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1-28 お隣の村へ

 とりあえずカイザと交代で魔物穴の見張りをして夜を明かし、翌日も夕方まで待ってから、きっちりと穴を埋めたてた。


 念のために、あの魔物穴から抉り取った土砂は使わなかった。

 もし、あの土の中に魔物生成のギミックが残っていたとしたら、魔物穴が復活してしまう可能性があったからな。


 他から頑張って調達してきた石や土をスキルでドンっと増やして、ぎゅうぎゅうに土を載せて上の方には重い石をいくつか組み合わせて、しっかりと蓋をしておいた。


 頼むから、もう二度と湧いてきなさんなよ。

 まるで封印された、昔の鬼塚のようだな。

 ちょっとしたモニュメントの出来上がりだ。


 後世の若い村人達が、『伝説の場所を探検』とか称して、女の子なんかを誘って遊びにきそうな廃墟巡りのような代物だよな。


 なかなか壮観な岩の山になってしまった。

 まあ討伐の記念碑みたいなものだ。


 手持ちに生コンクリートでもあるならば放射性廃棄物のように完全に封印してやるのだが、生憎とそのようないい物はここには存在しなかった。


 あれなら作ろうと思えば作れるはずだから、いつか作ろう。


「当分、こいつの様子を見に通わないといかんな」

「だねえ」


 俺達もやっと森を出られる。

 当分は皆も警戒しつつ森へ行く事になるだろうから、俺もまだ見回る予定だ。


「カイザ、明日からしばらく森を見回りたいんだが一緒にいいか。

 あの熊みたいな忍び寄ってくる魔物が出ると、俺も一人じゃ心許ないんでね」


「そうだな。

 まだ残りの魔物がいないとも限らない。

 そうするか」


 そうして、しばらくの間は森の見回りをしていたのだが、その間にスキルで使い切った燃焼爆発系の武器も補充し、槍も何度も戦闘で使用したため傷んでいたので新しい物を補充し、ついでにお金と塩、その他の化学繊維も増やしてみた。


 一週間経っても魔物は現れなかったので、俺は隣の村へ買い物に行く事にした。

 何かいい物があるかもしれない。


 この村にはまともな物が売っていないからな。

 そもそも商店自体が存在しないので、そのすべてが個人売買によるものだ。


 翌日、朝早く起きて出立したが、子供達は起きていてお見送りしてくれた。


「じゃあ、ちょっと行ってくるよ」


「いいなあ、アリシャもお隣の村まで行きたいな~」


「アリシャ」

「はあい」


 カイザに優しく言われ、彼女も諦めたようだ。


 大人の足でも半日はかかるそうだからな。

 単に幼女様が我儘を言ってみたかっただけなのだ。


 まあ一人じゃ絶対に行けない場所なんで、ベビーシッターのおじさんと一緒ならピクニック気分で行ってみたいのはやまやまだわな。


「何か隣村の良い御土産があったらお願い」


 マーシャの方はもう大きいだけあって、お願いは非常に現実的だった。

 まだ森へも行けなくて退屈しているんだろう。


「ああ、いい物があればいいんだがな。

 あまり期待するなよ」


 あの穴の中にあった土からは魔物の核がたくさん出土した。

 あれだけの爆発の中、よく魔物と一緒に吹き飛ばなかったもんだ。


 爆発で崩れて埋まっていた物のようだ。


 カイザによると、強い魔物の核は簡単に壊れないそうで、そいつらから抉り出すとか俺みたいに完膚なきまでにやっつけると手に入る事があるらしい。

 逆に、そういう強い魔物は倒すのが難しいのだと。


 売ればいい金になるらしいが、とりあえずはいいや。

 あ、これも数が万倍に増えないだろうか~。


 俺は田舎道をテクテクと歩いた。

 荷馬車が出るタイミングだと乗せてもらえる場合もあるようだが、そうそう都合も合わないようだった。


 ああここに車があったらなあ。

 会社のバンでいいからさあ。

 むしろバンの方が荷物運びで役に立ちそうだ。


 まあ歩けば歩くほど健康という事で大人しく諦める事にした。


 ブーツもそのうちに新調したいよ。

 あの城にあったゴミに近いようなボロいブーツを今も履いているのだ。


 本当はもう腐っているんだけど、他には革靴しかないので。

 あれも一応は増やしておいたが、この未舗装の村ではね。


 これから行く村でブーツを売っていないだろうか。

 この今いる村には靴職人はいなかった。


 俺は途中の道ばたで座って水を飲み休憩をしていたが、さっきから周りを飛んでいた何か大きめの虫のような物を観察してみたが、そいつはよくよく見ると虫ではなかった。


「まさか」


 それは、なんというのだろう。

 妖精というのか精霊とでもいうのか、まるでトンボの翅のような二対の細長い翅を背中で忙しなく動かしていた。


 人間ではないので服は着ていないが、少女のような格好でホバーリングして、まるである種の昆虫のそれのように美しい瞳で俺を見つめている。


 特に魔物のような敵意は感じないのだが、どうやら言葉を話すわけでもないようなのでコミュニケーションは取れそうもない。


 スマホの電池が切れているので写真が撮れないのが残念だった。


 そいつは、しばらく俺を見つめていたが、ふいっとどこかへ行ってしまった。

 何か意味のある行動ではなくて、ただの気まぐれだったようだ。


「ふう、珍しい物を見たなあ。

 ここのところ魔物みたいな凶悪犯ばかりとしか会っていないから、つい警戒しちまったぜ。

 まあ話しかけたりしたって言葉は通じないのだろうが」


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