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4-53 捜索は続くよ

 俺はきっちりと二個の宝珠を取り返し、案内の彼は数々の品を手に入れたので、それはもうにこにことして見事に頬が緩んでしまっている。


 まあこれらの品は皆、元本となる物を自分で万倍化して作った品なので、俺としては惜しくもなんともないが。

 こういう物は種類だの銘柄を集めるのが非常に大変なんだよ。


「さあ、こちらが地図になります。

 ここが今いる東方面から続く国境地帯で、ここを緩やかなコースで山間に北方面へ回っていくと、真北のあたりで湖へ向かう大きな街道へと続いていきます。


 そこからかなり主街道を行けば湖の方面に出ます。

 山間地ですので、道自体はかなり曲がりくねっていますが、そちら方面には他に大きな街道はないので、そう迷うような道でもないです。


 勇者様は空から行かれるのでしょう。

 道を目印に行けばそう困らないはずですよ」


 彼は地図を広げて、渡しておいた膨大な賄賂の分だけは親切に教えてくれた。


 それに俺のような飛空勇者などは、どうせ空から見ればこのようなラフな地図など簡単に作れてしまうのだろうから。


「そうか、ありがとう。

 はは、両隣の国から一直線に攻めて来られないようになっているんだねえ。

 今は魔王軍が活動しているので、そういう御時世ではないのかもしれないが」


 そう言うと、彼も少し複雑そうな顔をしていたが説明してくれた。


「まあ、うちはこういう体制ですからな。

 それに、おかしなことを考える国がいないとも限らないですしね。

 王国連合と言ったって、一枚板というわけでもないですからして、やはり日頃から国防はしっかりしておかなくては」


「ははは、本当に君の言う通りだよ。

 そういや、あの勇者の女の子達はどこへ行くとか言っていなかったかな。

 一体どこで道草を食っているものやら。

 俺とのデートの約束を忘れちゃっているんじゃないだろうなあ」


 彼は厳つい感じの猪首を捻り、一生懸命に思いだそうとしてくれていて、何か思い当たったようだった。


「そうですね。

 なんでも事前に調べ物をしていきたいからと言っておられたので、王都へ行きたいような事を言っておられました。


 首都へ入るとまた警備が煩いですよと言っておきましたら、このあたりであれこれと調べてから湖へ回ると言っておられたような。

 そしてまだ帰ってきませんねえ」


 なるほど、やはりあのギルマスが言っていたように王都へは行っていないのだな。


 という事は一度先に湖へ行って二人がいないか探してみるか、あるいは教えてもらったこの辺りの手掛かりになる場所を探してから行くか。


 やはり気になるから、先にここで探してから行くか。

 なんなら北の湖から、こちら側へは戻らずにそのまま上の方からトンズラというコースもありだしな。


 できれば港も行ってみたかったのだが。

 前に南側の海の村で聞いた話では、ここでも魚を扱っているそうだからな。


 この国を上手に歩くコツは賄賂という事もわかってきたし。

 いつか『異世界の歩き方』なんて観光ガイドの本でも書いてみたいもんだ。


 俺は彼らにしっかりと礼を言って、詰所をお暇させていただいた。


 宝珠に情報、そして彼女達がいない事も確認させてもらったし。

 後は、あの子達を捜して北を目指すのみだ。


 どちらかというと、湖へ行ってからが大変なはずだったのだが。

 湖に棲んでいるとは言っても大精霊の奴め、一体どこにいるものやら。


 まさか湖自体が聖域というか迷宮化されていて『水のダンジョン』なんて厄介な物を築いていたりはしないだろうな。


 そんな事になっていたら泣くぞ。

 また冒険者仲間を連れてこなくっちゃ。


「さて、それじゃあどこから参りますかね」


 俺は校長先生(ブラウニー)に書いてもらった地図を頼りに、あちこちを当たってみる事にした。


 元貴族の家は後回しだ。

 多分、こんな国では面倒な事この上ない事になるだろう。


 屋敷に勝手に押し入るわけにもいかんだろうしな。

 どうせなら、彼女達にはなるべく違う場所にいてほしいものだ。


 彼は御丁寧な事に、捜索の優先順位をつけてくれてあった。

 おそらくはそういう目的なら、その優先順位で確率が高いのではという一種の山勘なのだろうが、俺は素直にその一枚の地図に簡潔に記された気遣いに従った。


 地元の人間の土地勘というか、アウトローの首領兼元王都ギルドの重鎮なのだから、仕事ができないはずなどあるまい。


 少なくとも俺が自力で闇雲に探すのは無理だから、あそこに強引に押し入って情報を仕入れたのだからな。


 この独裁国家の典型のような国で、自力で情報屋を捜すなんて無理だったので、あのような力業を使ったのだ。


 あのラビットは下卑た小悪党な男だったが、これでも彼には非常に感謝しているのだ。


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