4-28 異世界テーマパーク・ルーテシア城
とりあえず技師長にも教会建設予定地を見ていただいて、また図面を起こしてくれる事になった。
なんだったら、こちらへ来る神父様が決まったらその要望を聞き届ける形にしてもよいとの公爵の意向もあって、いくつかのプランを立てておいて、神父様本人の意見を元に建ててもいいという結論になった。
神父様も、その間は子爵邸にでも滞在していればいいのだし。
話が決まりそうなので、地主の人にはお金を出してもらう事にした。
この金は新郎新婦の実家からお金を出してくれる。
教会建設はカイザがやると言ったわけじゃないからな。
お次は城の方だ。
「こちらは、俺としては城の改装はどのようにしてもいいと思っているので、アイクル子爵家、特にルーテシアさんの御意見を元に行いたいかと」
俺個人の城が欲しかったら、どこか別のところへ日本の城を建ててしまってもいいし、あるいは地下要塞やダンジョンにしてしまってもいい。
その辺りが俺の趣味なのだが、高い塔なども捨てがたいなあ。
きっと他の勇者どもの中にも、次回にやってくるだろう勇者の中にも、高い塔のような物が大好きな連中がいるのに違いない。
勇者の訓練施設代わりに『鍛練の塔』を作って置いておいてもいいかもな。
下から順に難易度が上がるようにしておいてやれば、佳人ちゃんのように悲惨な事にならずに済むだろう。
定期的に風呂付の宿のある階層を作れば、次期勇者どもも訓練が進むのではないだろうか。
ダンジョンは、この前のノームのダンジョンなんかが忘れられない。
あれこそ、まさにやりたい放題のありさまだ。
管理はミールやマーグに任せておけばいいし。
ここから隣の国まではカイザの領地みたいなものだから好き放題にできる。
どこかに温泉でも湧かないものだろうか。
まあそのあたりは穴掘り専門のような土建屋眷属がいるのだからな。
他に水を司る眷属や、加熱が可能な眷属なんかも複数いるので、冷泉でも掘れれば後はなんとでもなるのだが。
あるいは飛空能力のある魔核を用いて、空に島を浮かべてやるのも面白い。
そこはライデンどもに守らせて普段は隠しておけばいいし、ザムザなども充分に空で戦える。
あるいは塔と飛空島で合わせ技というのもありうるのだ。
世界のあちこちに飛空島の空港代わりに勇者の塔を立てて、そこへ飛空島を寄港させて遊覧飛空島を作るのも面白い。
あるいは塔をクリヤ出来たら、空中島への通路が開く仕組みとか。
魔王軍が空に配置する邪魔者がいたら蹴散らして、今度はそいつらの魔核で万倍化して、この世界の制空権を取るのも面白い。
今でもやろうと思えば、人間の国の上空くらいは航空優勢を確保出来るのではないか。
そこまでやったら、もう人間側の勝ちなんじゃないか。
まあ四天王も空くらいは飛びそうだから、そこまでやったら連中が出てきちまいそうなのだが、それすらも上手くすると奴らを眷属化する大チャンスだ。
さすがに四天王が魔王城にいられる時に相手をするとなると、中からいくらでも増援が出てくるので、ちょっとそこで四天王のお相手をするのはキツイ気がするのだ。
「そうね。
ここはやはり伝説のアルフェイム城というだけあって、古びて戦城といった佇まいが色濃く残っているし、かといって瀟洒な感じにしてしまっても趣がないというか。
またいずれ、ここには勇者様がやってこられるのでしょう?」
「多分ね。
ただ俺達勇者に言わせてもらえば、初めてこの世界にやってきて、あの神殿を別にしたならばここが初めての建造物だったので。
今だから正直に言いいますけど、あそこはただの荒城なので本当にがっかりしましたよ。
もっと素敵な城にしておかないと、いきなり勇者達が絶望してしまいますよ」
「そ、そういうものですか」
うむ、特にあの焼き締めパンにはな。
フォミオ小屋や領主館にあるようなパン焼き釜は完備して、せめてパンだけにしても焼き立てパンを振る舞おうぜ。
そいつは、後世の王様と城を管理するカイザの子孫達に申し送っておかないとな。
それにカイザが生きている間にも、また勇者がやってこないとも限らんのだし。
いっそ俺の子孫に伝え残すか。
もう二度と焼き締めパン勇者なんてものを世に出してはならぬと。
できれば、将来的にはこの城の周りに街を作って『最初の街』でも作っておくか。
