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4-25 改築案について

「ところで、教会の方の話なのですが」


 食後の御茶をダイニングで楽しみながら、カイザの母親の侯爵夫人が切り出した。


「ああ、まず立地を見に行かないといけませんが、ここの建物に関してはよろしいので?」


「ええ、そうですね。

 この辺境にしては、まずまずといった感じの素晴らしい建物です。

 今まで住んでいたという小屋も拝見しましたが、非常に頭が痛くなりました。


 まったく、うちの息子と来たら、あんな小屋に子供達を住まわせていたなんて。

 あなたがいてくださって本当に良かったですわ。


 あと、なんというか、サロンのようなスペースが欲しいのですわ。

 貴族がリビングと小さな応接間だけでお客様をもてなす訳にも行きませんので。


 もう少し広めの客間が欲しいですわね。

 遠方からやってこられる身分の高い賓客がいないとも限りませんし」


 あう。

 この村、宿屋がないからなあ。

 それに賓客を舘でなく宿屋に泊めるなんて、貴族にとって恥晒し以外の何物でもない。


 ああ、それについてのイメージは欧米のスーパーヨットの間取りを想像すればいいな。


 あれは欧米文化をパッケージングして船の形にしたような、いわば一種の海に浮かぶシャトーだからな。


 あれのでかい奴はまさに城並みの大きさを誇る。

 いや、それ以上の巨大さだろうう。

 最近のでかい奴は並みの護衛艦を上回る総トン数があるのだ。


 あれは屋外施設が多いのでまたあれだが、まず内部にだだっ広いサロンがあるのが特徴だ。

 富裕層が集まって最高の時を過ごせるようにという、まさに至福の空間なのだ。


 まあ普通の家ならリビングが兼ねてしまうのだが、貴族ではそうはいかないのだろう。


 スーパーヨットの場合はピアノが置いてあったり、また一角に上流社会に必須のチェスなどのゲームテーブルがあったりする。

 酷いと高級な木製テーブル自体にチェス盤の模様が精密に描かれている物もあるほどなのだ。


 師匠なら麻雀卓とかを欲しがりそう。

 異世界雀鬼国護とかな。


 姐御なんかも案外と麻雀くらいやりそうな気がする。

 今度作るか、麻雀牌も。


 ダイニングは広めにしておいてよかったことだ。

 いっそ、屋外の離れ的なサロンやダイニングでも作ってみるか。


 ああ、バーベキューコーナーでもいいかもしれない。

 まあ勇者式おもてなし術という事で。


「なるほど。

 その辺をどうしたものかなと思って、まだ仕切りをしていない空間もありますので、そこに広めのサロンと客間を設けますか。

 続きの間で大きめの部屋を一つとサロンで二階の空きスペースを使い切ります。


 一通りの物を用意しておいて、あとはもう必要なら別館を作って館内連絡通路でも引いてみるという事でいかがですかね」


「そうね、後は使用人をどうしますか。

 見たところ、使用人が誰もおらないようなのですが」


 そう来ましたか!

 男二人と子供だけの辺境暮らしだったので、その発想はなかったな。


 使用人どころか、俺やフォミオが来るまでは、子供達の面倒を見る人すら碌にいなかったのだが。


「うーん、使用人の部屋は用意してませんでしたね。

 あくまで、さすがに今までの小屋では厳しいので、パレス住まいであったルーテシアさんを迎えて彼女が不自由を感じないような『立派な家』を建てるという構想でしたので、貴族のお屋敷を建てるという発想で作っていないのですよ」


「そうですか、まあそれは仕方がありませんね」


「そこまでやるなら、それはもう建て直しの範疇になってしまいます。

 とりあえずは万能従者のフォミオがおりますし、見かけだけでも人間の女性がいいというのであれば、当座はニールを置く事もできますが。


 使用人の方を迎えるのなら、それは使用人居住ゾーンを別棟で設定させてください。

 さすがにこの建物でそこまで賄うのは狭い。

 あの、誰か使用人を連れてこられるので?」


「ええ、もしよければ我が家でカイザが生まれた頃からおります者とかを来させてもと思いまして。

 そのうちに子供が生まれたら世話をする者がいた方がよいかと。


 何しろ、うちはともかく先方は公爵家、つまり王族のいわば御姫様でございますから。

 それをこの辺境にお嫁にいただいてしまって使用人の一人もつけないなんていう事は、さすがに許されませんわ」


 なるほど、そういやこの家にはもしかして執事なる物が必要なのではないだろうか。


「ザムザ1001、いでよ」


「何用かな、主よ。

 我らはなかなか出番が無いので、呼ばれて嬉しいぞ」


「ああ、そいつは済まん。

 まあ、お前らのナンバーにまで出番が回る時って、俺が大ピンチみたいな時だから超大変なんだけど。

 お前が今まで登場してきた時って、ミールが出た時とマーグを相手にした時だよな」


 蟷螂頭は体全体を揺すって大笑いした。

 こいつら寡黙なくせに、たまに仕草とかが凄く人間臭い。


「はっはっは。

 まあ魔人・魔獣の相手なら絶対防御持ちの我らが出番よ。

 して今回の仕事は何か。

 見たところ、魔人・魔獣は見かけぬようなのだが」


 うん、こんな朝っぱらからホームベースの村にそのような者がいたら大変過ぎて泣けるわ。


「いや何、たいした事じゃないのだ。

 しばらく、ここで執事をしてくれ」


「しかと心得た。

 主よ、その任務、このザムザ1001が承った」


 そこで客達全員が御茶を噴いた。


「カ、カズホさん、さすがにそれは無謀なんじゃないでしょうか」


「ああでも、うちでは他に今すぐそのようなものを務められる人材はいなくて。

 強いて言うのであればフォミオなのですが、彼は他にもやってもらいたい事がいろいろありまして。

 彼は他にも子供達の面倒を見る仕事などがありますし」


「だ、大丈夫なのです?」


「ああ、能力的には何も問題はありませんが、ただ見かけがあれですので。

 何しろ、かつては魔王軍にて魔将軍と呼ばれ、最後は諜報部門を任されていた切れ者ですから。


 ただ、その他の魔材と言ったらは全長三メートルの蜥蜴人間と、全長五十メートルのでかい長虫と、同じく全長五十メートルの炎の魔人、そしてでかい雲の超大型魔獣しかいなくてね。


 あとは、ただの村人ですな。

 まあ、あの人達も農作業などで忙しいですしねえ。


 まあザムザの場合は、首から下は人間と同じ外観ですから見慣れると皆そう気にならなくなるみたいなのですが」


 うーんと呻いた公爵家並びに侯爵家の面々。

 そして当の本人であるルーテシア様はこう言って締めくくった。


「じゃあザムザ1001。

 しばらくの間、ここの執事を宜しくね」


「心得た、奥方」


 割と仕事にあぶれるナンバーであるザムザ1001は、すでに執事としてやる気満々なようだった。


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