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4-40 魚市場

 少し飛んで港へ降り立ったが、ここはなんというか小売りといった感じではなく、卸の魚市場というのに近いところだった。


 広い区画にテントのように屋根があり、その下に冷蔵の魔道具が使われており、大量の海産物が並べられていた。


 仲買人らしき人が大勢いて、中には高価な収納袋を持った人までいた。

 商人風の人なんかもいる。


 俺みたいに、わざわざ個人で魚を買いに来ている人間は、どちらかというと珍しいのではないだろうか。


「これはちょっと異世界の港町を舐めていたな。

 なかなかの品揃えじゃないか。

 今度は皆も連れてこないといけないかもしれない」


 確か魚介類の新種の九十パーセントくらいは、こうした魚市場で発見されるのではなかっただろうか。


 さすがにそのような物は素人が見て判別がつくものではないのだが、きっと地球の生物学者が見たら小躍りして買い占めたくなるような新種の物ばかりなのだろう。


 だがまあ、俺達は海の幸が食えればいいので、生物学的な価値はここからそっちに置いといて、味を主目的に買い漁る事にした。


 とりあえず今日は、俺の見立てで適当に買っていくとしようか。

 欲しい物は、主に出汁のよく取れそうな鰹と昆布なのだが。


 正直に言って、俺は魚の細かい形なんかはよくわからない。


 マグロはなんとなくイメージできるし、秋刀魚に鯛や鮭なんかの比較的特徴がはっきりとした魚ならわかる。


 だが、さよりとかメゴチとかメバルとか言われてもよくわからない。

 アイナメあたりの、堤防でよく釣れる、釣り人には御馴染みの魚ですらもわからない。


 イサキは小さくてスーパーにも毎日置かれてあるから、なんとなくわかるかもしれないが、いきなり釣れたばかりの竿の先で踊っているイサキを見せられるとわからないかもしれない。


 要するに鰹の形の見立てに自信がないのだ。

 まあ昆布くらいはわかると思うけどな。


 ヒジキや寒天なんかだと海藻でも完全に怪しい。

 貝なんかは完全にお手上げだろう。


 特徴的な形をしているアサリやホタテくらいならわかるか。

 さすがにサザエやアワビなんかはわかるな。


 そもそも貝って、近似種の総称で区切られている事が多いのではないか。

 寿司ネタで有名なツブ貝なんかがそういう物らしい。

 まあ、そう味はそう変わらないらしいが。


 そういう感じでいいんじゃないか?

 一応鑑定をすれば、魚介類もスモモの時みたいにわかるのではないかと思っているのだが。


「お、鯛っぽい魚を発見、それとマダコもあるな。

 あ、海老と蟹を発見。

 こいつは大収穫だぜ」


 渡り蟹みたいな奴とズワイガニみたいな物を発見した。

 この辺は今が旬なのではないだろうか。


 ズワイガニは、北の海の物の方がきっと美味しいよな。

 よくこんな南向きの海で獲れるものだ。


 海老はロブスターっぽい奴と、車海老のような大きめサイズの物を発見した。


 車海老といえば我が愛知県の『県の魚』らしいのだが、「それは魚じゃねえだろ!」という突っ込みはまたにしておいて、名古屋人勇者軍団にとってこれは朗報だぜ。


 これで大海老フライや海老天丼が食えるぞ。

 折りしも、蕎麦汁が完成したタイミングだからな。


 麺抜きの天麩羅蕎麦でいいのなら可能だ。

 まったく意味ないけど。

 代わりに天ぷら焼き締めパンスープ(和風)にでもしておくかな。


 あと天麩羅うどんならば可能なのだし。


 王様にも勇者には海産物が絶対に必要だって言っておかないとな。

 できれば、呼ばれた時にあの荒城で『えびふりゃあ』くらいはいただきたかったものだ。


 正直に言って、別に名古屋人が特にエビフライを好きというわけではないのだが。

 もちろん、あれば絶対に食うんだけどね。


 一通り見てきたのだが、残念ながら秋刀魚はなかった。


 あと、何故かワカメは発見した。

 どうやらここでもスープにして飲まれているものらしい。


 なんか流れ着いた物を浜で拾って、そのまま乾かしてみましたというような感じの物だったが、まあとりあえずいいか。

 これでワカメの味噌汁が飲めるのだ。


 あと、スルメイカを発見した。

 干したスルメも。

 この隣国には、なんとスルメがあったんじゃないかよ~。


 このような、自国の王都からは何一つ見返られる事もないほど最果ての、領主さえいない集落から見て川向こうのすぐ隣にあるような漁港で。


 これはもう、なんという国家的な損失であろう。

 カイザが領主として貿易すべき筆頭の街なのでは。


 いっそ、うちの魔人の軍勢で『デビルフィッシュ漁』でも取り行うべきではないのだろうか。


 思わず漁火を灯したイカ漁船でも作りたくなるな。

 夜釣りなんかしていると、灯りに寄ってくるのは魔物だけなのかもしれないが。


「うーむ、ここの湾は魚が豊富だな。

 脅かす魔物がいないので魚が好んで住んでいるんじゃないのかな。


 かなりあれこれと買えたのだが、肝心の昆布は無かったのと、鰹も中に入っているものかどうか怪しいな。

 それっぽい感じの物は仕入れてみたのだが、そもそも鰹って多分湾の中じゃ獲れないよな」


 大体、あの手の海の魚って皆流線形で丸くて区別がつきにくい。


 スーパーの鮮魚コーナーでは基本的に切り分けて名前を表示されているからいいのだが、丸のまま見せられても素人には種類がよくわからない。


 一応は鑑定してみたのだが名前がよくわからなかった。

 へたをすると、大きさが違う出世魚だったりするのかもしれない。


 ブリっぽい奴は買えたような気もするし、そうでもないような。

 異世界のハマチとかヒラマサとか言われてもわからんっ!


 仕方がないので、買っただけの分を持って帰り、王都の皆に見てもらおう。


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