スキルに恵まれなくて王都に行きたくない奴はそこに残ったっていいんだしな。
いや、やっぱりパン焼き釜くらいは俺自ら作っておこうか。
ルーテシア嬢は、しばらくその勇壮な歴史の塊のような建造物を前に思案していたようだったが、やがて城を眺めながら口を開いた。
「いっそ、民に公開される建物としてはいかがでしょう。
領主館別館として、この歴史あるアルフェイムの地について学べる歴史博物館のような感じに。
それでいて民が楽しく散策したりできる空間としてあるのも面白いわ。
ここをそんな人々で溢れるような領地にしましょう。
また勇者様がやってこられたような時にも、この世界や勇者召喚についてあれこれと学べるように」
「だとよ、カイザ。
どうだい、俺もそいつは面白いと思うがな」
「まさに、お前好みの提案といえるのだろうな。
ではそのようにするか。
カズホ、具体的な改修はどのようにするのだ」
そう聞かれて思案したが、俺は技師長ベルモント男爵に問うてみる。
「ベルモント男爵、あなたの御意見はいかがか。
ここをパレス・アンド・ミュージアムのコンセプトで作り変え、そして王都さえからも伝説の地を見んと王族や貴族がやってくる。
あるいはまたいつの日にか組まれるだろう、時の王国連合からの施設の視察に耐えうる物にするという前提で伺いたい。
この世界へ招かれた勇者に対しても、この地の伝説を一目で感じてもらい、またがっかりもされない佇まいとは何か。
あの王都で侯爵家の改修なども受け持ち、あれこれと重用され、上品な建物をいくらでも改修できる名家の実力に問いたい」
俺にそう話を振られて、彼はにっこりと笑い即答してくれた。
「ルーテシア姫のためのパレスとなればまた話は別なのですが、それも姫の要望でそのようにするとあるならば、外観は今の様相を踏襲し厳かなままに。
それでいて実態は立派に修復されている状態にし、それを永劫保つ。
そして内部は上品にして清楚、中へ入れば王侯貴族はもちろんの事、一介の民草でさえ感銘を受け、また異世界からの客人にも感銘を受けるような物にするというのではいかがでしょう。
内部にはきちんとした宿泊施設も設けたいですね。
あるいは、キャパが不足するようなら内部は店舗や飲食スペースにして、宿は外部に併設するとか」
「個人的には満点ですね。
俺的には最後の奴がお勧めですかね。
さすがに何もかも詰め込むには中が狭いです。
どうだい、カイザ。
餅は餅屋という事でお任せしてみては」
「ああ、異存はない」
「費用は、このアルフェイムを直轄してきた王家と我が公爵家で持つ。
王からも、王家からも何かしたいという意向は聞いている」
「名前はどうする?
アルフェイムの地名を残すか、あるいはアルフェイム・アイクル子爵領の新しい門出を祝い、カイザと共にこの領地を起こすルーテシア姫の名を冠するか」
「アルフェイムの名を残し、愛称として私の名を使うというのではいかがでしょう。
その方が伝説の地名を残せて、また領民にも親しんでいただける物になるでしょうし」
「決まりだな。
ルーテシアという響きも最高だし。
じゃあ、これでどうだい。
アルフェイム城世界防衛戦功記念博物館、通称ルーテシア城。
いわゆる勇者の国風のテーマパークだ。
集客用に遊戯施設を併設するのもいいな。
中には勇者所縁の料理をあれこれと出してくれるフードコートやレストラン、外には庭園を整備し、スタンドバーなども付けよう。
場所が足りないようなら周辺の土地を俺が開拓してもいいし。
菓子などの土産品をつけ、加護持ちの人間が精霊なども呼び寄せて菓子を振る舞ってやれば、素晴らしく精気に満ちた城になるだろう」
「悪くない御
カイザ、これで決まりかな」
「ああ、そうしよう。
ではベルモント男爵、よろしくお願いいたします」
「お任せあれ。
我が一族の名において、この仕事に取り組みましょう」
まあこんなところか。
あとは祭事用の広場を作ってフェスティバルなどもやるか。
そのうちに花火でも作って打ち上げるかな。
花火をやるのであれば、火災を防ぐ目的も含めて美しい人工湖を作るのも悪くない。
ノームの手を借りてもいいし、ミールとゲンダスで組ませれば十分に可能だろう。
ライデンを使って気象コントロールを行なえば、長期の屋外行事も安心してやれる。




