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4-60 竹取物語という話なのですが、帰るとしたらどちらの月へ帰るのでしょう

「要は、そもそもの話が、先方が大精霊云々と言っているものは話の綾みたいなものなので、要は円満にこの難儀な異世界竹取物語を片付けようという事なんだな」


「いえーす」

「おなしゃーす」


 二人とも少しヤケになっているのか、俺に投げやりな返事と共に全てを丸投げにした。


「はあ、まあ君達はここを離れられないわけだからなあ。

 湖には俺だけでいってくるよ」


「ほん、それ。

 麦野さん、ゴメンねえ」


「もう本当に困りますう」


 さて仕方がないので、とりあえず行ってくるとしますかあ。


「じゃあ、ちょっと湖までいってくるわ。

 今回はちゃんと最初から大精霊がいてくれるといいんだがなあ。

 だが嫌な予感がするぜ。

 湖まで行く前の段階で、既にこの為体(ていたらく)なんだからね」


「ええ、でもカズホさん。

 湖まで行って水の大精霊の加護を手に入れるのですか?

 今回の問題の本質はそこじゃないのでは」


 よく俺の意図が理解できていない佳人ちゃんが可愛らしく首を捻っている。


 こちら側へ来た当時はまだ中学から高校へ上がったばかりだったので、まだそれなりに子供らしさが残っているような感じだったのだが、この子も少し大人びた顔付きになってきていた。

 まあ、十五歳であれだけ厳しい経験を積まされればな。


 俺だってかなりきつかったのだが、もういい大人だからな。

 子供ほど顔付きがガラっと変わるみたいには変化しないのだ。


 むしろ、今までの社会的な経験を生かしてきたという感じなのだから。

 勢い込み過ぎる無駄な若さの勢いを削ぎ落して、少し精悍な感じになったといったところだろうか。


「ああ、そいつはわかっているよ。

 とりあえず大精霊本人に相談してみるのさ。

 加護の話なのだから、もしかすると何かいい知恵を持っているかもしれん。

 伊達に悠久の時の中を存在し続けてきたわけじゃないだろうしな。


 とりあえずはそこからだな。

 どうにも困ったらノームにでも聞いてみるさ」


「あ、なるほど。

 その手があったのね」


「そういう抜け穴的な提案って麦野さんの十八番ですものね。

 その辺の悪知恵というか機転というか、そういう事で助けていただきたかったんです」


「じゃあ、いろいろと物資は渡しておくわ。

 はい、まず通信の宝珠ね。

 こいつは俺のスキルを持ってしても代わりを手に入れられない貴重な物だから、もう何があっても誰にも渡さないように。


 それから新食材に新調味料各種ねー。

 一応、精霊絡みの案件だからチョコその他のお菓子も追加で置いていく。

 それから、各地で仕入れてきた服や魔道具にと」


「相変わらず大量に物品を仕入れていますね~」


「ああ、何が要り用になるのかわかったもんじゃないからな。

 まったく魔王軍だけでも頭が痛いというのに、人間の国が人間側の足を引っ張りやがって。


 あの総帥野郎、いつか覚えてやがれ。

 この借りは絶対に返すからな。

 俺はこの手の我儘な独裁者とかはマジで大っ嫌いなんだから」



 とりあえずの物資のやりとりだけは終えておいた。

 俺がいない間に彼女達が逃げ出さないといけなくなった場合にと思って、渡す物だけは先に渡しておいたのだ。


 また、この前のように湖が迷宮化していたら困る。

 あまり時間がかかると、総帥の奴が攻めてきてタイムアップという事もあり得るのだ。

 総帥野郎が、あまりせっかちな野郎じゃないと助かるのだが。


 俺は屋敷を飛び出して、もう門からの出入りはやめて北を目指した。

 さほど縮尺などが正確ではないものの、国境の詰所で見た地図によれば、かなり北の方のはずだ。


 山脈方面へ迂回する街道を行く道だから、突っ切っていき高度を取っておけば見失う事はなかろう。


 山の手というとノームの迷宮を思い出す。

 なるべくならダンジョン攻略は勘弁してほしいものだ。

 今日は冒険者仲間を連れてきていないんだからなあ。


 この間は本当に参ったよ。

 おまけに魔王の配下の幹部どもまでやってきていたし。

 そいつらも、今では俺の眷属に成り果てたがな。


 俺は地図の形を思い出し、山の位置を計算に入れながら、一旦広域を確認できるだけのセミ宇宙空間まで高度を上げて、山間に湖が確かにあるのを確認してから高度を下げた。


 行先がはっきりとわかっていなかったので、たいした速度は出していなかった。


 この前は目印の湖が消え失せていたからな。

 地の大精霊ではなく、今度は水の大精霊なので湖を無くしてしまう事はないだろうと思っていたのだが、今の国の指導者がアレな奴なので、嫌がって地底湖でも作って引き籠られていると困りものなのだ。


「カズホ。

 さっきの湖、何かが気になったんだけど」


「ん? あったよな、でかい湖が」


「ああ、あったんだけどね。

 妙に色に緑がかっていた。

 なんというか水の色とは違う、妙に深い緑だというか。

 一瞬周りの緑に溶け込んでいたような色合いだったよ」


 エレは細かいところまでよく見ている。

 俺はその辺は少しうろ覚えだ。


 湖の場所さえわかればいいだけの探索だったので。


「でも、明らかに水面が光を反射していたようだし、そう言うほどには深い緑じゃなかったような気がするんだが。


 俺の世界には凄い色合いの、美しい緑というか青というか、そういうような湖のある山間の国もあったんだぜ。

 ここも山が深いからなあ。

 山々の高さも充分あるし」


 そう、アルプスは写真でしか見た事がないのだが、カナダのエメラルド色の湖は物凄く美しかった。

 ちょっと楽しみになってきたな。


 ここも大精霊に頼んでキャンプ地にさせてもらっても悪くない。

 ノームの湖は、エメラルドグリーンなんかにしてもらってもいいよな。


 連れていってやったら子供達が大喜びする事請け合いだぜ。


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