって蜂の巣を突いたような騒ぎになり、そしてまた口直しのためにチョコに群がっていった。


「ああ、悪い悪い。

 初めてだとびっくりするよな。

 とにかく、それが早急に必要なのだ。

 悪いけど頼むよー」


 そして珍しく精霊達が俺の目の前にやってきて、文句というか山葵に関しての感想を述べた。


「人間って、本当に変わっているわねえ。

 甘いチョコがあるのに、こんな辛い物を欲しがるだなんて」


「人間というか、そこのハズレ勇者が、じゃない?」


「へええ、味覚までハズレているのかあ」


「ああ、いや。

 それはハズレじゃない勇者も欲しがっているんだけどね」


「ふうん、まあいいや。

 手伝ってあげてもいいけど、またチョコはよろしくね」


 言いたい放題に言うだけ言うと、各々が山々へと散っていった。


 あれから随分と精霊の加護が増えたのだ。

 何かあるごとに増え、大きなイベントがあると友達まで連れてきてしまうので、更にその数を増やしていく。


 この前で約二十三万に増えていたが、今のイベントで二十六万個くらいに増殖した。

 まあ、今回は数が欲しい作戦なので助かるのだが。

 報酬に使えるチョコだけは、それはもう鬼のように作ってある。


 山は広い。

 いや広すぎるわ。

 少なくとも、この俺がへたってしまうほどには。


 あのノームの迷宮でも結構頑張っていたんだけどなあ、やはり異世界も広い。

 なんたって惑星一個分の広さプラス宇宙までもあるからな。


「じゃあ、お弁当にでもしましょうか」


 そう言って姐御が弁当を広げていった。


「やったあ、勇者様のお弁当だあ」


「こういうのは、孤児院じゃ絶対に食べられなかったよね」


 そして並べられていくのは、鮭やタラコに昆布と海鮮たっぷりのオニギリ、姐御の特製高級サンドイッチ、これまた特性唐揚げ粉で作られた高級地鶏の唐揚げ、同じくその卵を使った姐御の特製出汁で作った卵焼き。


 手作り粗挽きソーセージに、ベーコンのアスパラ巻き、サラダも手作りの高級ドレッシングが付き、ポテマヨやマカロニサラダも添えられた。


 子供達は目移りしながらも、あれこれと取って頬張って幸せそうな顔をしていた。


「いやあ、さすがは姐御だなあ。

 異世界のピクニックランチで、これだけの物が食べられるなんて最高だ」


「ふふ、ありがとう。

 一穂がこの前持ち帰った海鮮やフォミオに作らせた調味料で、色々とグレードアップしているわよー。

 はい、お味噌汁」


「サンキュー」


 赤だしのワカメと豆腐のお味噌汁に、湯葉なのか麩なのかよくわからないが、くるくると丸く巻いたお馴染みの奴まで浮いている。


 果報は食って待て?


 味噌汁は日本における外国人同様に、異世界人にも非常に好評な食物だった。


 味噌の持つ豆の旨味なんて蛋白質の根源だから、細胞を持つ俺達のような生物にとって美味いのは当たり前の事なのだが、風味に対する個々の好みというものはある。


 納豆なんか、大豆を発酵させた物なので栄養たっぷりな代物なのだが、あれを普通に食せる外国人はかなりの強者だ。

 日本人でも食えない奴がいっぱいいるのだから。


 せっかく勇者の遠い故郷日本を代表する食べ物として俺が開発させたものなのだが、残念な事に勇者の中でも一番激しく好みの別れる食い物だ。


 まあ外国の食い物でも強烈な物はたくさんあるからな。

 特に発酵系の奴はね。


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